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朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


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第35話 老女の企み

 不敵に笑う古賀が、男を室内へ手招きする。


「ご苦労だったね」


「おうよ。簡単すぎて退屈だったぜ」


「そりゃよかった。あの二人は?」


「知らんね。爆発に巻き込まれたか、人喰いにやられたか……」


 男が推測を述べると、古賀が首を横に振った。

 古びたソファにふんぞり返った彼女は、不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「探偵はともかく、沢田はどうせ生きてるよ。殺しても死なないような男さ」


「確かにな。おいらの仕業ってバレたら仕返しされそうだ」


「くれぐれも黙っときなよ」


「もちろん」


 頷いた男は上原を床に下ろした。

 上原は寝袋から抜け出すと、不思議そうに見上げる。


「古賀さん……?」


「そんな顔してどうしたんだい」


「いや、あの……ちょっと状況が分からなくて」


「そうかい。じゃあ軽く説明しよう」


 古賀がソファから立ち上がると、男の肩を叩いて紹介する。


「こいつは工藤。アタシの部下で、汚れ仕事の専門家。最近は人喰いどもの調査を任せていた」


「よろしくどうぞ」


 工藤は唇を上げて大きく笑う。

 彼の歯は交互に並ぶ金歯と銀歯で構成されていた。


「工藤は囚われたあんたを救出し、ついでに人喰いどもの巣を爆破した。今頃は奴らもパニックだろう。ざまあみろってんだい」


「あの、助けていただいたことには感謝してます。でも私、先生のところに戻らないと……」


「ダメだ。あんな腑抜けには預けられないね。人喰いエリアくらい突破できると思ったが、まるで期待外れだよ」


 舌打ちした古賀は上原に顔を寄せた。

 ぎょっとした上原が仰け反るも、その分だけ迫って古賀は告げる。


「そんなわけで、今からアタシ達があんたの保護者だ。二十五階まで連れて行ってやるよ」


「えぇっ!? どうしてそうなるんですか!」


「答える義理はないね」


 古賀が隠し持っていた注射器を上原に首筋に刺した。

 中の液体が注入された瞬間、上原は脱力して気を失う。

 古賀は彼女をひょいと持ち上げて担いだ。


 一部始終を見ていた工藤は同情する。


「かわいそうに。理由くらい教えてやってもいいんじゃないか」


「馬鹿言うんじゃないよ。この子が受け止められるはずがないだろう」


「そりゃそうだが……」


「物事には順序がある。今はこれくらいがベストなのさ」


 古賀が上原の顔を一瞥した。

 それから彼女は呟く。


「――朽津間ビルの新しい管理者として、ちゃんと運んでやらないとね」

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