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Episode 3

雷虎ファミリーとの最初の戦闘の後、姫森ファミリー一同はリビングに集まっていた。

そこには普段は通信室に居る航と乃蒼の姿もあった。

乃蒼が口を開いた。


「あなた達の中に怪我人も無く、無事に終えて何よりだわ。

得体の知れないファミリーだと存じていたから、色々と心配だったのよ。」


「最後の…向こうのボスの挙動にはびっくりしちゃったけど、何とかなったよね!」


鈴音がそう言うと、戦闘に参加していた8人は頷いた。

それを見て乃蒼はホッとしている様だった。

続けて彰仁が口を開く。


「まぁ何だ…最悪の場合は通信室の二人にも出て来てもらわなきゃいけない、って考えてたんだ。

航は死神の力を持ってるし、乃蒼はあらゆる属性の魔法を器用に操る賢者だ。

そんな最強と言っても良い力を知られると面倒だと思ったからな…。最善は尽くしたぜ。」


「理央がだらしないのが改めて分かっちゃったけどね。こんな先輩嫌だなぁ…。」


友介がぼやくと、卓弥は苦笑して理央は何をー、と言っていた。

頭を抱えながら、彰仁が言う。


「お前な…同じ幼稚園からの仲だから大目に見てやってんだよ、少しは自覚してくれねぇか?

自分のお金ならまだしも、俺のだぞ?」


「ごめん…本当にごめん、投資で増やして返すから。こう見えて俺、結構センスあるし。」


「アッキー、どう思う?これは酷いよね。」


「最悪な使い方じゃねぇか…。本当に大丈夫なんだろうな?」


呆れた様子で言うと、理央は大丈夫だからと言って何とか彰仁を納得させた。

この様にかなりちゃらんぽらんな理央であるが、彰仁が温情を示し続けている訳があるのだ。


「能力自体はホンモノなんだよな。俺の未来予知と組み合わされると最強なんだよ、コイツは…。」


彰仁はそう呟いた。

そう、彼が持つ不思議な力は()()()()()()。どんなピンチがあっても必ず乗り越える事が出来る上に、

普通じゃあり得ない成功を収める事もある。

もちろん、それだけでは無い。普段の言動からは想像がつかないが、実は頼もしい一面もあるのが理央と言う人間なのである。

それを知っている為、彰仁は余程の事が無い限り絶縁しようとはしないのだ。


「それで…()()()()はいつ帰って来るんだい?もう1ヵ月ぐらい姿を見てない様な気がするねぇ。」


真尋がそう言うと、鈴音が答えた。


「取材旅行って言ってたからねー。新聞のネタを沢山拾ってくると意気込んでいたみたいだけど。」


「そうなのか。作戦会議は全員揃ってからじゃないとね…意思疎通が図れないと難しいだろう?」


「まぁ、通信機が使えるんだったら大丈夫だけど…飛行機とか船とか乗るみたいだしね…。

今すぐやる訳じゃないから…大丈夫じゃないかなぁ。」


鈴音がそう言うと、彰仁が頷きつつこう続けた。


「会議はダラダラとやるもんじゃねぇ、効率良くやるもんだ。

俺達ファミリーの構成員が各々作戦を練ってきたうえで…ああでは無い、こうでは無いと議論して完成させるのが理想…って所だな。」


「その大事な会議中に寝たり遊んだりしてるのはどこの誰だろうね?」


友介が冷たい目線を向けると、理央はまたしてもムッとした表情を浮かべた。


「実戦が大事なのは分かるよ。作戦を立てたと言っても…その通りに進められるか、相手がそういう動きをするかは分からないからね。

でも…君はそれ以前の問題だと思う。アキさんが毎回終わった後に愚痴を言ってるのが聞こえるからさ…、真面目にやろうよ。」


「ユウの言う通りだ、お前は緊張感が無さすぎる。強いのは確かだが…そんな態度じゃ周りの士気が上がらねぇぜ…。」


「ちぇーっ、そんな事言うならアッキーは面白い事やってよ。一発芸とかさぁ…いたっ!」


理央が冗談めかして言うと、彰仁はすかさず頭を小突いた。

そして表情を崩さずにこう言った。


「誰がやるか。とにかく、こうして苦情が出てるんだ…ボスの代わりに言ってやるけどよ、

いくら個人の自由が尊重されてるからって何やったって良い訳じゃねぇんだからな?

そこは頭に入れておけよ。」


「そうだよ、彰仁が可哀想じゃん。サブリーダーってのも凄く大変だと思うよ?

フォローしてあげなきゃ。」


香恋もすかさず応戦した。

それに対して彰仁はすまねぇなと一言言い、香恋は笑顔で良いよと言った。


「それでさ…アタシ思ったんだよ。敵が多い時にさ…アタシ一人だけじゃ迎え撃つの大変じゃないかなって思うんだけど…。」


「捌ききれない事もあるからな、丁度今回がそうだったぜ。俺達みたいに人数が少ないと…戦えるやつはとにかく前へ行けと言う事になる。

そこは作戦会議で考えよう。俺も香恋一人じゃ負担が大きいだろうと思ってたからな…ボスもそう思わねぇか?」


「うん、香恋ちゃんに任せっきりも悪いなぁって思ったからね。編成はその時に考えよっか。」


「決まりだな。」


香恋の要望に対し、鈴音と彰仁はそれぞれ改善策を考えるつもりで居る様だった。


「私は情報を更に集める事にするわ。まだ知らないことが多いもの。

 相手の拠点に乗り込まないといけない事態も考えなきゃいけないわね。」


「そうだね…僕も作戦を練る時に参考に出来るモノが見つかるだろうし、潜入調査もした方が良いかもね。」


「やらなきゃいけねぇ事は沢山あるな。各々…次の戦いに向けて…いや、最終決戦も見据えて準備を進めよう。それじゃあ解散だ。」


乃蒼と航の二人がそう言うと、彰仁はまとめの言葉を言って一同は各々散っていった。

そんな中、鈴音はまた屋上へと向かって行った。彰仁は心配なのか付いていく。

辿りついた屋上に立つと何処か黄昏ている様子だった。


「隣、良いか?」


彰仁がそう声を掛けると、鈴音は顔を見て頷き、すぐに視線を遠くに戻した。

何処か寂しそうに見えたその表情が、彰仁は気になる様だった。

色々と思案に暮れていると、鈴音が沈黙を破って口を開いた。


「私って頼りないよね…。」


「いきなり何だよ?」


「今日のだって、とっさに反応出来なくて悔しかった…。今まではそんな経験、した事なかったのに。

油断しちゃってたんだよ…もう、起き上がってこないだろうなって思ってたんだ。

結局私は…ボスらしくないなぁって。皆に守られてばっかりの存在なんだって思うと、ね…。」


そう語る鈴音の顔には涙が伝っていた。

自分の知らない所で苦悩と戦っている、そう思った彰仁はすかさず言った。


「ボスらしくないとかボスらしいとか、そんなのどうでも良い。

 お前が生きていてくれりゃそれで良いんだよ。」


「足手まといになっても、同じこと言える…?」


「言えるぜ。お前に対してそんな事思わねぇっての。

 理央の方が付き合いは長いけどよ…スズだって、俺にとっちゃ大事な幼馴染だ。

 つーか…居なかったら俺はどん底だった。

 心の中を占める大きな存在になってんだ…だから、そんな悲しい事言うんじゃねぇよ。」


いつもはポーカーフェイスで感情を表に出さない彰仁の顔が、いつもより優しさに溢れている気がした。

何より、はっきりとそういう風に言われたのは初めてである。

思わず動揺してしまったが、鈴音は嬉しかった。


「私の事、そんな風に思ってたんだ…。知らないよ?後悔しちゃっても。

 死ぬまで一緒に居てもらうんだから、覚悟してよね。」


「ああ、任せろ。お前の右腕ならここにあるぜ。」


表情が明るくなっていった鈴音を見て、彰仁は安堵を覚えた。

実は、鈴音は彰仁にとって年が僅かに離れている幼馴染なのである。妹の様な存在だ。

幼い頃はよく一緒に遊んでいたそうである。


「しかし、すっかり景色も変わっちまったよな。遊んでた公園、まだあると良いんだけどよ。」


「いつか、見に行く?」


「ああ…戦いが終わってからだな。」


屋上でファミリーの幹部かつ幼馴染同士が話している中、屋上にまた一人現れた。

彰仁が扉の音に気付いて振り返ると、理央が居た。


「ねぇねぇ、お二人さんは一体何話してたのさー?俺も混ぜてよ。」


「理央には関係ねぇだろ。」


「あはは、そんな事言わないで入れてあげてよー。理央くんだって私にとっては幼馴染の1人なんだから。」


悪態を付く彰仁とおどおどしている理央を鈴音が見かねてフォローすると、

彰仁が仕方ないなと呟いては受け入れる様子になった。


「まずさ…俺、渡したいモノがあるんだけど。」


「あ?改まって何だよ。変なモノ渡して来たら承知しねぇぜ?」


変わらず悪態をつく彰仁に対して理央はすかさず続けた。


「大丈夫だって、大したものじゃないから。その…借りてた分…2倍にして返しに来たんだ。」


そう言うと、理央は上着のポケットからお金を出してきた。

彰仁はそれを見て驚いていたが、すぐに表情を戻して言った。


「確かに2倍だな…それで、何か言う事はねぇのか?」


「だらしない事ばっかりしててごめん!もう、アッキーから色々借りたりしないから。

迷惑バッカリ掛けてたよね…本当にごめん。」


ただひたすら、謝っている様子の理央を見て溜息をつきながら彰仁は言った。


「お前…俺の事何だと思ってたんだ?親友なら何しても良いって思ってたから平気で金の無心なんてしてきてよ…。

冗談じゃねぇ。」


「違う、違うんだよ…。俺は頼る相手がアッキーしか居なくて、甘えてしまってたんだよ…。」


「甘え、ねぇ…。お前は俺が助けて欲しい時に助けてくれたことがあったか?ねぇだろ、なぁ?」


彰仁は弁解をする理央に対して怒りを覚えていた。

どんどん険悪になっていく二人を見て、鈴音は泣きそうになっていた。


「やめてよ…私の目の前で喧嘩なんかしないでよ…!

 まるで、兄弟がバラバラになっていくみたいで…見てるこっちは辛いんだから…。」


それに気付いた彰仁は気まずそうにしていた。

理央はすかさず口を開く。


「スズちゃん、ごめん。こんな所見たくなかったよね。

 折角幼馴染で集まったと思ったのな…俺は、どこで間違っちゃったんだろ…。

 もう、笑い合える日は来ないんだろうな…。」


「大丈夫、私だって分かってるつもりなんだよ…?

 あっくんと理央くんの間には、私の知らない何かもあるんだって事。」


「悪いね…。結局、俺が全部いけなかったんだ。約束を…守れなかったからね。

スズちゃんは勿論、アッキーにも…俺は、償わなきゃいけない。」


理央がそう言うと、彰仁は屋上から自室に帰る時にこう言い残した。


「俺はもう寝る、お前ら二人で話したらどうだ?

 こっちの事は考えなくて良いぜ。」


そう言うと彰仁はそそくさと屋上から姿を消して行った。

何やら機嫌が悪い様子だったと思い返し、理央は気になっていた。


「謝っても、許してもらえない事をしてしまったんだなぁ…俺って。」


「私に言われても分からないよ。でも…あっくんは、許したくないって訳じゃないと思う。

 困惑してる様に見えたんだよね…。」


「そうかな…スズちゃん、そういうの良く分かるよね。」


「何となくだけどねー。」


鈴音は感情の機微に良く気付く所がある。

彰仁みたいに表に出す事が少ない人でも見抜いてしまう程だ。


「このままで終わりたくないんだけどな…。」


理央は目を閉じてそうつぶやいた。

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