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【コミカライズ連載中!】追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【書籍化!】  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第三章 邪神と聖獣編

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98.チンピラ退治!


 王都の朝。

 開店準備をしているとエドガーがやってきたので会った。


 ひょろっと背の高いエドガーは、ぼさぼさの髪を掻きつつ言った。


「おはようっす、アレクさん」


「早いな。丁度良かったが」


「なんすか?」


 俺はポケットから子機を取り出して渡した。

 昨日の夜、リリシアを呪った相手をぼこぼこにしようと考えた。

 しかしエドガーと連絡取れず不発に終わったため、やり場のない怒りをダンジョン攻略で発散した。

 ――むしゃくしゃしてやった。反省はしていない。でも少しすっきりした。


 俺はエドガーに説明をする。


「これは連絡が取れるようになるマジックアイテムだ。俺に直接連絡入れるもよし、繋がらないときはダンジョンコアのコウに伝言するもよし。意思疎通がしやすくなる」


「便利っすね、ありがとうっす……へぇ、暇つぶし用のパズルとかも入ってるんすね」


「え? そうなのか?」


「はい。ここに」



 エドガーが子機の画面を俺に見せてきた。

 そこには確かに、色とりどりの華やかな画面が表示されていた。


 神のカードを五枚使ってパーティーを組み、パズル玉を揃えて敵に攻撃しながらダンジョンを攻略する『パズル&ダンジョン』略してパズダンと。

 本棚に隠れた本好きな少女を捕まえて消していく『マインスイーパー』という遊びが入っていた。


 てっきり俺は連絡専用のアイテムだと思っていたので、それ以外では子機をいじらなかった。

 こんな遊べる隠し機能があったとは。


「……ちょっと面白そうだな。暇になったらやってみよう」


「俺っちもプレイしとくっす」


「で、開店前から店に来て、どうした?」



 俺が尋ねると、楽しそうに微笑んでいたエドガーが、顔を引き締めた。


「今日、朝一番に裏組織のチンピラが嫌がらせしてくるっす。あとぷちエリの在庫に毒を混ぜる気らしいっす」


「ほう。もう潰すか」


「え?」


「裏組織の犯罪歴や居場所はもう、把握してるんだろ、エドガー?」


「ばっちりっす」


「じゃあもう倒そう。そのチンピラが来たら、やるぞ」


「りょうかいっす」


 エドガーがニヤっと笑った。



 そのとき、ドアがどんどんっと荒っぽく叩かれた。


「――さっそく来たか」


 目配せするとエドガーがドアに移動した。やる気のなさそうな態度とは裏腹に、恐ろしく素早い手つきでドアの鍵を開ける。

 

「ちょっと、アレク。おはよーさん! いるかい!?」


 入ってきたのは大家のおばさんだった。

 俺とエドガーは毒気を抜かれたかのように、肩を落とす。


「どうした、大家さん」


「店舗押さえたから、ぷちエリ運んでもらっていいかい?」


「ああ、わかったよ。大家の住んでるところに運べばいいのか?」


「うんや。うちが持ってる倉庫さ。すぐそこだよ」


「わかった。確か最初は1200本だったな」


「代金は後払いでね」


「じゃあ、エドガー店番頼む」


「りょうかいっす」



 エドガーは、部屋の隅で壁に背をもたれて軽く答える。

 大家がふくよかなおなかを揺すって驚いた。


「うわっ、誰かいたのかい!? びっくりするじゃないかい! 気配がしなかったよ!」


「影が薄いってよく言われるっす」


「冒険者の知り合い、エドガーだ。こっちはうちの店の大家さん」


「よろしくっす」


「ひょろっとしてまあ、ご飯食べなきゃダメだよ! ――じゃあ、行こうかい」


「じゃあ、頼んだ」


 俺は大家に案内されて、近くの倉庫に向かった。



 倉庫は川沿いにあって、三角屋根に赤いレンガの壁で作られた堅牢な建物だった。

 中には木箱が運ばれていた。

 ポーション用の空き箱らしく、中が仕切られている。


 マジックバッグからぷちエリを出しては箱に並べつつ大家に言う。


「そうそう。新しいぷちエリはクラウン印がついてるんだが」


「そうらしいねぇ、王様が大喜びしたって言うじゃないかい。王室御用達なんて、ますます売れちまうよ。値上げしてもいいんじゃないかい?」


「そうだな。2万ゴートは今日までにしておこう。ダンジョンの町では3万で」


「りょーかい。まだ安いと思うけどね」


「あんまり高くすると手が出なくなる人もいるだろうから……あとそうだ。この瓶、回して開けると、新品なら音がするから」


 試しに回して一本開けてみた。

 プシュッと甲高い音がする。


 大家が目を丸くした。


「なんだか、すごいじゃないか」


「古い物や、異物混入された物がすぐわかる」


「品質の証明にもなるのかい。考えてあるんだねぇ。さすがアレクだね」


「まあな」


 本当はコウの発案らしいが、言うわけには行かないので、適当にごまかした。


 それから1200本のぷちエリを、ささっと詰め終えて俺は倉庫を後にした。



 人を避けながら裏通りを歩いて帰る途中、前から歩いてくるシェリルとテティに出会った。

 誰もが振り返る美しいエルフ二人は、さながら姉妹のようだった。

 シェリルが金髪を揺らして頭を下げる。


「おはようございます、アレクさま」


「おはよう。これからギルドで練習か?」


「はい。基本からしっかりと教えていきます」


「がんばってくるね、アレクさまっ!」


 シェリルと手をつないだテティが、ぴょんっと飛び跳ねて答えた。

 金髪がふわっと広がった。


「そうそう。店に誰か来てなかったか?」


「エドガーさんがいたよ?」


「そっか。じゃあ、まだなのか。――がんばってな」


「はい、アレクさま」「はーいっ」


 朝から元気な二人と別れて俺は店に戻った。



 店にはエドガーがいた。カウンターにはリリシアが座っている。膝の上には聖白竜のラーナが乗っていた。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


「ただいま、リリシア。来てなさそうだな」


「はい。ラーナちゃんも、やる気のようですが……」


「きゅい!」


 ラーナはちっちゃな拳を掲げて鳴いた。

 エドガーが子機でゲームしながら首を傾げる。


「おかしいっすね。朝一で襲うって言ってたんですけど」


「ごろつき待ちって人生で初めてだな」


「二度と待ちたくないっすね――あ、レアカード出たっす」


 画面を叩いたり横に動かしたりしながら、なにげにはまってるエドガーだった。



 ――と。

 バタンと大きな音を立てて店のドアが開いた。

 荒い足音を響かせて男たちが二人入ってくる。


「おうおう。ぷちエリ売ってくれや」

 

 肩を怒らせ、俺をにらみながらカウンターへ向かう。


「いらっしゃいませ。何本必要ですか?」


「これで売れるだけ売れ。最低百本だ」


 硬貨一枚だけ放ってくる。

 カウンターに大銀貨が一枚、転がった。


 リリシアが眉間にしわを寄せて男をみる。


「いったい何の冗談でしょう? ぷちエリは1本2万ゴート。金貨二枚です」


「たっけぇ! ただのポーションだろ! 1000ゴートあれば十分だろ、ぎゃははは!」


 男はニヤニヤ笑いながらも大声で怒鳴った。

 後ろにいる男なんかは、リリシアの肢体にエロい視線を向けて笑っている。



 すると、エドガーが音もなく移動して準備中の札を出すと、ドアの鍵を閉めた。

 さらに道に面した窓のカーテンをするすると降ろしていく。

 リリシアはラーナに「ラーナちゃん、奥に下がっていなさいね」と隠れるよう促す。


 男たちが不穏な空気を感じ取って騒ぎ出した。


「て、てめぇ! なんのつもりだ!?」「こんなことして、ただですむと思ってんのか!」


 俺はエドガーに尋ねる。


「こいつらも証拠は揃ってるのか?」


「ばっちりっす。片方は強盗、片方は誘拐の証拠があるっすね」


 エドガーの言葉に、男たちが目の色を変えて焦る。


「な、なんだと!?」「何の証拠があるって言うんだ!」


 俺とエドガーは無言のまま、彼らの前後から挟むように近づく。指や首を回してポキポキと鳴らした。

 そして低い声で俺は言う。


「正直、もう証拠とかどうでもいい――昨夜の時点で滅ぼすって決めてあるからな!」



 言い終えるなり俺は殴り掛かった。

 彼らが驚愕して体を強張らせる。


「なっ!?」「くそっ!」


 とっさに殴り返してきたが、焦ったのか大ぶりだった。

 手の甲で払って流しつつ、脇腹を思いっきり殴りつける。


「ぐげぇっ!」


 男は白目をむきながら倒れ込んだ。

 店内が狭いせいで、男は棚に突っ込んでいきそうになった。

 俺は手を伸ばして男の腰のベルトを掴むと、床に叩きつけた。

 一瞬で大人しくなる。よく見ると気絶していた。


 一方エドガーも、あっさりともう一人の男を片付けていた。

 打撃音すらさせずに意識を刈り取った手腕はさすがだった。


 

 二人を縛り上げて猿ぐつわを噛ませると、エドガーが言った。


「残り13人っすね」



 俺は頷いて、エドガーを見る。


「じゃあ、行くか。――リリシアは衛兵詰め所に行って、話を付けておいてくれ」


「ういっす」「はいっ、ご主人様!」


 そして店をあとにした。

 ――裏組織の奴らを二度と歯向かえなくするために。


ブクマと★評価ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思われたら、↓の広告の下にある★★★★★をタップかクリックしてもらえると嬉しいです。


次話は近日更新

→99.丁寧な組織潰し!

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追放勇者の優雅な生活(スローライフ)3

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― 新着の感想 ―
[一言]  そのマインちゃうわ! (ツッコミ入れたら負け)
[一言] >> 本棚に隠れた本好きな少女を捕まえて消していく『マインスイーパー』という遊びが入っていた。 アイエエエ!?ローゼ=サン!?ローゼ=サンナンデ!?
[一言] マインスイーパーがツボった
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