22話
ドゴォォォン!!
拳のぶつかり合いから衝撃波が広がり、周囲の木々や岩が粉砕される。
雫と巨体な死屍、両者の拳が真正面からぶつかり合ったまま、互いに一歩も引かない。
雫「ぐっ…コンチクショーー!!」
だが、徐々に雫の腕が震え始めた。
筋力が違う。
体格が違う。
そして何より、この死屍に刻み込まれている戦闘技術が高い。
確かに感じ取れる強者のオーラ。
肌がピリつく闇に呑まれた漆黒の覇王色。
雫「言葉を失いただの殺戮マシーンと化してしまったのね」
「こんなにも強いのに…」
死屍「ヴォォォォォォォォォォォ!!」
巨体の死屍が咆哮し、もう片方の拳を叩き込む。
雫が咄嗟に氷の壁を生成するが、壁は紙のように砕け散った。
雫「くっ!!」
「力強すぎーーー!!」
距離を取ろうとする雫に、巨体の死屍が容赦なく追撃を加える。
殴る、蹴る、掴む、その攻撃は単純だが、圧倒的なパワーとスピードを誇っていた。
雫は必死に回避と防御を繰り返すが、徐々に押され始める。
雫「もぉーーー!!」
「付き纏わないでよ!!」
「変態!!」
身体の周囲に水の膜を展開するが巨体の拳が叩き込まれ、水が弾け衝撃は完全には吸収しきれない。
春情「あはははははは!」
「手も足も出ない様ね」
「逃げてるだけじゃ攻撃は当たらないわよ!」
雫「何にもしてないのに偉そうに!!」
春情「ほらほら!」
「よそ見したらダメじゃない!!」
巨体の死屍の止まらぬ追撃。
死屍「ヴォォォォォォォォォォォ!!」
雫「クゥ!!!!」
雫は空中へ飛び距離を取り上空から氷の槍を連射。
だが、巨体の死屍はそれを腕で弾き、叩き割り、まるで意に介さない。
着地を見計らって距離を詰める巨体の死屍。
激しい殴り合いが続く。
周囲の木々は薙ぎ倒され激しい土埃が立ちいくつものクレーターが衝撃の強さを物語っている。
雫の拳が巨体の死屍の腹を打ち、巨体の死屍の蹴りが雫の脇腹を捉える。
そして
ドガァァァァン!!
巨体の死屍の渾身の一撃が、咄嗟に巨体の死屍との間に氷の防御壁を作るも不完全な防御壁はものの見事に打ち砕かれ、雫に叩き込まれた。
雫「があっ!!」
不完全ながらも生成した防御壁が威力を半減させた。
それでも、雫の身体が吹き飛び岩を砕き、樹木を薙ぎ倒し、数十メートルも吹き飛ばされる。
雫「っ…………!」
「全く…女の子を…殴るなって…教わらなかったのかしら…」
身体全体を水で覆い、クッション代わりにしながら受け身を取るが、ダメージは大きい。
全身が軋み、魔力の消耗も激しい。
雫が膝をつき、荒い呼吸を繰り返す。
雫「……はぁ……はぁ……」
春情「どうしたの?」
「もう終わりかしら?」
春情の嘲笑が響く。
巨体の死屍がゆっくりと雫へと歩み寄ってくる。
その歩みは重く、一歩ごとに地面が軋む。
雫「……まだ……」
雫がゆっくりと顔を上げた。
雫「……まだよ」
軋む身体をゆらゆらとさせながら起き上がり深く、深く、深呼吸をする。
肺に空気を満たし、魔力を練り直し、精神を集中させる。
両手に水が集まり始めた。
透明な水が渦を巻き、徐々に青白い光を帯びていく。
先端だけ凍結し殺傷能力を高め、しなやかな動きが可能な水をコントロールし相手に撃ち込む水と凍結の合わせ技。
絶妙な魔力操作が問われるとても繊細で容易に出来る事ではない。
再び構えを取る。
その瞬間、周囲の空気が、凍りつくような寒さに変わった。
吐く息が白く凍り、地面に薄っすらと霜が降り始める。
気温が急激に低下していく。
これは雫の魔力が周囲の環境そのものを変質させているのだ。
雫「流氷拳!」
そう言って地面を抉る程の力で打ち付ける。
巨体の死屍は、周囲にあった巨大な岩を掴み、雫へと投げつけた。
岩が唸りを上げて飛んでくる。
さらに、倒木を掴んで投擲し、牽制しながら距離を詰めようとする。
ドガッ!ガシャァン!
雫から放たれた流氷拳が地面からしなやかに動く水流、先端が岩を打ち砕くほどの強度を持った氷結。
岩を砕き破片、倒木を避ける様に唸り巨体の死屍に通常の人間では目では追えない速度で向かっていく。
ズガン!ズガガガガガ!
無数の流氷拳が巨体の死屍に降り注ぐ。
だが、死屍はギリギリで避け擦り傷をつけるも致命傷までは与えられず、腕で払い、意に介さず前進を続ける。
だが、春情が異変に気付く。
春情「……ん?」
覇王の死屍の動きが、徐々に鈍くなり始めた。
死屍「ヴォォォォォォォォォォォ!!」
膝が重い。
肘が動きづらい。
指の関節が固まり始めている。
死屍「ヴォォォォォォォォォォォ!!」
見れば、身体の表面に薄っすらと氷が張り付いていた。
そして、その氷は内部へと浸透し、筋肉を、関節を、骨を徐々に凍らせていく。
雫「気づいた?遅いわよ」
雫が静かに言った。
雫「初めからアンタみたいな奴、打ち負かそうだなんで思ってないのよ」
そう、雫の戦術は最初から決まっていたのだ。
流氷拳で注意を引きつけながら、実は魔力で生成した水を激しい撃ち合いの中で、見えないほど微細な水の粒子を巨体の死屍の身体に付着させ蓄積させていた。
雫の魔力がそれらの水を一気に増幅と同時に凍結させているのだ。
春情「ちょっと!!」
「しっかりしなさい!!」
死屍「ヴォォォォォォォォォォォ!!」
巨体の死屍の全身が凍り始める。
まず手足の先端から、次に四肢全体へ、そして胴体へ。
凍結は容赦なく進行していく。
死屍「ヴォォ…ォォォォ…」
必死にもがく巨体の死屍だが、既に遅い。
バキバキバキバキッ!!
全身が完全に凍結し、巨体の死屍は氷の彫刻と化した。
雫「ハァーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
雫の足元に氷柱が次々と生成される。
それらを足場として、雫が跳んだ。
一段、また一段と氷柱を蹴り、加速していくその速度は、今までで最速だった。
春情「なっ!?」
春情が目を見開く。
雫が跳んだ瞬間と、春情が瞬きをした瞬間その刹那の間に、全てが決した。
バリィィィィンッ!!
凍結した巨体の死屍が粉々に粉砕された。
雫の蹴りが氷像を完全に破壊し、無数の氷片となって宙に舞った。
そしてその勢いのまま、雫は春情へと迫る。
春情「く……来るな!!」
春情が最後の悪足掻きとして、残った全ての死屍を一斉に呼び出した。
数十体の死屍が雫の前に立ちはだかるが。
ドゴォッ!ガッ!バキッ!
雫の拳と足が、まるで機関銃のように連射された。
一体を殴り飛ばし、二体を蹴り砕き、三体目を掴んで投げ飛ばし、死屍達は瞬く間に殲滅された。
雫「終わりよ」
雫の右拳に、全魔力が集中した。
螺旋模様が淡く発光、魔力を収束し、青白い光が拳を包み込む。
春情「ぎゃああああああ!!」
春情の悲鳴が山に響き渡る。
ドゴォォォォンッ!!
雫の拳が、春情の顔面に叩き込まれた。
春情の身体が吹き飛ぶが、それだけでは終わらない。
バキバキバキバキバキッ!!
春情の身体雫の拳が触れた瞬間に氷結化が始まった。顔面から、頭部全体へ、首へ、胴体へ。
凍結は瞬く間に全身を覆い尽くす。
春情「あ……が……っ……」
春情の身体が岩に激突し氷が少し砕ける。
樹木に激突しさらに砕ける。
地面を転がり、バウンドし。
そして最後。
大きな岩に激突した瞬間
バシャァァァァンッ!!
春情の身体が完全に砕け散った。
無数の氷片となって宙に舞い、光を反射しながら、やがて消えていった。
雫が着地し、ゆっくりと構えを解いた。
荒い呼吸。
全身の疲労。
魔力の枯渇。
だが、勝った。
雫「完了」
雫が小さく呟いた時、遠くで翠の戦いが続いていた。
戦いは、まだ終わっていない。
ここまでお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
文章構成力不足でうまく読み取れない部分があるかと思いますが、暖かく見守って頂けますと幸いです。
ゆっくり投稿していきますので気長にお待ちください。




