12話
再び二人の懶惰が仕掛けてきた。
懶惰の両腕が刹那に鋭い鎌に変異、と同時に右左と腕を振り下ろした。
振り下ろした刃から斬撃が四本五本複数飛びその後ろから懶惰の鎌の追撃が麗焔を目掛けて迫ってくる。
麗焔は瞬時に状況を把握し、右手に力を集中させ勢いよく地面がえぐれるほどの力で殴る。
殴りつけた地面から炎の柱が吹き出し、麗焔の周囲を囲い壁となった。
先行する斬撃を炎の柱で焼き切り、追撃の懶惰の鎌は壁を切り裂くも、上空へ身体を捻りながら飛び回避。
回避した麗焔は間髪入れずに反撃する。
手のひらをそれぞれ前後に向け炎を放射し捻った方向と逆方向へ回転し螺旋炎竜巻を発生させた。
竜巻は半径十メートルに及ぶ大きさに広がっていき懶惰を飲み込み焼失した。
麗焔「ふぅー…」
片膝をつき呼吸を整える麗焔。
静かに立ち上がろうとした時
懶惰「お主いい動きをしとるの」
先ほど焼失させたはずの懶惰の声が。
麗焔「っは!」
麗焔は、はっと声のなる方へ顔を向けるとそこには無傷の懶惰が寝っころがっていた。
懶惰「なかなかに素晴らしい判断能力をしており技の繰出し速度も申し分ない」
「だか一つ足りんのは情報…分析不足ってとこかの」
麗焔「ご丁寧にどうも」
「勝利を確信してのことか?」
懶惰「ほぅ…理解が早くて助かる」
「お主とのやりとりは楽でよい」
「喋るのは苦手だが、お主となら気楽に話せるわ」
麗焔「俺はお前と長話する気は…ない」
そう言って一気に踏み込み懶惰の懐に潜り込んだ。
踏み込んだ衝撃で周囲に衝撃波が発生し付近の炎が一瞬消え、再び燃え上がった。
懶惰「最高だね〜」
「死角に潜り込んできたか」
死角に潜り込んだ麗焔は低い体勢を維持したまま懶惰の足元に力を凝縮させた拳を打ち付ける。
懶惰は上段に攻撃がくると予測し顔の前で腕をクロスし後ろ斜め上に飛び避けたと同時に麗焔に切り掛かる。
麗焔の地面に打ち込んだ拳を中心に半径5メートル程の広さに地割れが生じ、地中に力を流し込み割れた地面から大噴火のように火柱が一気に吹き上がり範囲攻撃となった。
懶惰「ほぉーいいねぇー」
そう言いながら懶惰は火柱に呑み込まれ焼失していった。
ドス!
麗焔「…!?」
懶惰「あと足りんのは経験かの〜」
麗焔「次から次へと…」
「焼失たはずだろ」
懶惰「お主が焼き殺してるのは分身よ」
「本体に攻撃を当てんと何もならん」
背後から現れた懶惰の鎌に脇腹を刺された麗焔。
懶惰は麗焔の背中を思いっきり蹴り飛ばし脇腹に刺さった鎌を抜き、麗焔は燃え上がる松本城の瓦礫へ吹き飛んで行った。
瓦礫に埋もれる麗焔。
懶惰「こんな奴に高邁は撃ち抜かれたのか」
「冷静さを失い油断した挙句呆気なく散って行ったのか」
「あいつは人間を満喫しすぎたようだな」
そう寝そべりだから独り言のように語る懶惰。
麗焔「何をさっきからぺちゃくちゃと独り言を言ってる」
懶惰「おぉ〜まっとったよ」
「お主が起き上がるまで待っておったんだ」
「流石にこの程度では終わらんだろ?」
麗焔「話すのが嫌いな割によく喋るな…」
懶惰「今は気分が良くてね」
麗焔「そうかい」
「それはよかったな」
「俺が相手で気持ちよくなっちまったのか?」
懶惰「さっきも言ったろ、何故だかお前とは気楽に話せるんだ」
麗焔「さっきも言ったろ、俺は喋るのが嫌いなんだ」
「気持ちよくなりてーなら、もっと気持ちよくさせてやるよ」
懶惰「いいね〜」
その時、背後から懶惰の脇腹を火箭が貫く。
懶惰「グフゥ」
懶惰は脇腹を抑えながらそな場で膝をついた。
麗焔「お前に足りないのは経験だな」
そう言って微笑んだ麗焔に懶惰も不敵な笑みを浮かべて麗焔を見つめた。
懶惰「最高だ〜」
「お主は最高だよ!」
「退屈しないよまったく!!」
「もっともっともっともっと!!!!」
突如として空間が歪み、懶惰の身体が分裂を始めた。
一体が二体に、二体が四体に。
そして瞬く間に十体もの分身が麗焔を包囲した。
麗焔「ッチ!」
「何体増えんだよ」
麗焔は舌打ちをしながら身体を起こし、体勢を前傾姿勢にし、身体を炎で纏い臨戦体勢に。
懶惰「さぁ!もっと気持ちよくさせてくれ!」
それぞれが本体と同等の殺気を纏い、鋭い鎌を煌めかせている。
懶惰の嘲笑が四方八方から響き渡る。
次の瞬間、十体の分身が一斉に襲いかかった。
ズガァン! バキッ! ドゴォ!
容赦ない連続攻撃が麗焔の身体を刻みつける。
懶惰の鎌が右頬に食い込み、左肩に突き刺さり、背中に蹴りが炸裂する。
血しぶきが宙を舞い、麗焔の身体はボロ雑巾のように痛めつけられていく。
麗焔「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!」
麗焔の苦悶の叫びが戦場に響く。
ここまでお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
文章構成力不足でうまく読み取れない部分があるかと思いますが、暖かく見守って頂けますと幸いです。
ゆっくり投稿していきますので気長にお待ちください。




