表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/96

第22話 戦闘準備

 予想外の武器が登場したことで、イリエは困惑する。

 彼女の脳裏には、死体を漁るカトウの姿を過ぎっていた。


(死体の中に銃が隠されていた……?)


 散弾で手を負傷した巨漢は、怒りのままに雄叫びを上げた。

 そこからチェーンソーを拾わず、カトウに殴りかかる。


 カトウは散弾銃を発砲した。

 巨漢の顔面のうち、半ば以上が吹き飛ばされる。

 破れた段ボールから眼球がこぼれ出した。


「……ッ」


 巨漢が転び、四肢を痙攣させる。

 カトウに反撃を試みているが、満足に身体が動かないようだった。

 暴れるたびに脳の破片が床に散らばる。


 呆気に取られていたナベが我に返り、作動中のチェーンソーを掴み取った。

 彼は力いっぱいに叫んで己を奮い立たせると、倒れた巨漢に斬りかかる。


 チェーンソーが巨漢の頭部に食い込んだ。

 夥しい量の鮮血を飛ばしながら、回転刃が顔面から首にかけて容赦なく縦断していく。

 巨漢の手足の痙攣がひときわ大きくなった。

 ナベは肩の激痛を耐えて、決してチェーンソーを放さない。


「この野郎ッ! 早く、死ねぇ! 」


 絶叫するナベがチェーンソーをついに振り抜く。

 巨漢の殺人鬼は死んでいた。

 頭部から首、うなじにかけて左右に分断されている。

 被っていた段ボールが外れていたが、その人相はもはや判別不能だった。


「ハッ、ざまあみろ! 馬鹿が、俺達に逆らうからこうなるんだ!」


 チェーンソーを捨てたナベが死体を蹴る。

 感情に昂ったが故の行動だった。

 ひとしきり蹴った後、彼は途端に険しい顔になる。

 冷静になったナベはカトウを見やる。


「くううぅ……うえ……」


 カトウは散弾銃の排莢と装填を行っていた。

 素早い手つきではないものの、迷いのない慣れた動きである。


 ナベはその様子を訝しむ。


(こいつ……何者だ? 頭がおかしいだけのホームレスじゃない。問い詰めても答えねえだろうが……)


 ナベはカトウに手を差し出した。

 彼は端的に要求する。


「おい、銃。こっちに寄越せ」


「うう……」


「危ねえだろ。さっさとしろ!」


 カトウが語気を強めた瞬間、銃口が彼に向けられた。

 ナベは目を見開いて固まる。


「てめえ……ッ!?」


「…………」


 カトウは散弾銃を突きつけたまま動かない。

 引き金にはしっかりと指がかかっていた。

 虚ろな瞳の奥では、仄暗い殺意が微かに瞬いている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
話数進む間にホラーからスプラッターホラー展開になってた! 段ボールマンが被っていたのは、やっぱりAmazonの段ボールだったのか。映像で見たいわ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ