20話
多くのギャラリーが見てる中、校舎の屋上に並ぶ翠と雫と洸輝の三名は、既に戦闘形態へ。
翠と雫、二人の身体から放たれる波動が大気を震わせ、身体には光の粒子が覆うように舞い、戦闘装束が瞬時に形成されていく。
雫「私の邪魔しないでよね!」
翠「分かりました分かりました」
「危ない状況でも助太刀しませんよ」
雫「アンタのそう言うところ本当可愛くないわぁー」
翠「いいですよ別にーーー」
口喧嘩しながらも二人の身体が同時に地面を蹴った。
いや、蹴ったという表現では表しきれない程に、まるで空間そのものを圧縮するかのように、二人は一瞬で数キロメートル先の山へと跳躍した。
視界が歪み、風景が流れ、次の瞬間には既に目的地である悪魔の潜む山に着地する寸前に。
雫「洸輝いつでもいいわよ!」
洸輝「2人とも気をつけろよ」
雫の呼び掛けと同時に、山の周囲に眩い光の線が走った。
洸輝が、既に山全体を覆う強固な結界を展開していたのだ。
幾重にも張り巡らされた魔力の壁が、これから起こる戦闘の余波が外部へ漏れ出すことを防ぐと同時に外側からは普段と変わらない風景を映し出す。
無事に着地した2人。
その姿は晴翔や麗焔のような力そのものを具現化したような全身を覆う鎧ではなく洗練された外見をしている。
雫の両腕を肘まで包むグローブは、深海の底から汲み上げた水が凍りついたような、透明な青を湛えていた。
その表面には甲羅の様な幾何学模様が彫り込まれ、その周りを巻き付くように氷の結晶の煌めきが走り、拳を握るたびに冷気が滲み出すように輝きを増す。
同じ輝きを放つブーツは、膝下まで脚を守護している。
ブーツの表面に走る氷紋が一層鮮やかに輝く。
まるで装備そのものが、彼女の戦いに呼応しているかのように。
翠は右腕を肩口まで覆う装甲は、深い森の奥で育った翡翠を思わせる、鮮やかなエメラルドグリーンに輝いていた。
しかしその美しさとは裏腹に、装備の表面には竜の鱗を模した鋭利な突起が無数に走り、勇ましく、そして近寄りがたいほどに刺々しい。
対照的に、左腕は肘までの装甲に留まっている。
能力を使用するには、機動性と柔軟性が肝になる。
それでも翠の輝きは右腕に劣らず、竜の威厳を纏っていた。
両脚を膝まで守護するブーツもまた、同じエメラルドの煌めきを宿している。
その表面には竜の爪を思わせる鋭角的な装飾が施され、一歩踏み出すたびに大地を掴むような重厚感を醸し出していた。
二人が感じる山肌に這う不吉な瘴気。
それは生命を拒絶するかのような禍々しい魔力の澱みだった。
雫「あら?後方に下がったわね」
翠「向こうも戦闘態勢って事ですね」
「行きますか」
雫「そうね」
二人は気配のある方へ更に移動した。
奥へ行くほどに濃くなる瘴気の中にある二つの気配。
???「相手さんからきてくれたみたいだよ」
「こっちの場所もどうやらバレてるみたいだ」
「すごい勢いでこっちに向かってるよ」
心地よく、色気に満ちた声が山に響く。
現れた二体の悪魔は、翠と雫の実力を一瞬で見抜いていた。
ただの人間ではない。
“やり手”だと、そう直感した悪魔たちは、遊びの段階を飛ばして即座に戦闘態勢に入った。
???「ここは狭いね」
「場所を変えようか」
悪魔の身体が後方へ滑るように移動する。
その動きは人間の目には残像すら残さない。瞬く間に、彼らは山の開けた場所、崩れかけた岩場と枯れた樹木に囲まれた天然の闘技場へと陣取った。
山頂付近の開けた場所。
悪魔をの後を追う二人が標的を肉眼で確認した。
雫「みーつけた」
翠「標的を確認」
「第三悪魔と第四悪魔と識別」
「これより好戦に入る」
洸輝「了解した」
翠と雫は、二体の悪魔と遂に向かい合うことに。
悪魔のいる所に辿り着いた二人。
向き合った両者。
一体の悪魔が口の端を吊り上げ、翠に視線を向け口を開いた。
その瞳には露骨な欲望の色が浮かんでいる。
春情「初めまして」
「えーっと国際連合直属対悪鬼殲滅組織『特務機関EXOR』の方々」
「春情と申します」
「こっちは悋気」
「以後お見知り置きを」
悋気「いいなぁ〜いいなぁ〜」
片方は妖艶な笑みを浮かべた春情。
もう片方は、嫉妬に燃える瞳を持つ悋気。
雫「ご丁寧にどうも」
翠「悪魔如きが名前なんて」
「吐き気がする」
「第三、第四悪魔で十分だ」
春情「あら、そんな酷いことおっしゃらず」
「でも貴方みたいな、威勢のいい男性は大好きよ」
「容姿もとってもカッコよくて」
「惚れ惚れしちゃう」
悋気「いいなぁ〜いいなぁ〜」
春情の声は蜜のように甘く、しかし底知れぬ毒を孕んでいた。
翠「悪魔如きに惚れられても迷惑だ」
「だが、容姿がいい事は認めよう」
雫「認めんのかよ」
春情「謙遜しないところも素敵」
「自信に満ち満ちていて」
「迷惑だなんてそんな照れ隠しはしなくていいのよ」
悋気「いいなぁ〜いいなぁ〜」
翠「ッフ、何が照れ隠しだ」
「頭の中はさぞ枯れた果てた花で埋め尽くされてるんだろう」
雫「ちょっと翠」
「何呑気に会話してるのよ」
春情「そう言う、攻めた言葉も痺れるわ」
「やっぱり貴方素敵」
「お名前はなんて言うの?」
悋気「お前、いいなぁ〜いいなぁ〜」
春情「悋気そんなに嫉妬しないでくれる」
翠に向けられる悋気の嫉妬の視線。
それは止まることを知らず、ますます濃密になっていく。
翠「悪魔に名乗る名などない」
雫「ちょっと?」
春情「でも貴方は私に名を名乗ってしまうのよ」
その瞬間雫がハッした表情を浮かべる。
翠の方に目線を向けると瞳から光が失い欠けていた。
翠「緑埜み」
翠は言われるがまま自ら名を名乗ろうとしていた。
雫は咄嗟に翠の方へ駆け寄って声をかけに行く。
いや、顔面に渾身の右ストレート入れた。
バコォ!!!!!!!!!!
翠「ブフォ!!!!」
翠は勢いよく木々を薙ぎ倒しながら吹っ飛び雫が素早く春情の前に立ちはだかった。
戦闘における直感。
それは雫の研ぎ澄まされた感覚が告げる警告だった。
雫「ふぅ〜」
「間一髪ってところね」
「あれだけ大見え切っておいて、早速私の邪魔してるじゃない」
春情「あら、もう少しで聞き出さそうだったのに」
「緑埜み…何かしら」
雫「もうアンタとは会話させないわよ」
「その取り巻いてる死屍達も、ああやって会話をしながら名前を聞き出したって感じね」
「恐らく名前を呼ばれた時点で終了」
春情「ッチ」
途端に響き渡る舌打ち。
この悪魔には独特の美学がある。
好みの男は自らの死屍として永遠に側に置く。
春情「さっきから何をブツブツ喋ってるわけ?」
「いいところで邪魔しておいて」
「この古だぬきが!!」
翠と会話していた時の様な妖艶な喋り方ではなく、キレ散らかす性格の悪い人の様な口調で喋り出した。
雫「さっきまでのノロノロした話し方はどうした訳?」
「変わりすぎじゃない?」
「てか誰が古だぬきだ!」
春情「私はお前みたいな女が一番嫌いなんだよ!」
雫「私がアンタに何したって言う訳?」
「どっちにせよアンタ達は殺すけど、それでもそこまで嫌われる筋合いはないわ!」
春情と雫の視線がぶつかり合う。
空気が凍りつく。
戦いの火蓋が、今まさに切って落とされようとしていた。
ここまでお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
文章構成力不足でうまく読み取れない部分があるかと思いますが、暖かく見守って頂けますと幸いです。
ゆっくり投稿していきますので気長にお待ちください。




