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高嶺の花と呼ばれる私は今日もそれらしく振る舞ってみる

作者: 梨沙

『高嶺の花』

それは、一般庶民からは憧れの存在。手を伸ばしても届かない、遠くの存在・・・。


私がそれに当てはまる。(不本意)

私がなんで高嶺の花なんて呼ばれているのか。それは入学したて、一年生の頃の出来事がきっかけ・・・。でもある。季節ごとに名前を広めてしまう事件?事態を引き起こしてしまうから。


1つ目。

定期試験における成績。

一回のテストだけならあんな日の目を見ることはなかったかもしれない。私がそう呼ばれるようになったのは、すべてのテストがきっかけです。一年生の。


学年一位。細かなミスはあるけど、ほぼ満点。これを5回。最初はまぐれかと思っていた周りの生徒も回数が増えると偶然じゃないと思い始める。ついには『高嶺の花』なんて呼びだす。


こうなることがわかっていたのか、教師は何も言わず。ただ一言、

「これから、気をつけなさい。」

とだけ。


そこからの周りの期待は予想を超えた。


「高嶺の花」なんて呼びだすくらいだから、期待されるのも分からなくはない。けど・・・普通にしてただけでここまでの事態になるかな・・・。

なんて悩んでいたら、ある子が、

「望愛ちゃんは何でもできてすごいよね。みんなができないこともすぐにできちゃうし、成績も常にトップで先生からの信頼もある。みんなの憧れだよ。」

って言ってきた。


何でもできる?常にトップ?先生からの信頼?みんなの憧れ?

待って、それは誰のこと?

「まさかとは思うけど、私のことだったりしないよね・・・?」

そう聞くと不思議そうな顔をされた。なんでそんなことを聞くのかな?とでも言いたげな顔。

「望愛ちゃんのことだよ?この学校の高嶺の花。」

ん・・・?そんな大したことをやった記憶はないんだけど・・・。困惑していたら、彩良ちゃんが

「だって、入学してから定期試験は常に学年一位、成績はオール5、教師からの信頼は厚い。この学校に望愛ちゃんだけだよ?」


私が気づかないうちにやらかしていた?でもいつ・・・?

「定期試験」「成績」「教師からの信頼」。この3つのワードだけでも十分に推測できる。


私にできること、と思ってやっていたことが、私をこの学校で唯一無二の存在へと変化させていた。


この衝撃の事実を知ったのは、春。高校二年生になってから。


遅すぎ?情報に疎い?

否定はできない。周りに興味がないから。基本は一人で行動。

一人でいることが多いからこそ、高嶺の花なんて呼ばれるようになったのかもしれない。


それなら高嶺の花らしく振る舞ってみましょう。


これが春の出来事。



〜夏〜


今年も暑い夏がやってきた。


なんてのんきなことを言ってられない。去年の夏、あのワードを連想させる出来事を増やしてしまったのだから。

一般的に「スタイルがいい」と言われれば?

モデルさんを思い浮かべるでしょう。

でも、この高校は違った。事あるごとに私の名前を出す。


「この高校でスタイルが一番いい人・・・?」

「あ・・・!あの人じゃない?入学以来学年トップの!」

「芹沢望愛さん!彼女が一番だと思う!」


なんて感じで私の名前が出ているらしい。現場に居合わせたことがないから人から聞いた話だけど。

夏に私の名前が出てくるのは、あの夏の体育の授業がきっかけなのだろう。



去年の夏。一年生の水泳の授業。


暑い日差しの中、存在感を放つ一人の少女・・・。

スタイルはよく、肌も白い。教えられたことはすぐにこなし、周りに教えている。文句のつけようのない、才女・・・。


こんな風に伝えられている。それが私である。

儚げな存在。触れれば消えてしまいそう・・・。などと言われてもいる。


去年の夏に起こったこと。まとめるなら、私が美少女とか才女とか脚色されて語り継がれるようになったこと。


今年の夏?何もやらかしてないですよね?

とか心のどこかで思っていた私を誰か叱ってください。

私を別次元の存在へとしてしまう出来事を増やしていた。


プールに行っただけです。プライベートで。

友人と一緒にいるところを、学校の人に見られていた。


「あの一緒にいる人は一体・・・?」

「もしかして彼氏?」

「望愛様に彼氏!?」

「そんなの関係ないわ!見て・・・。あの姿を。」

「綺麗の中に可愛さが・・・。」

「さすが、望愛様・・・。」


夏季休暇明けに学校にいくと、私に彼氏がいるらしいなどと言った噂が出回っていた。

これでまた、私が・・・。私がドジなのは知れ渡っていないので安心です。そんなの知られたらイメージ崩壊・・・キャラ崩壊・・・。学校での存在はなくなりそう。逆は・・・?


夏に一つ、華やかな歴史(黒歴史)を増やしました。





〜秋〜


食欲の秋。読書の秋。とかいろいろ言われるけど、私は芸術の秋と言われるのが一番しっくりくる。


絵画コンクール。絵の大会。

私がなにもやってないはずがないんです。季節を2回過ごしてきて。


全国各地で開かれる絵画の作品展に出展。

3作品しか選ばれない賞のうち、最高クラスの『特別優秀作品賞』を受賞。

ここまでなら良かったのに・・・。


地方大会にて、審査員の満点をもらい全国へ。


全国大会。

全国各地から集められた作品、約300点の中から、『最優秀賞・審査員特別賞・高校生の部最優秀作品賞』

を受賞。


地元から全国へ。新聞記者は家の前に殺到。どこの芸能人だよ。学校にももちろん取材の人が来た。学校開校以来の快挙らしい。それは、また・・・。

普通の生活を送れないのを察してきた。


今回に限っては今年です。時間経過が矛盾?普通の人とは時間感覚が違うんです、許してください。

なんて言ってるといつか・・・


「去年もなにか成し遂げているんじゃ・・・?」

「今年もまた何か歴史を残すのかしら?」


なんて声が聞こえてきそうで私は怖いです。あくまで私は普通に生活しているだけ。なんて言っても通じないから諦めます。


今秋   開校以来の快挙を成し遂げる。






〜冬〜


寒さの厳しい冬。引きこもりたくなるよね!私も引きこもりたいです。許されるのなら。許されないのが現実。



去年の冬〜?何があったっけ?


「思い出しますね・・・。望愛さんがフィギュアスケートの大会で優勝していたのを。」

「あの滑りは見事でしたわ。動画におさめておけば良かったと後悔するほどの・・・。」

「今年はなにかの大会に出るのかしら?」

「今年は、ピアノのコンクールに出るとか・・・。」

「ピアノですか!?望愛様らしい・・・。」

「今年も見に行かなければ。」

『そうしましょう!』



などといった会話が繰り広げられてます。この話から推測するに、私は去年フィギュアスケートの大会で優勝していたらしいです。当の本人は覚えてません。コンクールは日常茶飯事といっていいほど多くのものに出ているので。


今年はピアノコンクール・・・その情報はどこから・・・。まだ先生にしか言ってないはず。

聞かれた・・・?まあ、知られても構いません。私が休む日に先生が話してしまいますから。


ピアノは幼稚園の頃から始めたんでしたっけ・・・。最初はこんな続くとは思ってなかったなぁ。

今回のコンクールに出る予定は本当はなかった。また何かやらかしてしまうのではないかという不安があったから。けど、今までやってきたことがマイナスになったことはない。なら、思い切ってやってみようと思った。私にとっては黒歴史だったとしても、周りのみんなのいい刺激になるなら私にできることを全力でやりたい。やってみたい。


冬季休暇にコンクールはあった。その結果は、高校生ではありえない結果だったらしい。


「今回のコンクールは、次世代のピアニストを見つけ出す目的もありました。」

なんて言っていたのを思い出す。私はとんでもない賞を取ってしまったのだと同時に思う。


世界的に有名なピアニスト・麻谷沙奈さん、彼女から贈られる賞。

『麻谷沙奈特別審査員最優秀賞』


この賞をもらって有名にならなかった人はいないという。現役ピアニストが見込んだ若き天才。そう呼ばれることもある。


新聞からテレビ取材に変わった。


なんてことないように言ってはみるけど、内心ではめっちゃびっくりしている張本人。家族は、やっと認められたか・・・。みたいな雰囲気で、学校はもう、この学校にいてくれるだけでありがたい。とまで・・。

才女?平凡?高嶺の花?秀才?


こんな私でも・・・いや、私だからできたこと?

高嶺の花と呼ばれたのは間違いじゃなかったかもしれない。

好きで始めたことじゃないけど、喜んでくれる人がいるなら続けてもいいかと思える。





噂を知ったとき、まさか私がそんなふうに呼ばれるなんて思いもしていなかった。ただ、自分にできること。周りに影響を与えて、自分でもその名前に恥じないような行動をしなきゃと思うから。


みなさんが高嶺の花と呼ぶなら私はそれに恥ないよう今日もそれらしく振る舞ってみよう。

今日が過ぎても、多分、私の呼び名が変わることはないのだろう。












〜3年生春〜

学校一の

『高嶺の花』芹沢望愛

こんな私でも少しづつ変わることができている。高嶺の花と呼ばれ最初は私なんか・・・と思っていたけど、今では・・・それらしく振る舞おうから、どうやって呼び方を維持させようか考えている。

だって・・・せっかく呼んでくれているのに恥じる行動はダメでしょ?私のプライドが許さない!


高校生活最後の一年だけど、楽しく・・・でもみんなの模範になれるように過ごしたいの。私のわがままかもしれない、けどそれでいいと思った。

だって・・・。


みんなが楽しそうに生活しているから。私はわたしなりにできることをやっていただけ、でもそれが、こんなにも大きな成果に繋がることになるとは・・・。





私は、恋愛とは無縁の存在・・・なんて思われてるらしいけど。私には彼氏ができたんですよ?

一人でいいなんて思っていた私に。最初は興味なんてなかった。あの人に・・・。でも話していくうちに好きになってた。だから私は彼と一緒にいることを選んだ。



私が彼に伝えたこと・・・それは・・・。




『高嶺の花なんて呼ばれている私でも家では普通の女の子です。ギャップがあると思います。幻滅しないで一緒にいてくれますか?こんな私でも隣にいていいですか?』



『あなたが私のことを好きでいてくれる限りは、私もあなたのことを好きでいます。』


『これから、よろしくおねがいします』



桜の季節に新しく恋を知る・・・



高嶺の花はちゃんと手の届くところにいます。

遠い存在だなんて思わないで?


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