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マックの隠し球

「どうしたんだよ、人の顔をまじまじと見て。何かゴミでも付いてる?」


「そんなんじゃないよ。ただハルトがミカエルやラファエルとの戦いを避ける選択を考えた事が以外でさ」


「そうかな。戦いが避けられるのならそれに越したことは無いだろ?」


「こういう事を言うのはあんまり良くないと思うんだけど、彼等は以前王都を壊滅状態にした。更にノルド国王が亡くなる原因を作り、ランドさんに至っては彼が自爆に出ざるを得ない状況に追いやった。ハルト達にとって大切な人々を死に追いやった元凶なんだよ。普通なら憎いと思うだろうし直接復讐したいと思うはずだよ。……実際のところ、ハルトはどう思っているんだい?」


 シリウスは俺に問う。他の皆も俺の答えを待つように静かになる。俺は以前王都の訓練校で教官と話をした時の事を思い出していた。


「約束したからな。憎しみに振り回されるような戦いはしないって。――そう教官と約束したんだ。確かにミカエルやラファエルに対するわだかまりはあるし、実際に戦場で奴等と出くわした時にどうなるかは自信がない。でも俺は自分の成すべき事を考え戦いたいと思ってる」


「ハルトにとって自分の成すべき事って何なんだい?」


「決まってるだろ。何百回もループし続けたこの世界を今度こそ未来へ繋ぐことだ。そしてそれを邪魔する『クロスオーバー』を叩き潰すことだよ。憎しみとかは関係なく」


「そっか」


 シリウスが安心した様子で俺を見る。ただ一瞬だけその目が悲しそうに見えた。

 今感じた違和感は一体なんだったんだ。気のせいだったのだろうか?

 シリウスに話しかけようとすると、アインが先にシリウスに噛みついた。


「以前お前が上司だった時も変なヤツだとは思ってはいたが相変わらずだな。そういう人を試すような事をして何がしたいんだ?」


「ははははは、気を悪くさせたのならごめんよ。これは僕の悪癖みたいなものさ。他人を理解したいと思う時に、こういうちょっと意地悪な言い方をしちゃうんだよね」


 話に一区切りがつき少し間が空いたところで今度はカーメル三世が神妙な面持ちで今後の戦いについて話し始める。


「今後は<ナグルファル>を加えた『聖竜部隊』とエインフェリアによる戦いが主軸になる。しかし、それでも『クロスオーバー』の熾天セラフィム機兵シリーズや量産機を相手取るのは厳しい。せめてもう一機、<サイフィードゼファー>級の機体がいると戦いが安定すると思うんだが……」


「そりゃカーメルが言うようにもう一機強力な機体がいればいいけどさ。さすがにそれは難しいだろ。仮に今からそんな装機兵の開発を始めても『クロスオーバー』との戦いには間に合わないと思うし」


「それなんじゃが、その条件にあてはまる機体を今組み立てておる。見てみるかの?」


 突然のマドック爺さんの爆弾発言に俺たちは驚いて顔を見合わせてしまう。

 その中でティリアリアとシェリンドンは神妙な面持ちをしていたので、この二人は事情を知っていそうだ。

 皆で格納庫の最奥のブロックに歩いて移動しているとティリアリアが俺の隣に来た。


「その……ごめんねハルト。後で事情を説明しようと思ってはいたんだけど怒らないでね?」


「どうして俺が怒るのさ? 一体どんな隠し玉を用意してるんだ?」


「見れば分かるわ……」


 表情が重いティリアリアが気になるが、組み立て中の新型がいると知ってワクワクしてしまうのはロボットマニアとしてのさがか。

 そして、ようやくくだんの機体がいるハンガーに到着した。

 まだ組み立て中だが、それでもこの機体が普通の装機兵に比べてかなり大型なのが分かる。


「へぇー、結構大きい装機兵だな。それに内部骨格の構造も普通のものとはかなり違って……あれ……?」


 まだ完成に至っていないパーツ一つ一つを見ていると俺はある事に気が付く。

 俺はこの装機兵を知っている。装甲のカラーリングが変更されているが組み上がっている部分を見て俺は背筋が寒くなるのを実感した。


「何で……何でこいつがこんな所にあるんだよ。こいつは俺が倒したはずだ。あの時、王都上空の戦いで消滅させたはずだ!!」


 俺が戸惑っているとカーメル三世も目を見開いてその機体を見上げていた。彼にとってもこの機体は歓迎できる存在では無かった。


「これはまさか……いや間違いない。この機体は……<オーベロン>……」


 俺たちに散々トラウマを植え付けたあの忌むべき装機兵が未完成の空虚な眼で俺たちを見下ろしていた。

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