まだ序章
生きることは大して辛く『は』ない。
死ぬことも大して辛く『も』ない。
この、『は』と『も』の違いが分からぬままに人は大人になってゆく。
この違いこそが、何故か大きな意味を持つということもわからずに、人は大人となり、『生』と『死』、『性』と『視』を軽んじてただ生きる。
明日、貴方は死ぬかもしれない。
だけど、当たり前のように明日、貴方は生きているかもしれない。
この当たり前にある今日この日を、明日もまた、目が覚めたときからまるでセーブしたところからロードしたように、また単調な1日が始まったと、欠伸が出るくらいに、当たり前のように貴方は生きるだろう。
その1日が、彼女のように超刺激的且つ破滅的且つ、快楽的で絶望的であることを知りながらも、貴方は、生きていくだろう。
そのような『生き物』を、人は『人』と呼び、人は『人』を蔑むのだ。
行き絶え絶えの少女は、明日への希望を絶望へと変え、視界が途切れる隙間に夢を見る。
地獄とも呼べる世界の創造主たる女は、踏み込んだ『人』の世界に得体の知れぬ快感に身をよじらせながら、おのが心をアスファルトの最下層へと閉じ鎮めて行き、歪な『愛』を貫き通す。
両者は、決して交わることなく、女は少女の正体も知らずに『愛』を貫き通す。
少女の、『生』に絶望した一瞬だけの涙の行方は、誰も知らない…………