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2000⓪世界が変わる、その時には

  2000年平安朝もミレニアム


 本田は大作を作り上げたかのように一句読んだ。季語ないやん、上手くないからね、などと周りに弄られつつ、彼は一句読み上げた満足感に浸っていた。


 ……私は結構上手いと思ったんだけどなあ



 前年に世界が終わらなかったから、新年がやってきた。何となく世の中全てが浮かれ立っていて、テレビでは「2000年問題」とか「なんちゃら革命」とか、何十年前から同じフレームの眼鏡つけてるんだろうという政治家のおじさんが、難しそうな顔で変な横文字を多用しながら説明していた。ついこの間まで世界が滅亡するとか何とか騒いでたくせに。


 耳にする音楽も、なんとなく浮かれているようだった。早口の横文字のサビの曲をよく耳にしたが、歌えなかった。オーディション番組が流行っていて、そこから生まれたグループが人気だったけど、私の田舎では、番組が映らなかった。いや、映ったとしても、妙に厳しい我が家では見せてもらえなかっただろう。こういう経緯で私はクラスの話題についていけないのだ。

 

 唯一家族で見ていたバラエティ番組・バラバリで生まれた音楽グループ・カラフルパワーが大人気だった。特にミノリがカラフルパワーの大ファンで、私もミノリの影響でカラフルパワーのことはよく知っていた。

 カラフルパワーは2000年1月1日に新曲「ストーリー」を発売した。冬休み、ミノリの家に遊びに行ったとき、彼女はさっそく購入したストーリーのCDを聞かせてくれた。その歌詞に「世界が変わるときにはそばにいてほしい」という歌詞があり、この部分が流れた瞬間、ミノリは少し落ち着いたトーンで「そばにいてよ」とつぶやいた。私は突然のことに驚き、とっさに聞こえなかったふりをした。



 ミノリとは小学4年生の時からの友人である。鎌倉から親の仕事の都合で引っ越してきた転校生の彼女と一番最初に話をしたのが私だった。転校当日、教師に紹介され、私の右斜め前の席に着いた彼女が取り出した筆箱が私の好きなアニメのイラストの描かれたものだったので、見せてもらいたくて、いてもたってもいられず声をかけた。それから私たちはなんとなく一緒にいることが増え、1番の仲良しになった。ある時から、ミノリは私を「親友」と呼んだ。

 私にもう少し勇気が出来たら、大浦のことをミノリに打ち明けよう。そう思った。



 世界は特に変わらなかったし、何も変わってなかった。

 私の周りは、特段。

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