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竜機兵物語~難易度ベリーハードのシミュレーションRPGの世界に転生しましたが、鍛え上げたアバターと専用機で無双します~  作者: 河原 机宏
第十四章 ドルゼーバの落日

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ラストステージ出撃前②

 一通り仲間と会話を済ませ最後の一名のもとへ近づく。


「ティア、今回の戦いではラファエルも出てくるはずだ。奴の言葉を信じるなら既に『クロスオーバー』から抜けていると思うけど、敵の敵が味方である保証はない。奴が俺たちに攻撃をしてきた時は――」


「その時は私がおじ様と戦うわ。相手は熾天セラフィム機兵シリーズ<ブラフマー>……<パーフェクトオーベロン>なら互角に戦えるって前回の戦いで分かったし、私がやるべきだと思うから」


 ティリアリアの決意は固い。そこに水を差すのは野暮だろう。


「分かった。ラファエルが出てきたら頼んだよ。でもサシでやり合う必要は無いからな。味方と連携して戦ってくれ」


「分かったわ」


『ピンポンパンポーン!』


 仲間と出撃前の会話が終わると船内に妙に軽いアナウンス音が流れた。ブリッジから何か伝達事項があるみたいだ。

 クルー全員が手を止め耳をすませていると船長であるシェリンドンの声が聞こえてきた。


『皆、忙しいところごめんなさい。船長のシェリンドンです。作業しながらでもいいので少しだけ聞いてください』


 どうしたのだろうと皆ざわざわしているとシェリンドンが本題を話し始めた。


『これより本船<ニーズヘッグ>は<ホルス>、<ナグルファル>と共に『第七ドグマ』から出撃します。『ドルゼーバ帝国』の空域侵入後、すぐに敵の攻撃が開始されると思います。帝国は既に『クロスオーバー』の支配下に置かれており、国内がどういう状況になっているかは分かりません。ですがこの戦いに勝てば『ドルゼーバ帝国』はもちろん『クロスオーバー』との戦争に終止符を打てます。もう少しで戦争は終わります。だから勝って生き延びて故郷へ帰りましょう!』


 船長からげきが飛ばされると船内にクルー達の雄叫びが響き渡る。さっきまでの緊張一色の雰囲気は払拭されて気合いに満ちた空気が船内を満たした。


「さすがシェリンドン。これで皆の緊張がほぐれたな。――それじゃあ、俺たちもやりますか!」


 手を前に出して皆を見やる。俺の意図に気が付いた仲間たちが円陣を組み手を重ねていき、全員の手が重なると俺に視線が集まった。


「これまで俺たちは幾つもの戦場を駆け抜けてきた。その中で得たもの、失ったものが沢山ある。ここで負けたらその全てが無かったことになるだろう。――だから勝つぞ。勝って全員で生きてここに戻ってこよう。それが竜機兵チーム隊長である俺が皆に一番伝えたい事だ」

 

 言い終えると全員が頷き重ねた手に力が入る。そして――。


「「「「「「「「竜機兵チーム、行くぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」


 チーム全員で檄を飛ばし合って気合いを注入する。円陣を解いてそれぞれの愛機に向かっていく。

 

「ハルトッ!!」

 

 コックピットに乗り込もうとした時に誰かに呼び止められ振り向くとシリウスが息を切らして立っていた。


「シリウス、一体どうしたんだよ。まさか心配になって慌てて見送りに来てくれたのか?」


 ちょっと冗談交じりに笑って見せるとシリウスは安心した表情を見せる。


「その様子なら大丈夫そうだね。安心したよ。――最初はブリッジから君を送り出そうと思っていたんだけどセシルが直接会って来いってうるさくてね……」


「そうか、最近の彼女は随分と俺とお前に気を遣ってくれてるな。――まあ、とにかく行って大暴れしてくるよ。そして皆と一緒に帰ってくる。そしたら祝勝会を開こうぜ」


「……そうだね。君と君たちの勝利を願ってる。……ハル――白河」


 親友が拳を俺に向ける。俺も拳を作ると軽く黒山の拳に当てた。


「それじゃ行ってくるよ、黒山。シェリー達を……<ニーズヘッグ>はお前に任せたぞ」


「分かってる。ガブリエルが用意しているだろう熾天機兵はかなり高性能な機体だと思う。くれぐれも注意するんだよ」


 黒山は忠告するとブリッジに戻っていった。その背中を見送り俺は<サイフィードゼファー>のコックピットに乗り込む。

 操縦席に座り球体型の操縦桿に手を乗せると俺のマナを受け取ったドラゴニックエーテル永久機関に火が入る。

 動力部から莫大な量のエーテルが出力され機体内部を循環し始める。ハッチが閉まりモニターが光ると外の映像が映し出され、他の竜機兵や整備士たちの姿が目に留まる。

 

 この光景を今まで何回も見てきた。出撃直前のこの忙しない感じが適度な緊張感と戦意を俺に与えてくれる。

 この時思い出すのは前世の記憶が蘇った直後の試験の出来事。いきなり試験用装機兵に搭乗して起動させた時には、実際に自分の手でロボットを動かしたという事実に興奮しっぱなしだった。

 あの出来事から一年も経っていないというのに随分昔のように感じる。

 でも、あの時の興奮を俺は忘れていない。こうして相棒を起動させる度にあの時の熱量を思い出す。


「……ランド教官、ノルド国王、クラウスさん、俺たちは遂にここまで来ました。この一戦に勝って生き延びる力を俺たちに貸してください」


 見送った恩師たちに祈る思いで独りごちる。戦いに勝つことも重要だが、それ以上に大切に思うのは誰一人欠けることなく戻ってくる事だ。

 戦争においてそんな綺麗事を思うのは甘ったれなのかも知れない。けれど、俺にとって何よりも大事なのは仲間たちの生存だ。


 そろそろ『ドルゼーバ帝国』の領空に差し掛かる頃だ。そう思っているとモニターに通信が入る。これはブリッジからのプライベート通信だ。

 通信を許可するとシェリンドンの姿が映し出された。

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