13話
叫びを聞いたその懶惰は歯茎を剥き出しにした醜悪な笑みを浮かべる。
血が飛び散り地面は赤く染まっていく中血に染まった顔を上げ、燃えるような瞳で敵を睨みつける。
懶惰「まだそんな顔ができるとはお主はやはり最高だのー!」
更なる攻撃を仕掛けようとしたその時だった。
懶惰「...?」
攻撃の手が止まる。
何かがおかしい。
確かに麗焔は劣勢のはずなのに、なぜか攻撃の機会が減っているような気がする。
懶惰は一旦距離を取り、戦況を確認した。
そして、愕然とした。
懶惰「へぇー...!?」
十体いたはずの分身が、いつの間にか五体にまで減っていた。
そして今まさに、麗焔の炎に包まれた手に捕らえられた一体が、悲鳴を上げることなく焼失していく最中だった。
ジュウウウウ...!
炎が分身を完全に包み込み、灰と化していく。
麗焔「はぁはぁ...はぁはぁ...」
真実が明らかになった。
麗焔は確かに攻撃を受けていた。
一方的に見えた麗焔は、実は確実に一体ずつ分身を捕捉し、その炎の力で焼き尽くしていたのだ。
痛みを堪え、血を流しながらも、決して諦めることなく反撃の機会を窺っていたのである。
だが、その代償はあまりにも大きかった。
麗焔の全身は無数の傷で覆われ、血が止めどなく流れている。
顔は腫れ上がり、左腕は力なく垂れ下がっている。
懶惰「そんな状態になっても膝を付かんとは驚きよ」
だがその瞬間、限界を超えた身体がついに悲鳴を上げた。
膝が震え、ガクリと崩れ落ちる。
麗焔「はあ...はあ...はあ...」
荒い息遣いと共に、麗焔はその場に膝をついたが、その瞳には、まだ闘志の炎が燃え続けていた。
麗焔「はぁはぁ…」
「キリが…ない…」
懶惰「おいおい」
「それでしまいか?」
「がっかりだな」
だが、麗焔は懶惰の猛攻でダメージを受けすぎてしまった。
意識が朦朧とする中ただ倒れないように力を踏ん張るだけで精一杯だった。
懶惰「お主のその勝つ事への執念深さ賞賛に値する」
「まだ名を聞いてなかったな」
「お主の名を聞かせるがいい」
麗焔「はぁ…はぁ…こと…わる…」
懶惰「そうか、なら名もなき戦士として記憶に留めて終いにしよう」
残りの分身が一斉に麗焔に襲いかかった。
突如として、夜空が白昼のように輝いた。
麗焔「――!?」
麗焔の瞳に映ったのは、無数の光の槍が流星群のごとく天空から降り注ぐ。
いや、槍などという生易しいものではない。それは純粋なる殲滅の意志を持った光の奔流だった。
一本、また一本と、光の槍は正確無比に懶惰の分身を貫いていく。
第一の分身の胸を貫いた光は、そのまま突き抜け、大地に直径五メートルほどのクレーターを刻んだ。第二、第三の分身も同様に、まるで紙のように易々と貫かれていく。
麗焔「こ、これは一体…」
最後の光が十体目の分身の頭部を粉砕した。爆発音が空気を震わせた。
そして一瞬の静寂。
先ほどまで戦場に溢れていた懶惰の分身は、跡形もなく消滅していた。
残されたのは、十個のクレーターと立ち昇る煙のみ。
麗焔「何者が…」
答えは、天から降りてきた。
ここまでお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
文章構成力不足でうまく読み取れない部分があるかと思いますが、暖かく見守って頂けますと幸いです。
ゆっくり投稿していきますので気長にお待ちください。




