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The seven

「な、何でいきなり七席なんですか?」


 他の皆が、「ツッコむところ、そこじゃないだろ!」と心の中でツッコむ中、エンマがセンジュに尋ねる。が、それに返答したのはカルラだった。


「現在、支援科を統率する重職は、第六席までしかいないんだよ。しかし、誰かの副官ではなく、いきなり席官に指名するんですか?」


 カルラの言に、ポテトサラダをやっと食べ終わったセンジュが説明する。


「勿論副官にもする。俺のな。香山も席官をしながら、俺の副官もしているんだ。そこは問題ない。エンマを七席にするのは、下手に兵科にエンマを取られたら、俺の生活が脅かされるからだ」


 成程。とエンマは納得する。300号室はエンマとセンジュの2人部屋だ。そこでエンマが兵科の席官の誰かの副官にでも選ばれたら、あの部屋の情報が兵科に流れる事になる。それはセンジュとしたら避けたい事態であった。


「それ、俺がセンジュ先輩の副官になるだけで良いのでは?」


 とエンマが言ったら、


「俺は実力主義だ。エンマに相応の実力があると俺が認めたから、席を与えるんだ」


 そんな返答をセンジュから言われれば、支援科総長の言葉である。誰にも言い返す事は出来なかった。


「さ、話は終わりだ。俺も食べ終わったし、お前らも部屋に戻って登校の準備をしろ。俺も午前中にエンマの席を申請しておく」


 そうセンジュは言い、マジックハンドでトレイを持ち上げ、調理場へと持って行く。センジュの言動に呆気に取られる皆だったが、ハッと我に戻ったカルラに、


「皆、登校準備だ!」


 と声を掛けられ、皆も食べ終わった器の乗ったトレイを、調理場へと持って行く。


 ◯ ◯ ◯


「司馬、今日は午前中は能力測定で、午後はセンレンを使った他学級との対抗戦だから、体操服とジャージを忘れるなよ」


 食堂を出たところで、大福はエンマにそう告げると、コーメイと共に自室へ戻って行った。


「どう言う事?」


 エンマがシュラとラセツへ視線を向けると、


「能力測定は体力測定みたいなものらしいよ。センレンは分かる?」


「カプセルを使った、擬似戦闘訓練だろう?」


 エンマの答えに首肯するシュラ。


「そう。この寮にもあるセンレン室のでっかい版が、学校にあるんだ。それを使って、他の教室の学生たちと対抗戦を、2週に1度やるんだって。まあ、今日が初めてだけど。それで成績が良ければ、上の学級に昇格出来るんだ」


「じゃあ、成績が悪かったら、下の学級に落とされるのか?」


「そうみたいだよ?」


 とシュラの説明に、うんうんと頷くエンマだったが、それに対してセンジュが、


「お前ら特一だろ?」


「? はい」


「なら降格の心配はない。特一から降格者は出ない。だからこその特一だ」


 などと説明してきた。3人は「横綱みたいだな」と思い、


「ごっつぁんです」


 とエンマが取組後の相撲取りのように、手刀(てがたな)を切ると、


「ぶふっ!」


 とゲラのラセツが吹き出すのだった。


 ◯ ◯ ◯


 エンマは、部屋に戻るなり体操服とジャージを体操服入れに、運動靴を靴入れ袋に入れると、それをスクールバッグに入れ、次に机の上のトランクを開ける。中には、授業で使うタブレットに、腕時計、ガスマスク、それに軍用と言われたゴツいスマホが入っていた。


 そのスマホを手に持ち、首を捻るエンマ。確かに周りのカバーは頑丈そうだが、それにしても分厚い。厚さが1.5センチか2センチはある。何故こんなに分厚いのか? 色んな角度から眺めると、上部の右辺に丸いものが刺さっている事に気付く。それを取り出すと、ペンだった。スマホに書く用に、先はタッチペンになっているが、ペンの中程を回転させると、ボールペンに切り替わる仕様だった。更には上部を押すと、そこがライトになって点灯するし、物に挟む用にクリップが付いている。


(面白いな)


 更にスマホを調べると、真ん中からパカリと開く仕様である事が分かった。そうやってスマホを開くと、左側には耳の後ろに貼るタイプの骨伝導通信機が4枚あり、右側にはカラビナ型のマルチツールが2つ、紐で巻き付けられている。マルチツールは折り畳み式のナイフとノコギリ、缶切り、栓抜き、マイナスドライバー、レンチ、呼び笛、そしてカラビナが使用出来るようだ。それに紐は頑丈そうで、長さもそれなりにあり、先端に小さいながらフックも付いている。


「その紐、隷等級の龍の筋繊維で出来ていて、10メートルある。スマホカバーも龍骸を使っているから、余程でなければ壊れはせん」


 とエンマが不思議そうにしているのを、覗き見たセンジュが説明を加えてくれた。


「成程。それだけ長ければ、繋げれば5階建てのビルからでも余裕で降下出来ますし、片方で誰かを身体に縛れば、2、3階から降りる事も可能ですね」


 エンマの答えに、意外だな。と驚くセンジュ。普通の学生はそこまで頭が回らず、マルチツールなんて使い勝手が悪いだけだと決め付けるのが関の山だ。だが、これで1人でも多く人を救えると考えられるエンマの思考は、やはり支援科の席官に選んで良かった。とセンジュに思わせるのだった。当のエンマは、


(軍用と言うより、探偵7つ道具みたいだな)


 なんて感想だったが。ペンのクリップもマグネシウムで出来ていて、削ってファイアスターターにも出来そうだった。


「じゃあ! 俺学校に行ってきます!」


 とエンマは腕時計をして、スマホを制服のズボンのポケットに、センジュから貰った拳鍔は腰のベルトの後ろに差し、スクールバッグにタブレットとガスマスクを入れると、センジュに挨拶して、慌てるように部屋から出ていく。


 ◯ ◯ ◯


「お! 待っててくれたんだ!」


 エンマが寮の玄関に行くと、シュラとラセツがそこにいた。


「職員室の場所、分からないでしょ? そこまで送るよ」


「おお、助かる!」


「当然」


 3人は揃って歩き出す。


「エン兄、スマホの設定終わった?」


「まだ何もいじってない」


「だろうね」


 シュラの指摘にエンマは、ポケットからスマホを取り出す。


「通信機も、指定番号を設定しないと使えない」


「マジで?」


 ラセツの指摘に驚くエンマ。


「地味に面倒臭いな」


「まあ、ここら辺は普通、入学式前に済ませておく事だからねえ」


 シュラとラセツは、エンマにあれこれ説明しながら学校へ向かった。エンマを慕うシュラとラセツに案内されて、エンマは学校へ、そして職員室へ、迷う事なく行く事が出来たのだった。



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