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朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


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第14話 逆戻り

 ヒヨリは車の中に入り、中にある物を片っ端からリュックサックに詰め込んでいった。

 その様子を眺めるマナカは声をかける。


「どう?」


「色々あるよ……」


「いいねえ、大収穫じゃん! 久々に出かけた甲斐があったなぁ」


 マナカはイリエを背負って嬉しそうに呟く。

 彼女は朽津間ビルを指差して言った。


「そろそろ帰ろっか」


「車はどうするの。放置?」


「鍵だけ貰っておこうよ」


「はーい」


 ヒヨリは車のエンジンを切り、キーを抜いてポケットに入れた。

 支度を終えた二人はビルの内部に戻る。

 室内はほとんどが暗所だが、ここでの生活に慣れた二人の目はすぐに慣れてくる。

 ものの三十秒ほどで、灯りを使わずに歩ける程度になった。

 イリエを背負い直しつつ、マナカは小声でぼやく。


「他の奴らに取られないようにしなきゃね。特に松本のおじさんとか」


「あの人、強いもんね」


「そうそう! ぶん殴られたら骨折れちゃうって」


 二人が向かった先は、生ゴミと蛆虫だらけの部屋だった。

 マナカは大げさなリアクションで呻く。


「いつ来ても臭すぎ! 誰か片付けなよー」


「たまに掃除してる人がいるらしいけどね……」


「どう見ても足りないでしょ。鼻が腐っちゃいそう!」


 文句を垂らしながらも、二人は隣接する小部屋に移動した。

 壁の穴に付いた血痕を発見し、ヒヨリは首を傾げる。


「……新人かな」


「この女の仲間じゃない? いかにも肝試しで来ましたって感じだし。誰かに攫われたのかもねー」


 考察する二人は穴に潜り込む。

 そこには幅二メートルほどの空間があった。

 頭上は天井に仕切られず、遥か上の階まで続いている。

 壁には転々と足場が設けられており、脚立や梯子、ロープが垂れ下がっている箇所も見えていた。


「よし、行くかー」


「おー」


 マナカはイリエを置いて最寄りの足場によじ登る。

 そこからヒヨリの持ち上げたイリエを引き上げて、また別の足場に飛び移る。

 二人はその繰り返しでテンポよく移動していく。

 特に重労働ではないらしく、その間もリラックスした様子で会話していた。


「こいつどこで売る?」


「七階でいいんじゃないかな……近いし」


「確かに! 重くて面倒臭いもんね!」


 その時、暗闇から奇声が発せられた。

 少し先の足場から、瘦せ細った男が鎌を掲げて襲いかかってくる。


「お、女っ! 女だああああああぁぁぁ!」


「うるせえよ」


 マナカは懐から小型の拳銃を抜き放ち、振り向きざまに発砲した。

 弾丸は鎌の男の額を正確に捉えた。

 一撃で脳を吹き飛ばされた男は、壁や足場に激突しながら落ちていった。

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― 新着の感想 ―
鎌で襲って来た男も無言で襲撃したならタッチくらいは出来たかもね _(:3 」∠)_
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