表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

大人になってから①

 夢を見た。

 20年以上昔の夢。古くて暗い弓道場。私は道場の隅で、誰かを探している。

 「早く伝えなくちゃ、間に合わない」

 もう、顔も声も覚えてないあの人に、私は何かを伝えようとしていた。

 袴を着ているせいか歩きにくい。いや、袴のせいじゃない、足が動かない。


―――ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ


 突然電子音が鳴り響き、朝が来たことを知る。

 ああ、また会えなかった。

 俗に言うモーニングルーティーンを始まる。顔を洗い、化粧水を塗る。トーストを焼き、コーヒーで焼けたトーストを流し込む。コーヒーの苦みで目を覚ます。変わり映えのない1日が始まる。

 1番に出勤して、1人で掃除を始める。就職して10年以上経つのに、未だに最年少の下っ端なので致し方ない。新人が入ったとしても、このルーティンを乱される方が嫌かもしれない。

 

 時々何かが詰まっているような、変な音がするコードレス掃除機をかけながら、私は夢のことを考える。

 記憶なんて、きれいなものしか残らないし、忘れていることの方が多い。

しかも、自分の都合のいいように改竄されているのだから、真面目に捉えてはいけない。


 結局、過去は過去、夢は夢のままが1番いいのだろう。

 でも、伝えたいことだけはいつか伝えておきたい。


 後悔は、ずっと未来にも続いていくのだから。


 車の音がする。誰か来たな。

 こうして私生活の「私」に戻りかけていた私を仕事場での「私」にモードを切り替えるために、深く深呼吸をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ