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Episode 9

理央が1週間ぶりにアジトで姿を現した。

鈴音は泣きそうになりながらも笑顔で出迎えた。


「理央くん、おかえり!私はもう、心配で心配で…しょうがなかったんだよ。

乃蒼ちゃんから聞いたと思うけど…あ、通信切ってたね。」


「それは俺が伝えたぜ、スズ。」


「ありがとう、あっくん。とにかく…強力な助っ人が来てくれたよって事で…良いかな?」


「オッケー、いつか一緒に遊びに行きたいかも。」


理央がそう言うと、遊んでばっかりじゃねぇかと彰仁からツッコミが入った。


「理央、お前…とっておきがあんだろ?早くスズにも教えてやれよ。」


「なぁに?とっておきって…。」


鈴音が目を丸くしている。


「公園で張り込みも兼ねて寝泊まりしてたんだよ。そしたらさ…雷虎ファミリーと龍園ファミリーが集会やってたんだよ。

お前ら盛り上がってるかーとか言ってたね。」


「お祭りかよ、んな事言ってねぇだろ。」


「ホントホント、何かパリピ…みたいな感じだった。」


「事実だとしたら気味悪いな、まるでカルト宗教じゃねぇか。」


彰仁が嫌悪感を表していると、鈴音は頷いて同意していた。


「夜の公園でパーティーみたいな盛り上がり…ますます怪しいなぁ。

理央くん、見物しに来てる人はどの位居たの?」


「あぁ…それは100人くらいかな。うるさくて眠れなかったよ。」


「それは多いね!?」


「寝る場所じゃねぇんだけどな…。

わざわざ観客まで用意して…随分と悪趣味なショータイムじゃねぇか。何が目的だ…?」


彰仁は思考を巡らせていた。

そもそも公園で集会と言う形で集まろうものなら、悪事が明るみになってファミリー存続の危機になるだろう。

わざわざ目立つような事をして気を引こうとしていたのか。


「話の内容は…何か聞こえた?」


「俺達、姫森ファミリーの名前が出てたね。あそこのボスは可愛いから嫁に欲しいとかなんだの。」


「冗談じゃねぇ…!どこまで馬鹿にしたら気が済むんだ?」


彰仁が明らかに怒りに満ちている様子だったので、思わず理央は黙り込んでしまった。

鈴音も嫁と言う単語を聞いてぽかんとしていたが、すぐに正気に戻った。


「私だって御免だよ、あんなの。もしかして、私達が敵だとはっきり認識されてるって事?」


「大体そんな感じ、マフィアの矜持(きょうじ)!」


「どっかで聞いた事あるメロディだな…。

ともかく、奴らが俺達を敵だと認識してるんだったらぶっ潰すしかねぇ、そうだろ?」


彰仁がそう言うと、鈴音と理央は頷いていた。


「まぁ…色々聞きたい事もあるけど、とにかく私は…理央くんが戻ってきてくれて嬉しい!

実はね、あっくんは…アイツが失踪したのは俺の責任だ、とか言って…私にどうしたらいいんだとか言って相談しに来てたんだよ?」


「おい、待て…それ言う必要あるか?」


彰仁は照れているのかおもむろに顔をそむける。

その姿を見て鈴音は楽しくなってきたのか、からかう様に言った。


()()()()()()()()()()()()


「いや、それは…覚えてるけどよ。それとこれとは違ぇだろ?」


鈴音の笑顔に圧倒されてるのか、どこかしどろもどろになっている彰仁である。


「あのねぇ…あくまでも私がボスなんだからね、アンダーボスの()()()()

香恋ちゃんからも聞いてるよ…何か、最近…私を見る目が違うって。」


「はぁ?そりゃ香恋の見間違いじゃねぇの…?俺は普通だぞ、別にお前の事は意識してねぇって。」


「嘘つき、やっと両想いになったかと思ったのに…。」


「お前、何言ってんだ…?」


彰仁が鈴音の言った事に耳を疑いつつ、我に返りつつツッコミを入れると、鈴音も自分が言った事に気付いたのか恥ずかしくなっている様子である。

顔を赤くして俯いてしまった。


「あれれー、おかしいなー?俺はてっきり、カップルになってたのかと思ったけど。

だってさ、アッキー…俺以外の皆が居る前でスズって呼んじゃってる事あったんだよ?」


「それは…間違えただけだ。」


「うん、確かにそうかもしれない。」


「お前はどういう立場なんだよ…。」


理央に対して突っ込んでいると、鈴音が顔が赤いまま彰仁に向かって言い放った。

涙目になっていたのは誰の目でも明らかだろう。


「もう…あっくんの馬鹿!!私に構わないでよ!」


「なっ…ちょっと待てよ!」


彰仁が追いかけようとするも、鈴音は屋上では無く自室に閉じこもってしまった。

突然の出来事に彰仁はフリーズしそうになっていた。


「俺が悪いのか?今のは…。」


「うん、アッキーが悪い。」


「はぁ、面倒臭ぇな…。拗ねられると色々と面倒なんだよ、あの子は…。」


そうぼやく彰仁は、どこか疲れている表情をしている。

そんな中、香恋と千夜が揃って駆けつけてきた。


「どうしたの、何か喧嘩でもした?」


「ボスが…何か叫んでいた気がするのですが…。」


「分かんねぇよ…俺が原因らしいけどな。何であんなに怒るのかが…本当、冗談じゃねぇ…。」


珍しくげんなりしている様子の彰仁に対し、香恋は言った。


「まぁ…色々と難しいんだよ。ボスはアタシ達のリーダーだし、頼りになるけどさ…そもそも一人の女の子なワケ。

良く分かんないけど、彰仁はボスの事…今までと違う感じで見てる事があるって。熱い視線なのか、ただ心配で目が離せないのかは知らないけど。

時間が経ったら許してくれるんじゃない?」


「そう上手く行くか?」


「大丈夫、誰よりも優しいんだから…ボスは。」


何とかなるって、といつもの変わらない調子で励ます香恋。彰仁は何となく心地良さを覚えていた。


「しかしなぁ…お前、誰にでもそんな態度を取ってたら勘違いされちまうぞ?」


無問題(モーマンタイ)、アタシはこう見えて人を見る目あるし?」


「本当かよ…。」


毒づく彰仁ではあるものの、少し口元が緩んでいた。


「あれ、アンタ笑うんだ。意外だねぇ。」


「俺を何だと思ってんだ。サイボーグとかアンドロイドとかじゃねぇんだぞ。」


「良い顔してるじゃん。側近だからって肩肘張りすぎないでよ。」


香恋が笑いかけると、彰仁はそうだな…と一言だけ言ってクールながら満更では無い表情になった。


「香恋さん…ボスは本当に大丈夫なんですか?」


「心配ではあるんだけどね…余計な事言っちゃったらいけないし。

まぁ、無理に入って行こうとしない方が良いと思うよ。」


千夜が不安そうな顔をしていたので、香恋がいつもより静かな声でフォローした。

彰仁は疲れたのか、お前らも疲れてるなら休んどけ、と一言言ってシャワーを浴びに行った。


敵ファミリーが集会をやっていた事実、鈴音が彰仁に対して恋心を寄せていたと言う事実…

この先、どうなってしまうのだろう。


彰仁はシャワーを浴びながらつぶやいた。


「知らねぇ事ばかりだな、俺は。」

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