15話
懶惰「何をごちゃごちゃ喋ってんだ!!!!!」
懶惰の一斉に放たれた斬撃が空を切り裂き、十の軌跡が交差しながら二人に向かって迫る。
風を切る音が耳をつんざき、大気そのものが刃と化したかのような圧迫感が襲いかかった。
懶惰「おいおい!麗焔!」
「何後ろで隠れて休んでんだよ!!」
「助けが来たからって一息ついてんじゃねー!!」
「まだまだ遊び足りねーよー!!」
麗焔「…」
晴翔「よく喋る奴だな」
晴翔の右手が宙に踊ると、黄金に輝く光の槍が五本、彼の周囲に出現した。
晴翔「光槍」
それぞれが小さな太陽のように煌めき、敵を貫く意志を宿している。
晴翔「連撃!」
晴翔の叫びと共に、光の槍が正面の分身に向かって一直線に放たれる。
しかし懶惰の分身は素早く横に跳躍し、槍をかわしながら逆に斬撃を放ってくる。
懶惰「目で追える直線軌道の攻撃で当たる奴なんかいねーよ!!」
晴翔「くぅ…!」
晴翔の限界を理解した懶惰が不敵に笑う。
光の槍は確かに強力だが、多少の軌道は変えられるが直線にしか飛ばない上、同時に五本までしか生成できない。
十体の分身相手では圧倒的に不利だった。
ガキィン!ガキィン!
光の槍と暗黒の斬撃がぶつかり合い、火花を散らしながら相殺される。
しかし防ぎきれなかった斬撃が晴翔の左肩を掠め、鮮血が舞い踊った。
晴翔「チィ…!」
晴翔は歯を食いしばりながら、次の光槍を生成する。
汗が額を流れ、魔力の消耗が激しさを増していく。
晴翔「麗焔…まだか!」
背後では麗焔が炎の力を練り続けている。
麗焔は深く息を吸い込み、内なる炎の力を身体の芯に集め始める。
力が血管を駆け抜け、心臓で鼓動するたびに増幅されていく。
だが、この技を完成させるには時間が必要だった。
身体から立ち上る熱気が空気を歪ませ、髪が静電気のように舞い上がっていた。
傷だらけになりながらも、決して諦めることなく力を蓄積し続ける。
麗焔「もう少し堪えろ」
麗焔の唇が小さく動く。
内なる炎が臨界点に達しようとしていた。
一方の晴翔は、絶え間ない攻撃に疲弊し始めていた。
力の枯渇が脳を直撃し、世界がぐらりと傾く。
晴翔「うっ...」
その一瞬のふらつきを、懶惰は見逃さなかった。
懶惰「雑魚が!!」
十体の分身が同時に跳躍し、まるで黒い津波のように晴翔に襲いかかる。
刃の雨が降り注ぎ、死神の鎌が二人の命を刈り取ろうとしたその時—
「業火大結界」
麗焔の小さく囁いた凛とした声が晴翔の耳に響き渡った。
次の瞬間、半径五十メートルにも及ぶ巨大な炎の壁が立ち上がる。
それは天を焦がすほどの高さまで伸び、ドーム状に戦場を包み込んだ。
炎の壁は美しくも恐ろしく、生命を育む温もりと全てを焼き尽くす破滅を同時に宿していた。
懶惰「なんだと...!?」
懶惰の分身たちが炎の壁に包まれ、戸惑いの表情を見せる。
しかし、彼らは立ち止まらなかった。
懶惰「何をしてももう手遅れだ!!!」
分身たちは勢いを緩めることなく、突進していく。
暗黒の刃が炎を切り裂こうとした、まさにその時—
麗焔「縮小」
巨大なドームが急激に収縮を始める。五十メートルの直径が四十、三十、二十と縮小し、最終的には直径三メートルほどの球体となって空中に浮上した。
懶惰「ぐわああああ!」
球体の中では懶惰の十体の分身が、まるで缶詰の中身のようにぎゅうぎゅうに圧縮されていた。
炎の球体は彼らの動きを完全に封じ、逃げ場を奪い去る。
一体また一体と焼失していく。
懶惰「なんだこれは!!」
「身体が焼ける!!」
麗焔「その空間からはもう出れないよ」
「これで終いだ」
「お前に足りないのは経験だな」
懶惰「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
麗焔の最後の言葉と共に、球体の内部温度が急上昇した。
炎が白熱化し、やがて
ドオオオオオオン!
空に浮かぶ球体が大爆発を起こした。
まばゆい閃光が戦場を照らし、爆音が大地を震わせる。
懶惰の分身たちは炎の中で塵となって消え去った。
爆発の余韻が静まると、麗焔と晴翔は既に限界を超えていた。
全身傷だらけの二人は、まるで糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちる。
麗焔「はぁ…随分と時間が掛かった…」
晴翔「もう…限界…」
二人は地面に横たわったまま、震える手でグータッチを交わした。
勝利の証として、そして互いの健闘を称えて。
そして静寂が戦場を包む中、二人は安らかな表情で意識を失っていった。
戦いは終わった。
彼らの絆と勇気が、絶望的な状況を覆したのだった。
ここまでお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
文章構成力不足でうまく読み取れない部分があるかと思いますが、暖かく見守って頂けますと幸いです。
ゆっくり投稿していきますので気長にお待ちください。




