蘇り
俺の名前はレノ。黄泉の国で死神をやっている者だ。
今日は久々の休暇に羽を広げているところだ、俺は今回の休暇は人間界で過ごすと決めている。
(とはいえただこの霊体で動くのもあれだし、誰かしら人間に憑依したいんだよな〜。)
その時、視界の片隅にアパートの一室で首を吊っている女子高生ぐらいの人間を見つける。
(うーん、まぁあいつでいいや。とりあえず目一杯楽しむことを目標にしよう。)
その人間の元まで行き、ロープを鎌で切る。人間の体がゴトッと床に落ちる。床に置いてあった学生証を見るとこの女は梨恵香泉黄と言うらしい。
(よーしお邪魔しまーす。)
早速憑依し、体を慣らす。
(この女筋肉ねぇな〜、体が動かしづれ〜、あれか?こいつ死んでたから細胞かなんかがあれなのか?よくわからんけど。)
霊力を使い朽ちた細胞を回復させる。
(よし、これでだいぶマシになった。でもこの肉体もう朽ちかけてるな、歩き回りながら復活させるか。てかなんか視界悪いな。)
机の上になった財布と眼鏡を手に取り、アパートを降りて街並みを見ながら歩く。
(しっかしまぁ、やっぱり人間界は黄泉とは比べものにならんほど色んなものがあるな。こりゃあ十分楽しめそうだ。)
メイド喫茶やラーメン屋、本屋などを見て回り、ゲームセンターの前に来たとき、謎の女三人組がこちらに向かって走ってきた。
「なんでお前がここにいんだよ!もしかして、あたしたちに会いたかったの?wwwww」
その時自分の体から感じ取ったのは憎悪の感情。
(こいつが自殺した理由は、この体の感情からもわかるが絶対にこいつらだな。確かにいけ好かねえ顔してる。)
こちらをみて嘲笑う不細工なギャル共に何かしてやろうという気持ちが浮かぶ。
(そうだな……よし、殴るか。)
そう思考した瞬間に身体は動く。リーダーっぽい金髪の女の頬に思いっきり強烈なビンタをかます。
その女はのけぞり尻餅をつく。そして驚いた表情でこちらを見る。
「お、お前!柊さんに何してんだよ!」「そーだそーだ!」
左右にいた取り巻きたちがギャーギャー喚きちらかす。とりあえずその二匹も一発殴る。
(その不細工な顔を整形してあげたんだ、感謝しろよ〜。)
んなことをしていると『柊さん』と呼ばれるリーダーっぽいやつが起き上がり
「よくもこのあたしの顔に傷をつけたな泉黄!覚悟できてんだろうな!あ゙ぁ?」
なんか言ってるけど面倒くさくなったのでもっかい殴ることにした。そしてついでにこの体の欠点に気付いてしまった。
(こいつ表情筋死んでる〜、俺でも直せねーぞこれはよ。あれだな、これ周りからしたら無表情で顔面ぶっ叩いてるヤベー奴だな。)
なんとかして表情を作ろうとするが今作ったところであれなのでとりあえず無表情を貫くことにした。
「お前!明日学校であったら覚えてろ!。」
起き上がったあとそう捨て台詞を吐きながら不細工な三人組はどっかへ去って行った。
(まぁ今日でこの体とはおさらばだし、明日なんかねぇけどな。)
そんなことを思いながら観光を再開する。気が付けばあっという間に空が暗くなっていた。
家に着いた俺は黄泉の国へ帰るためにこの体から抜け出そうとする、だが…
(ん?……あれ、なんか………抜け出せねぇ。)