3. まさかの手のひら返し
「……何だか今日は騒がしいな」
今日も今日とてギルドの掃除に励むルーク。
この時間帯は心を無にして作業しているが、そんなルークでも今日の異変には気付いていた。
やけにギルドが騒がしい。
ギルドの職員からは、動揺の気持ちが伝わってくる。
一体何か起こったのだろうか。
中には走り回っている冒険者もおり、ただならぬ空気だった。
「あのー、どうかしたんですか?」
「はぁ? すみません。今忙しいので」
ルークは書類をまとめている受付嬢に話しかける。
何があったのかを聞こうとしていたのだが――その答えは嫌そうな顔だ。
まともに相手にすらしてもらえない。
忙しいというのは理解しているが、そこまで切羽詰まっているものなのか。
ルークが話しかけると同時に、奥の方へと受付嬢は姿を隠してしまう。
「本当にどうしたんだろ……」
ポツンと残されたルークは、仕方なく元の掃除場所へと戻る。
まだ朝だ。
これからどんどん冒険者たちが訪れるはず。
詳しい話はもう少し先に嫌ほど聞こえてくるであろう。
そんなことより、ルークはもっと他のことを考えなくてはいけない。
自分のことだけでも精一杯なのに、他人を心配している余裕などなかった。
「まあいいか」
と。
ルークは誰にも聞こえない声で呟いて掃除の続きを再開した。
今日は午前の分の仕事を終えると家に帰ることができる。
さっさと仕事を終わらせて家に帰りたい。
やらなくてはいけないことがてんこ盛りだ。
そう考えたら、やけにギルドが騒がしい理由も特に気にならなくなってきた。
ルークは集中する。
いや――しようとした。
だがしかし、それは受付嬢の声によって邪魔されることになる。
「ルーク様ー! この辺りにルーク様はいらっしゃいますかー?」
受付嬢が呼んでいるのは、紛れもない自分の名だ。
何かヘマをしてしまったのか。
心臓がドキリと鳴ったが、すぐにそういうわけではなさそうだと察知する。
どちらかというと、受付嬢のしていることは人探しに近い。
純粋に自分を探している。
それなら逃げも隠れもする必要はなく、普通に名乗るだけだ。
「はい。何かありましたか?」
「げっ!? 貴方だったんですか?」
受付嬢はルークがさっき話しかけてきた男だと気付くと、困惑の表情を隠すことなく見せる。
できればそういう反応は我慢してもらいたかったが、もう今さら何を言っても遅い。
それよりも、要件の方がよっぽど気になる。
自分を探している人間がいるということなのだろうが、一体誰が?
受付嬢は後方にいる人間をこまねいた。
「こちらの御方がルーク様に御用があるらしいです」
「なっ!? お前ら!?」
そうして受付嬢が紹介したのは――。
忘れるわけもない。
というか、昨日会ったばかりの人間だ。
目の前で掃除したばかりの床に飲み物をこぼし、さんざん悪態をついてきた男。
あの冒険者たちだった。
その事実にルークが困惑していると、男たちが満を持して口を開く。
そして、信じられない一言を口走った。
「頼む! 俺たちのギルドに加入してくれ!」