第26話 協力者
沢田は片眉を上げて訊き返した。
「人喰い?」
「腹を空かせた餓鬼だ。生きた人間が踏み込めば、絶えず襲われる危険地帯になっている」
「おいおい、物騒すぎるだろ」
「朽津間ビルとはそういう場所なのさ。承知の上でここにいると思ったんだがねえ」
古賀はため息を洩らして白髪を掻く。
彼女は沢田と上原に忠告した。
「尻込みするなら大人しく出ていくのが賢明だよ」
「舐めんな。俺達の目的地は最上階だ」
「……命知らずだねえ」
古賀は嘆いて首を振る。
それからまた二人を見た。
「あんた達、名前は?」
「沢田だ。探偵をやっている」
「じょ、助手の上原です!」
続けて古賀は、松本に詰め寄った。
松本の分厚い胸板を叩きながら、彼女は非難を込めて問う。
「あんたはボランティアでもしてるのかい?」
「楽しい殺し合いを提供すると誘われてな。乗らない手はないだろう」
「ハッ、さすが喧嘩師だ。散歩だ何だと言って、ここを出入りするのはあんたくらいさ」
嫌味をぶつけられても松本は動じない。
彼は厳めしい表情で言った。
「婆さん、あんたも手伝ってくれないか」
「冗談はよしておくれよ。何の義理があって、赤の他人を助けなきゃいけないんだい」
「前から人喰いどもを殲滅したいと言っていただろう。これが好機と思わないか」
「……ふむ」
古賀は腕を組んで考え込む。
彼女は沢田と上原を交互に見ながら唸り出した。
その間、他の三人は黙って見守る。
数分間の熟考を経て、古賀は結論を出した。
彼女は廊下を歩いて近くの部屋へと移動する。
その際、振り向かずに手招きした。
「ついてきな。その装備じゃ喰い殺されるよ。アタシが着飾ってやろう」
沢田達が招かれたのは、整理された大部屋だった。
スチール製の棚がいくつも並び、そこには刃物や鈍器から銃火器といった多種多様な武器が陳列されている。
それらを眺める沢田は感嘆の声を洩らした。
「すげえな……」
「特別サービスだ。好きな物を持っていきな」
「タダでいいのか?」
「お代は最上階に着いたら払っておくれ」
古賀の許可を貰った沢田達は、棚の武器を物色し始めた。
拳銃と予備弾を手に取った沢田は、入り口に立つ古賀を一瞥して呟く。
「いきなり優しくなったな。どういう風の吹き回しだ?」
「ツンデレですかね」
「何だそりゃ」
ホルスターを装着する沢田は、古賀の隣に待機する松本に注目する。
松本は武器には目もくれず、ウイスキーを旨そうに飲んでいた。
気になった沢田は呼びかける。
「あんたは武器いらないのか?」
「俺にはこれがある」
松本は硬く握り締めた拳を見せる。
沢田は肩をすくめて、自分の武器選びに戻った。




