第47話 血染めの目覚め
霞む視界に鋭い頭痛。
低い唸り声を上げてカトウは目覚めた。
彼は血の混ざった唾液を垂らしながら起き上がる。
「ここ……は……?」
カトウは壁に手をついて立った。
堪らず何度か嘔吐した後、彼は口元を袖で拭う。
(思い出せねえ……俺は、誰だ……)
カトウは自らの手に散弾銃を見つけた。
弾が装填されていることを確認し、疲れ切った目で前方を睨む。
汚れた廊下の端に痩せた男が佇んでいた。
男はカトウに背中を向けている。
カトウは散弾銃を構えて声をかけた。
「おい」
男が振り返る。
その顔面には扇風機が溶接されていた。
突如、扇風機が回転を始め、きゅるきゅると音を立てる。
男は万歳をしてカトウに走り寄る。
響き渡る轟音。
男が転倒し、扇風機が砕け散った。
流れ出した血液が床を染めていく。
散弾銃を発砲したカトウは、硝煙の臭いに顔を顰めた。
まじまじと死体を見て唾を吐く。
「クソ、何だこのバケモノは……」
困惑するカトウの背後で部屋の扉が開いた。
廊下に進み出てきたのは、片手が草刈り機の改造人間だった。
改造人間は奇声を上げてカトウに襲いかかる。
カトウは素早く発砲した。
放たれた散弾が改造人間の胸部を引き裂いた。
改造人間はよろめいて崩れ落ちる。
草刈り機の刃が床を削り、やがて停止した。
銃声に伴う耳鳴りに、カトウは唇を噛んで悪態をつく。
「……ふざけんなよ、畜生」
カトウはポケットに入っていた予備の散弾を銃に装填する。
喉の渇きを感じた彼は、開いたままの扉に入った。
カトウはガラクタだらけの室内を漁り、ペットボトルの水を発見する。
水を一気飲みした後、彼は残りを頭から被った。
その際、頭皮に痛みを覚える。
指で触れると数本の釘が刺さっていた。
「訳が分からねえよ……」
カトウは見つけた栄養ドリンクを呷り、袋入りの乾麺をそのまま齧る。
飢えと渇きと癒したカトウは部屋を出た。
彼は改造人間の死体から草刈り機を引き剥がして武装する。
スイッチを押すと、刃は問題なく作動した。
「階段……どこだ……二十五階……」
正体不明の衝動を胸に、カトウはは歩き出そうとする。
その時、すぐそばの床が爆発した。
出来上がった大穴から、せき込む二人の女の声が聞こえてくる。
「うわっ、埃だらけじゃーん」
「ごめん……」
「別にいいけどね。元から血で汚れまくってるし」
床の穴から這い上がってきたのは、マナカとヒヨリのコンビだった。




