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「じゃあ、また明日」
「なんで当たり前のように別々で帰ろうとしてるのかしら?」
「いや、通学の時間はルーティンがあるからって話しただろ?」
「それは朝の通学って話だったはずよ、小嶋がどこに住んでるかわからない以上一緒に帰ってもらうわ、携帯はいじくってていいわよ?」
朝の通学ってそういえば言った気がする、過去の俺のうかつな発言に頭を悩ませることになってしまった。
「わかった、じゃあ近くにいるだけな?」
「それで良いわ」
帰りの電車、敏則と篠原は近くにいる者のお互い携帯をポチポチし、たまにボソッと話す程度のまま解散した。
その翌朝、康太にこんなことを言われた
「なんかお前、篠原とすごく距離の近い男子ってことで篠原狙いの奴らから警戒されてるみたいだぞ」
「は?なんで?」
「昨日、下駄箱でなんかやってたってラグビー部の方で話題になっててな」
「友達が絡まれてたから助けただけだ、それ以上でもそれ以下でもない」
「ま、そうだよなぁ……え?お前から助けに行ったの?」
「………巻き込まれた」
「本当に…お前はそういうやつだよな」
康太は愉快そうに笑っていた。
反対に敏則はまた出てきた面倒ごとに頭を抱えるのだった
放課後、図書室に着いた敏則は監視カメラ映像の確認作業を引き続き行う。
昨日も基本は敏則が監視カメラをみており、篠原には貸し出しと返却対応をお願いしていた。
(なんだ昨日は偉そうだったのに今日は遅いな)
昨日篠原に煽られたので煽り返すために教室から最速で図書室に来たのに中々篠原が来ないなぁなんて考えているとスマホが震えた。
『ごめん、なんか小嶋が後ろついてきてるっぽくてそっちにけない』
『了解、何なら今日はそのまま帰っちゃってもいいぞ』
『いや、もう少ししたらバスケ部に行かないといけないはずだからそれまで耐えてから行く』
「なんか大変そうだなぁ…」
敏則は顔がイケメンというわけではない、それ故異性に好かれるというか執着されたことなどないので篠原の現状なついては顔が良いと大変だなぁと思いながら映像を眺める。
そして15分後に篠原がやってきた
「ごめん、遅れた」
「いや、問題ない……大変だったな?」
「本当よ、気持ち悪いって言いそうになっちゃたわ」
「まぁ実際文面見てるだけできもかったな…図書室に逃げなかったのは」
「小嶋にこの状況知られたらさらに面倒くさくなりそうだったからよ」
「だよなぁ」
小嶋は執着心が強いというのはわかっているのでこの状況を知られるのは可能な限り遅い方が良い
「まぁもうあいつはいいわ、映像の方はどう?」
「駄目だな、とりあえず3分の2は見たと思うがわからん」
「やっぱ無理かなぁ~」
「その可能性が高いだろうな、元々薄い線を追ってるわけだしな」
「私も見るわ、マウス貸して?」
「あいよ、あっ…」
渡す際にクリックを押してしまったことで最新映像になってしまった……どこまで見たか探すのが少し大変だ
「…ねぇ、これって更新されたから5分前の映像が映るのよね……?」
「あぁ?そうだな」
少し顔を青くした篠原が画面を止めて20秒巻き戻して再生ボタンを押す
「?」
「廊下側にいるこの人見て」
注目してみるとそこには明らかに挙動不審な男性がいた
それがなんだ?と思い篠原の方を見るとやられた…という顔をしていた
「これ…小嶋の取り巻きよ」
「はぁ!?」
「うるさい」
そこまでするのかという気持ちと取り巻きって本当にいるんだという気持ち、絶対に明日以降面倒くさいという考えで頭を抱える
「これ、明日どうなると思う?」
「あんた甘いわね、もう情報は行ってるはず…つまり」
「えぇ…今日から面倒くさいの…?」
「謝るわ、私がうかつだった」
「いや、流石に小嶋がキモすぎるだろ」
謝られたところで解決しないものは解決しない、面倒くさい事態を避ける手段を考える
「篠原、今日は30分前に帰れ」
「嫌、私の事情に藤沢を巻き込んでおいて私だけ先に逃げるなんて筋が通らないわ」
「でも篠原がいる方が面倒くさくなるだろ……?」
「それでも、よ」
「俺、面倒くさいこと嫌いなんだけど」
「本当に悪いと思っているわ…これは本当よ」
「でも、譲れないと」
「そう、ね。これで明日藤沢に何かあったら流石に寝覚めが悪いわ」
「うーん、まぁもうわかった、好きにしてくれ」
「ごめん、迷惑をかけるわ」
「これ以降かけないように努めてくれ」
気は重いが仕方ない、今日の下駄箱も修羅場になりそうだなぁ、面倒くさいなぁ
なんでこんなことになってしまったんだろう、篠原と出会ってから面倒ごとに巻き込まれまくっている気がする、どれも篠原が悪いわけでは……どうなんだろうわかんないや
結局、今日も犯人はわからず、職員室に鍵を返し下駄箱に向かう
「?????」
「?????」
誰もいない……のか
「誰もいないみたいだな」
「そうみたい…ね?」
「まぁ構えてた分肩透かしではあるが面倒ごとに巻き込まれないならそれに越したことはないんだ、帰ろうぜ」
「そう…ね」
何故小嶋がいなかったのか、あの取り巻きは何だったのかいまいちスッキリはしないものの面倒ごとに巻き込まれないのであれば良いかと考え駅に向かう
「今日は何もなかったけど明日こそ波乱が起きそうね」
「篠原のせいだろうが」
「私だって勝手に向こうがアクションを起こし続けているだけなのよ」
「まぁそれはそうだが」
「なんとか出来るなら早くなんとかしたいわ、藤沢の帰りのルーティンも乱してしまっているようだし?」
「それに関してはいつものルーティンに音楽がなくなって雑談が入っただけだから気にしなくて良い」
「雑談という程電車の中で喋ってたかしら」
「今歩いている道含めてだよ」
「歩きスマホは危ないわよ?」
「音楽聞いてるだけだ」
「ならいいわ」
急に母親のようなことを言い始める篠原に訝しんだがその顔はいつも通りの顔だった
「………」
「何?」
「いや、何でもない」
「何でもないなら顔を見つめるのはやめてもらっても良い?キモいから」
「悪かった悪かった」
異常と言っても差し支えの無い小嶋の行動に対して面倒くさい顔はするものの彼女はずっといつも通りの顔をしているのだ、本当にそんなことあるだろうか?
(まぁこいつが強いだけかもしれないが)
自分が篠原の立場だったらと考える
クラスにいる時もダル絡みされ、放課後に付きまとわれ、いなくなったと思ったら取り巻きが自分のことを見張っている日常。そんな日常を脳内で考え出した結論は
(無理だ、絶対に疲れる)
篠原は本当に追い詰められていないのだろうか?強いメンタルの持ち主だなぁなんて思うだけで良いのだろうか
明日、康太と小林に相談することも考えなければならない、勝手に行動するのはよくないが巻き込まれているのは自分なのだ、少しくらい勝手に動いても良いだろう
「じゃあな」
「うん、また明日」
綾瀬に降りた敏則は明日の朝のプランを考えながらバスに揺られるのだった




