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朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


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33/97

第33話 捜す男

 轟音と共に炎が噴き上がる。

 炎は天井を焦がし、瞬く間に燃え移っていった。

 人喰いはパニックになって右往左往する。


 沢田は燃える部屋を呆然と眺めていた。


「う、上原……」


 甲高い奇声が反響する。

 骨の玉座から降りたグールが、沢田を指差して憤る。


「なぜ、えさをこわした!」


「はあ!? 俺達がやるわけねえだろうがッ!」


「だまれ! おまえたち、えさになれ!」


 グールの叫びに呼応して、人喰い達が一斉に駆け出した。

 彼らは凄まじい勢いで沢田と松本に襲いかかる。

 耳を噛まれた沢田が暴れる。


「痛ってえな、クソ!」


 もがく沢田の横では、松本が人喰いを次々と投げ飛ばしていた。

 巨大な拳で人体を粉砕し、掴んだ頭部を壁に叩き付けて潰す。

 四方八方から噛み付かれても強靭な筋肉で阻み、ほとんど傷付くことなく蹂躙していた。


 暴れる松本の足元に亀裂が走る。

 度重なる衝撃に耐え切れず、とうとう床が崩れ出した。

 足場を失った松本は、無数の人喰いと共に落下する。


 たまたま端にいた沢田は、辛うじて床の倒壊から免れていた。

 彼は密着する人喰いを射殺すると、廊下の向こう側を見る。


 グールが沢田を憎々しげに凝視していた。

 短機関銃を紛失したことに気付いた沢田は、すぐさま拳銃を持って構える。


「おい……上原返せ」


「こちらの、せりふだ!」


 グールが四肢で床を蹴り出して疾走する。

 沢田は叫びながら発砲した。


 全身に被弾したグールはしかし、速度を落とさず跳びかかる。

 押し倒された沢田は、後頭部を強打して呻いた。

 彼は必死にグールを押し退けようとする。


「放せよ、てめえッ!」


 口を開いたグールが、沢田の首に噛みついた。

 黄ばんだ犬歯が皮膚を破る寸前、唐突にグールが止まる。

 骨の仮面から覗く目はぴくりとも動かない。


 グールは死んでいた。

 全身の銃創からこぼれた血が、沢田のコートを染めていく。

 沢田は死体を蹴飛ばして悪態をついた。


「畜生、舐めやがって……」


 ふらつきながら立ち上がった沢田は周囲を睨む。

 目に付く範囲には死体しかなかった。

 倒壊した床の穴からは喧騒が聞こえてくる。


 沢田は穴を避けて廊下の奥へと進む。


「上原……死んでねえよな……絶対に、見つけてやるぞ……」


 呟いた沢田は、燃える部屋へと踏み込んだ。

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