表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/34

レオンとの婚約

何だか、身体が重くなってきたわ。


その時、レオンの声が遠くから聴こえた気がした。

レオンが呼んでるわ。私の名を呼んでる。


「エミリー、エミリー」


なぜかしら? 声が段々近づいて来る。


「頼む。目を開けてくれ。エミリー」


瞼が重いの。目を開けられないわ。


頬に、冷たい雫がポタンと落ちてくるのを感じた。

そのおかげなのか、私の両目がゆっくりと開いた。


あれ? ここはどこ?


「エミリー! 俺だ。分かるか?」


目の前に、少しやつれたレオンの整った顔があった。

涙に濡れた瞳の色が、銀色だった。


これは……また時を超えた? 前世のレオン?


「レオン様……」


レオンの手が、私の頬に触れた。


「エミリー。良かった……」


頬にレオンの手の温もりを感じる。温かい……。

夢……ではない? 私、生きてる?


「レオン様は無事ですか?」


「俺の心配か? 俺の中に巣食っていた宝剣は、取り出された。エミリーのおかげだ」


瞳の色が銀色なのは、宝剣がもう体内にはないから……。


あの時、レオンの身体の上に浮かび上がった宝剣。あれが、レオンを苦しめていた宝剣だったのね。


私は、上半身を起こそうとした。


レオンが、支えてくれる。


周囲を見渡すと、そこは、迎賓宮のレオンの部屋だった。


「私、ずっとここに?」


「一週間も意識を失っていた。どれ程心配したか……」


レオンが、私を強く抱き締めた。


心臓がドキドキしてる。私、本当に生きてるわ。

そして、レオンも生きてる。


私は、レオンにギュッと抱きついた。


レオンの温もりを感じる。本当にレオンも私も生きているのね。


その時、ノックの音と共に、扉がガチャッと開いた。


パトリックだった。その後ろには、ハンナとお父様とお母様もいる。


「お嬢様!」


「エミリー!」


レオンが立ち上がると、一斉に、私に抱きついて来る。


えー。もうちょっとレオンに抱き締めてて欲しかったかもー。

なんてね。皆、泣いてる。心配してくれたのね……。


「エミリー、目が覚めたのね」


母が私を抱き締めて大泣きし始めた。


父は、私と母を抱き締めて号泣している。


「倒れたと聞いて、ここに泊まり込んでいたんだ。本当に良かった」


一頻り泣いた後、父が涙を拭いながら、立ち上がった。


「エミリー、レオン殿下は一週間、ほとんど寝ずにお前の看病をしてくれた。礼を言いなさい」


レオンが、ずっと傍にしてくれたの?

だから、こんなにやつれてるんだわ。


「レオン様、ありがとうございます」


レオンは、人目も憚らず、また私を抱き締めた。


「礼を言うのは俺のほうだ」


えーーー! 皆、見てるよ。


父が嬉しそうに微笑む。


「それだけじゃない。エミリーを、婚約者にしたいと言ってくれた」


婚約者? お父様、私が寝てる間に、どんな交渉をしたのー!

私の知らない間に、私の人生が勝手に歩き出してるわ。


その後、父と母は、満足げに帰って行った。

なぜか、私を置いて……。


親子の対面が済むと、ハンナが、私の手を握った。


「お嬢様、こんな無茶はもう二度としないで下さい」


私の左手首には、お守りの腕輪が填っている。

あの時、私の力をセーブしてしまうから外した腕輪。


「このお守りのおかげで、お嬢様は助かったのですよ」


ん? どういう意味?


「私が駆け付けて、すぐに腕輪を填めました。このお守りは、身に着けてる者を守ります。エネルギーを使い果たせば、エネルギーの回復を促してもくれるのです」


そうだったの。そういう意味だったのね。

そっか……。だからお婆さんが、エネルギーの抑制の逆もあると言ったのね。


「お父様とお母様には、私が聖女だと知られた?」


ハンナが、首を横に振った。


「お伝えしてません」


さすがはハンナだわ。知れば、両親は大騒ぎをする。話がややこしくなるわ。




数日後。


私は、すっかり回復した。


その間、ハンナは迎賓宮に残って、身の回りの世話をしてくれた。


ハンナは、私の身なりを整えると、両手を腰に当てた。


「ところでお嬢様、あの時、私を街に置き去りにしましたね」


え? 覚えてた? ここは、記憶のない振りをしよう。


「そうだっけ?」


「とぼけましたね。あの後、私がどれ程苦労して、ここに辿り着いたか。ご存じないですよね?」


この言い方は、まさか……。


「歩いたの?」


「いいえ、駅馬車を使いました」


苦労してないじゃん。


「私も、カルドランへお供しても良いですよね?」


あー、そういうことね。カルドランへ行ってみたいと言ってたもの。


「もちろん、来てもらうつもりだったわ」


「観光しても良いですよね?」


「もちろん、私も観光するわ」


ハンナは嬉しそうに微笑んだ。


あら? ハンナの手首に、同じ腕輪が填っている。


「ハンナ、その腕輪……」


「お嬢様のお守りは返さなくて良いです。差し上げます。お守りが本当に効くと実証されましたから。私も母に頼んで作ってもらいました」


「え? 信じてなかったの? 私で試したの? そしたら意外にも効き目があったから、自分も? そういうこと?」


ハンナは、ニッコリ微笑んだ。


「お庭でレオン様がお待ちですよ。レオン様もゆっくり休まれて元気になりましたね」


はぐらかされたー。

エミリーもレオンも生きてて良かったね。と思った方は★★★★★とブクマをお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ