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朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


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第57話 逃避行

 刃物を持った老婆を睨み、古賀は忌々しそうに舌打ちする。


「……間が悪いね」


「だ、誰ですか」


「人斬りヨネ――朽津間ビル最古参のとてつもなく強いババアだよ」


 工藤が堪らず噴き出した。

 彼は涙を拭ってゲラゲラと笑う。


「強いババアって、お前さんが言うかね」


「軽口を叩いている場合かい。対策を考えな」


「舐めんな。もう考えてある」


 笑うことをやめた工藤が前に進み出る。

 サバイバルナイフを持った彼は当然のように言う。


「ここはおいらが食い止める。二人は先に行ってくれ」


「自己犠牲かい。あんたらしくないね」


「死にたくねえから死ぬ気で頑張るさ。代わりに最上階までの露払いを頼むよ」


「ハッ、任せときな」


 古賀は上原の手を掴むと、踵を返して部屋を出た。

 別ルートから上階へ向かうつもりなのだ。

 その動きに反応したヨネが疾走するも、サバイバルナイフの刺突に邪魔されて立ち止まる。

 刹那、ナイフの刃先が角度を変えてヨネを狙う。


「そらよっ」


 ヨネは匕首で切り上げて防御した。

 老人とは思えない、俊敏で力強い反応だった。


 腰を落として構えた工藤は、ゆらゆらと刃先を回して笑う。


「ボケた婆さんは趣味じゃないんだがね。ちょっと最期まで付き合ってくれよ」


 ヨネは答えず匕首で斬りかかった。

 喉を狙った一撃に対し、工藤はナイフを当てて弾く。


「へへっ、危ねえな。スリル満点じゃ――」


 横殴りの刀が顔面に迫り、工藤は慌ててに飛び退いた。

 べちゃり、と湿った音が鳴る。

 削ぎ落とされた片耳が床に落ちていた。

 顔の半分を血だらけにした工藤は、己の欠損箇所に触れて感心する。


「おおっ、やるな!」


 工藤はポケットから拳大のボールを掴み取って転がした。

 ボールは緑色の煙を噴出し、瞬く間に部屋に充満して視界を奪う。

 その隙に工藤は引き返して近くの階段を駆け下りた。


「はははっ! 逃げるが勝ちってなァッ!」


 すぐさまヨネが煙から飛び出してくる。

 そこから階段を使わず、壁を走るように落下してきた。


 工藤はナイフを投げつける。

 ヨネは匕首で遮りつつ、刀をまっすぐ叩き付けた。

 斬撃は工藤の肩を切り裂くも、彼の動きが鈍ることはなかった。


「ほれほれ、こっちだ!」


 工藤は尻を叩いてヨネを挑発する。

 逃れ難い死の気配を感じ取りながらも、彼の笑顔が消えることはなかった。

 明かりの無い階段を、工藤は数段飛ばしてひたすら下っていく。

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