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朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


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第21話 暴力に次ぐ暴力

 イリエとナベは急いで扉を閉めると、サムターンのツマミを回して施錠した。

 すぐに扉がガタガタと激しく揺れる。

 向こう側から巨漢が開けようとしていた。


 イリエは後ずさって泣きそうになる。


「ど、どうしよう……!?」


「落ち着け! お前らはどこから入ってきたんだ? 来た道を戻れば逃げ出せるだろ!」


「無理だって! 他の奴らが待ち伏せしてるもん!」


「クソ! じゃあ他の逃げ道を探すぞ!」


 慌てて室内を調べ回る二人をよそに、カトウは一人で死体を漁っていた。

 血で汚れるのも厭わず、一心不乱に何かを探している。

 それに気付いたナベが怒鳴りつけた。


「おい! お前も手伝えよ!」


「ううう……」


「ちくしょう、どいつもこいつも無能だな!」


 苛立つナベを青ざめさせたのは、金属を削るチェーンソーの音だった。

 回転刃が扉を貫き、豪快に往復して破壊する。

 段ボールを被った殺人鬼は、難なく部屋に侵入してきた。

 そして、吊られた死体をチェーンソーで斬りながらイリエ達に迫る。


「こっちに、来ないでっ!」


 イリエは積み上がったケースを蹴り倒す。

 中身の肉片が撒き散らされて、それを踏んだ巨漢が足を滑らせて転倒した。

 巨漢は腰を強打して低い声で唸る。


「今だ!」


「う、うんっ!」


 ナベとイリエが巨漢のそばを走り抜けた。

 解体されたアサバの残骸を横目に、対角線上にある扉を目指す。


 扉まであと一メールを切ったところで、背後から飛んできた物体が二人に直撃した。

 二人は堪らず倒れ込む。


「うわっ」


「な、何だ!?」


 彼らはぶつかった物体を見てぎょっとする。

 それは死体だった。

 割れたフックが肩を貫通し、頭部は鼻から上が潰れている。


 巨漢が壊れた扉を跨いで二人を追ってきた。

 左右の手にはそれぞれチェーンソーと死体を掴んでいる。


 刹那、巨漢が死体を投擲した。

 猛速で放たれた死体が壁にめり込んでへばりつく。

 少し角度がずれていれば、イリエとナベに命中する軌道だった。


 その事実を認識したナベは狼狽える。


「嘘だろ、どんな怪力だよっ!?」


 巨漢が大股で接近し、二人の前でチェーンソーを振りかぶる。

 ナベとイリエは死を覚悟した。


 その瞬間、銃声が轟く。

 巨漢の動きが止まり、チェーンソーを落とした。

 分厚い手に無数の穴が開いて、数本の指が欠損している。


 巨漢の背後にカトウが立っていた。

 彼の手には、水平二連式の散弾銃があった。

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