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記憶の箱  作者: yamico
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依頼

私は悪魔の屋敷でダラダラと過ごした。

たまに魔王がやってきて私の様子を見て帰った。

私に元気がないことを気にしている様子だった。


私は申し訳ない気持ちになったがなかなか気分は上がらなかった。

屋敷の人たちもみんな何かを察したかのように優しく接してくれていた。


悪魔とニヤは魔王城で何か仕事があるらしく毎日出かけていっていた。

ムイは何かあると私に何かを提案してきた。

私はどれも気が進まなくて断っていた。


「シアさん!仕事ですよ!」

ムイが地下室にやってきて私の前でテーブルを叩いた。

「このまま何もしないで腐ってたらダメです!ご主人様からの依頼ですよ!さぁ!準備してください!」


私はいつもと違うムイに驚きながら椅子から立ち上がった。

「はい!」

アリと妖精たちも「お出かけだ!」と喜んで自分たちが入るバッグを持ってきた。

私がそれをベルトにつけるとアリたちは嬉しそうにそこに収まった。


「どこに行くの?」

「少し前に大型のダンジョンが自然生成されたんです。大きすぎてまだ規模も確認されていないとかで。」

「それの調査に行くの?」

「いいえ、そういう調査なら何ヶ月もかかりそうな大きなダンジョンらしいので。私たちは人間たちが行方不明になっている理由を調査してこいとのことです。」

「助けたりするってこと?」

「行方不明の原因を魔族のせいにされたくないとのことです。救助の依頼ではないですね。」

何かあるのか把握しておきたいということか。


ムイはモニターにマップを写して私に場所を教えた。

何もない山の中腹に入口があるのだという。

「よくこんな場所のダンジョンをみつけたね。」

「はい。いつからあるのかも不明のようです。」


私たちはいつものように遠視で移動できる場所を確認してから瞬間移動した。

入口に向かって歩いていると冒険者のような人たちがたくさんいた。

入口で何やら揉めているらしく人だかりができていた。


「こんなところまでわざわざ来たのに入れないとはどういうことだよ!」

「このダンジョンは高難易度と認定されました。レベル50以下の人には危険と判断され立入禁止となっております。」

この山を登ってきてここで追い返されているわけか。

それは文句も言いたくなるかもしれない。

ムイに小声で身分証を持ってきたか聞いた。

私がいつか作った偽造のカードを持ってきていた。


私たちは文句を言っている人たちをすり抜けて門番のような兵士の前に来た。

ムイは身分証を提示している。

読み取る機械のようなもので確認している。

「レベルが高いとはいえ中では何があるのかわかりません。くれぐれも気をつけてくださいね。」

そう言われて私たちは中に入った。


トンネルのような通路を進むと一気に世界が変わった。

空が高くて青い。

山の中に入ってきたのにもう別世界が広がっている。

確かに今まで見たことがない広さかもしれない。

ダンジョンにいるという感覚は全くなくなった。


「これは…どこからまわりましょうかね…」

ムイも圧巻の景色に言葉を失いかけていた。

基本的には森や草原が広がっているがさらに先には氷山のようなものも見える。

反対側にはサバンナのような砂漠のような場所も見える。


「人が行きそうなのはどっちかな。」

私たちは少しの間、他の人がどっちに向かうのか観察してみた。


「あの建物の方に向かう人が多そうですね。」

ムイが指差したのは森の向こうに見える洋館だった。

確かに何かお宝がありそうな感じはする。


私たちはとりあえずそこに行ってみることにした。

道という道はなかった。

私はマップを作りながら進んだ。

歩くと少し先までわかる。


かわいらしい魔物がたくさんいた。

こちらに向かってこないので私たちはスルーして進んだ。

見たことのない植物や実をつけている木もあった。

ヤゲンを連れてきたら喜ぶかもしれない。


私は楽しくなっていることに気がついた。

ちょっと前までは生きているのか死んでいるのかわからない顔で何もせずにぼーっとしていた。

悪魔とムイに感謝しないといけない。

気分転換にはちょうどいい依頼だった。


小一時間歩くと洋館は見えてきた。

前を歩いていた冒険者のパーティが外から中を探っていた。

中は薄暗くて何かが出てきそうな雰囲気がある。

確かにスッと入るのには抵抗がある建物だ。


私とムイは気にせずに中に入っていった。

中からは魔物の気配はある。

ムイもそれは感じ取っている様子だった。

「先に行くね。」

私はムイの前を歩いた。


館内は薄暗かった。

入ると左右に長い廊下になっている。

私はより強い魔物の気配がある方へ進んだ。

少し先に人型のゾンビのような魔物がいる。

私は出てくる前に(消えろ)と念じた。

そうやって進んでいくと奥に階段があった。


強い魔物の気配は下からしているが、こういうとき人間はまず上に行くのではないかと思う。

「先に上を見てみよう。」

ムイは頷き後ろからついてくる。

さすがに暗すぎるので炎で照らしながら進んだ。

似たようなゾンビが次々と出てくるが私はそれらを片っ端から消した。


そういえば前にこの世界にいたときは消す魔法が使えなかったはずなのに今は消えろと念じると跡形もなく消えている。

(どこに行っちゃうのかな)

ふと思ったが考えても仕方のないことだ。

魔法とはそういう不思議なものだ。


全部で4階まであったがボスっぽい魔物はいなかった。

アリが宝箱みたいなのをみつけたが開けると中には魔物が入っていた。

特に目ぼしいものもないまま私たちは下に戻り地下へ進むことにした。


今までとは比べ物にならない強い気配がする。

「何かいますね。」

ムイも戦闘態勢になった。


地下には不自然な格好の人の形をした石像があった。

まるでメデューサに見られた人が石化したようなそんな石像だった。

私は念のため(私たちは石化しない)と状態異常が起こらないようにバリアをかけた。


大きな扉が目の前に出てきた。

おそらくこの向こうに何かがいる。

「石化の魔法とか使ってくるかもしれない。」

「なるほど。では邪魔にならないように私はここで待ってますね。」

ムイは笑顔でいってらっしゃいと言った。


私は頷いて扉を開けた。

中はひんやりと冷たかった。

まるで冷蔵庫の中にいる気分になった。


部屋の真ん中に大きなテーブルがあり、たくさんの椅子が並んでいた。

そこにも石化したと思われる人型の石像が座っていた。

晩餐会でも始まるかのような豪華な作りの部屋だった。

そのテーブルの一番奥に誰かが座っている。

殺気を感じた。

私は拘束魔法を使った。

そして詠唱できないように口も塞いだ。

魔女の格好をした女がそこにいた。

女は何か言おうと口をモゴモゴさせていた。

「お前が人間を石にしたの?」

私が聞くとさらにモゴモゴしていた。

(素直に聞いたことだけに答えろ)と念じて女の口を開いた。


「そうだよ、私の魔法だよ。」

「お前を倒したら魔法は解けるの?」

「さあね?私を倒した人がいないからわからないね。」

私は少し悩んで女に向かって(石化を解除しろ)と命令した。

女は嫌な顔になったが何かを詠唱し始めた。

目の前のテーブルや後ろから人の声が聞こえてきた。


「あれ?どうなってるんだろ?」

「あの魔女に石にされるぞ!みんな逃げろ!」

石化の解けた人たちは何かを思い出したかのように慌てて階段を上がっていった。


ここで私がこの魔女を倒してもまた復活するだろう。

ダンジョンとはそういうものだ。

私は女の拘束を解いた。

女は即座にこちらに何かを飛ばしてきたが当たる前にシュッといって消えた。

「私にそんなもの効かないよ。」

私がそう言うと女は諦めたように笑いだした。

「あんた強いね。私を倒さなくていいのかい?」

「倒しに来たわけじゃないからね。おじゃましました。」

私はそう言うと扉の前で待っていたムイと合流した。

「行方不明者の一部はここにいたみたいだね。」

「10数名、慌てて階段を上がっていきました。」

後ろを振り返ると女はニコリと笑ってこちらに手を振っていた。


私は階段を上がると看板をつけた。

『この下には石化の魔法を使う魔女がいる』


「これでも下に行くなら自業自得っていうことでいいよね。」

「これだけ大きく書いたんですから、そうですね。」


私たちは洋館をあとにした。

ここだけではないようだ。

他にも何か人間が帰れなくなった何かがあるのだろう。

私とムイはとりあえず前に進んでみることにした。


私はあちらの世界で寝たきりになっていることも忘れて楽しんでいた。

この世界で生きるのも悪くないかなと思いだしていた。


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