第45話 冒涜的な善意と欲求
変わり果てたナベの姿に、イリエは固まる。
彼女は腰を抜かして呟いた。
「ナ、ナベ……」
爆発で失明した両目は摘出され、代わりにカメラが搭載された。
骨折した腕は切除されて、モーター式の義手になっている。
フックで貫かれた肩からは機関銃が生えている。
他にも全身各所に鉄板やバッテリー、装甲が追加されており、もはや原形を留めていなかった。
元は負傷していなかった箇所まで改造されているのは明らかだった。
どうにか我に返ったイリエは恐る恐る声をかける。
「ねえ……大丈夫?」
「…………」
ナベは目を見開いたまま微動だにしない。
葛城がドライバーで後頭部を何度か弄ると、彼は勢いよく立ち上がって笑顔を作った。
「大丈夫、俺は元気だ。葛城先生が治してくれたんだ。感謝しかないよ」
「どうだね。生まれ変わった気分だろう?」
葛城が自慢げに言う。
イリエは何も返答できなかった。
代わりにナベが深々と頭を下げてみせる。
「先生、本当にありがとうございます」
「霊には及ばないよ。精進して最上階を目指したまえ」
「はい! 頑張ります!」
ナベは爽やかに表明するも、その声音はどこか白々しい。
会話を見ていたイリエは泣きそうになる。
(性格が全然違う。まさか脳まで……)
待合室にいた松本がやってくる。
彼はナベを一瞥し、眉間に皺を寄せて言った。
「また随分と改造したな」
「サービスで更生したのだよ。心身ともに男前になったろう。戦闘能力も格段に向上しているはずだ。このビルでも通用するレベルだろうね」
「本人の尊厳を破壊している」
「ほほう、君の口から尊厳なんて表現が出るとは。明日は雪でも降るのかな」
葛城は悪びれることなく微笑する。
松本はイリエを立ち上がらせて説明した。
「葛城はマッドサイエンティストだ。改造人間を作るのが趣味で、途中で会った奴らもこいつの患者だ」
「ど、どうしてそんな人にナベの治療を任せたんですかっ!」
「改造癖はあるが、こいつほど優れた名医はいない。どんな傷でも治す腕を持っている」
「その代償が改造人間になるってことですね……」
事実を知ったイリエは、安堵する自分に気付く。
彼女は脇腹の傷に触れた。
(もし松本さんが止めてくれなかったら、私も改造人間になってたんだ)
葛城の狂気を痛感したイリエは、背筋が寒くなるのを感じた。




