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竜機兵物語~難易度ベリーハードのシミュレーションRPGの世界に転生しましたが、鍛え上げたアバターと専用機で無双します~  作者: 河原 机宏
第十三章 古よりの支配者

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集結の転生者たち

 一太刀で<量産型ナーガ>を葬った<スサノオ>は氷の大地に立ち二十メートルもある両刃の大剣――斬竜刀ムラクモの切っ先を<サーペント>に向ける。

 その宣戦布告とも言える挑発行為に対し<サーペント>の操者であるメタトロンは静かに答えた。


『これは驚きましたね。ジン・スパイク……『ワシュウ』で死んだと思っていたのですがまさか生きていたとは……』


 雪のような冷たさを感じるメタトロンとは対照的にモニターに映る黒髪短髪の熱血漢ジンは熱量を込めて敵に相対した。


『確かにお前達お得意の物量戦によって我が愛機<モノノフ>は倒れた。……しかし、それと同時に目覚めた<スサノオ>によって俺は九死に一生を得たのだ。俺に止めを刺さずに途中で撤退したお前の詰めの甘さに救われた形にはなったがな。それと『ワシュウ』各地にばら撒いた手下共が帰還しなかった事を不思議に思わなかったのか?』


『生憎私はとても忙しかったので気にしていませんでした。そうですか、かなりの数の装機兵を置いてきたのですが全て破壊されてしまいましたか。……まあ、いいでしょう。あなた方転生者はともかく『ワシュウ』国内の戦力にはかなりダメージを与えられましたからね』


 そう言えば『アルヴィス王国』が『クロスオーバー』の攻撃によって首都を破壊された後、『ワシュウ』に救援を頼もうとしたが繋がらなかった。

 同時期に『ワシュウ』も連中の攻撃を受けていたって言うことか。

 俺は<スサノオ>とのエーテル通信をアクティブにしてジンに状況確認を取る事にした。


「ジン! 今は見ての通り俺たちと『ドルゼーバ帝国』の残存戦力は共同戦線を張っている。間違って攻撃するなよ」


『――心得た。今まで敵対していた相手が横にいるのは変な感覚だがな。それにしてもハルト、それがお前の新しい機体か。噂には聞いてはいたが、実に素晴らしい機体だ。皆もお前たちに会いたがっていたぞ』


「そうか。俺も久しぶりにあの騒がしい連中に会ってみたいけど、今はこの状況を何とかするのが先だな。ってか、そのエインフェリアのメンバーは何処にいるんだ? まさか、お前一人だけでここまで来た訳じゃないだろ?」


『無論だ。仕込みは既に完了している。後でと言わず、すぐに皆と再会できるさ』

 

 どういう事だろうと思っていると遥か頭上に陣取っている敵の大型飛空艇<ガルーダ>で突如爆発が発生した。

 それも一回だけではなく何度も爆発している。<ニーズヘッグ>や<ナグルファル>は敵飛空艇から距離を取っていて攻撃はしていない。

 不審に思ってズームで<ガルーダ>を見ると内部から爆発が起きていた。


「これってまさか!」


『そのまさかだ。俺が伊達や酔狂で敵飛空艇の上にいたとは思ってはいまい? しかもそんな場所にいながら何もせず地上に降りて来たりはしない。――安心しろ、あの船は既に死んでいる!』


 ごめん。俺はてっきりお前が目立ちたいからあんな場所にいたんだとばかり思ってた。ちゃんと考えていたんだね。

 俺が心の中でジンに謝罪をしている間にも<ガルーダ>は高度を下げながら爆発を繰り返している。

 両舷の巨大な主翼は根元から折れ、後部のエーテルスラスターも停止した。

 全長二キロを超す怪物級の飛空艇はそのまま氷の大地に落下し呆気ない最期を迎えた。

 

 <ガルーダ>が氷原に叩き付けられる寸前に四機の装機兵が内部から脱出し、<スサノオ>の周囲に降り立った。

 それはジンと同じく、かつて俺たち竜機兵チームと死闘を繰り広げた転生者たちだった。

 ロキの<フェンリル>、ノイシュの<ドゥルガー>、それにヤマダさんとヒシマさんが搭乗する二機の<ハヌマーン>。

 転生者部隊エインフェリアの全五名が勢揃いし彼等の装機兵が威風堂々と並び立つ姿は圧巻だった。

 

 <ガルーダ>がスクラップになったのと同時に上空の大きな雲の中から『シャムシール王国』の飛空艇でありエインフェリアの母船でもある<ホルス>が姿を現した。

 空の青い色とは真逆の赤い装甲がその存在感を強く示している。これにより転生者部隊の全戦力が揃った事になる。

 『ワシュウ』が攻撃を受けたと聞いた時には心配したが、全員無事なのはさすがというべきだろう。


『あっはっはっは! 久しぶりね雪女。前回はあんたらにしてやられたけど、今回きっちりと借りは返させてもらったわ。ざまぁないわね!!』


 声高らかに悪者みたいな表情で敵を嘲笑しているのはノイシュだ。相変わらず気性が激しい。見た目は可憐なショートボブの少女なのに中身は狂犬だ。


『ノイシュ、お行儀が悪いですよ。淑女たる者上品であるべきです。例え相手が卑劣で矮小な人間で性格ブスであったとしても言葉遣いは丁寧でないといけませんよ』


 自分ではそう言いながらも中々な毒舌を披露したのは、見た目は大和撫子のような黒髪ロング美人のロキだ。

 今は女性ではあるが転生前は男だった。エインフェリアのサブリーダーを務めているが、肝心のリーダーが猪突猛進タイプなので彼女が実質リーダーみたいなものだ。


『おおっ! あそこにいるのはもしかして例の<サイフィード>の後継機じゃないか? 久しぶりだなぁ、ハルト。そっちが大変な時に助けに行けなくて悪かったな。俺たちも今そこにいるオセロ姉妹に酷い目に遭わされて動きが取れなかったんだ』


『久しぶりだな、同胞よ。想像以上にゴツイ装機兵だな。勇者スピリット指数百万といったところか。後でその機体とツーショット写真撮らせてくれ』


 ヤマダさんとヒシマさんは転生者部隊の隠れた実力者だ。転生する前は二人共初老の男性で幼馴染だったらしい。精神的に若い他のメンバーを支えている。

 ヤマダさんはともかくヒシマさんは相変わらず勇者マニアだけのような気がするが。


「皆無事で良かった。それにあんな巨大な飛空艇を破壊するなんてさすがだね」


 久しぶりの同郷の仲間たちとの再会に胸が熱くなる。しかも、こんな危機的状況での登場とは、これはまるでアニメの主人公みたいだ。


『味方のピンチに颯爽と駆けつける。くぅ~、熱い展開じゃないかぁ!! お前もそう思うよな、ヤマダ』


『いや、まあそうだけどよ。ヒシマ……周囲をちゃんと見なさいよ。以前、うちの大将たちが散々苦労させられた<ナーガ>が性能そのままに量産されて沢山目の前にいるのよ? ピンチには変わりないだろうよ』


 ヤマダさんは熱いヒシマさんとは逆に冷静に状況を分析している。エインフェリアのメンバーが助太刀してくれるとは言っても相手が悪すぎる。

 その時、この中で一番熱いであろうあの男が吠えた。


『そんなことは無い! 確かに機体性能は<ナーガ>とほとんど同じだが、あれには最も重要な部分が欠けている。――それは機体を操る操者だ!!』


「どういうこと?」


『<量産型ナーガ>のコックピットにいるのは生命体ではない。動力にマナを送るだけの装置が積まれているだけだ。つまりあの機体は無人機――そのあたりは連中の他の量産機と仕様は同じという訳だな』


「……なるほど理解した」


 ジンの説明に間髪入れず理解を示すと竜機兵チームの仲間たちがモニターの向こうで「何が分かったんだ?」みたいな顔をしていた。


「つまりあの量産型には装機兵にとって最も大事なものがまるまる無いって事だろ」


『その通りだ! 装機兵……いや、ロボットにとって最も重要なものこそ魂の通ったパイロットだ!!』


「魂のない装機兵なんてデク人形も同然! 恐れる必要はないって訳だ」


『ハルト、量産型は俺たちが引き受ける。お前たちは<サーペント>と<パールバティ>を!』


「分かった! 俺たち全員をまとめて敵に回したことを後悔させてやるさ!!」


 合流したジン達に<量産型ナーガ>を任せて俺は再び巨大な熾天セラフィム機兵シリーズ<サーペント>へと攻撃を再開した。

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