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【コミカライズ連載中!】追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【書籍化!】  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第三章 邪神と聖獣編

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93.すばやいエドガーとスピカ


 王都の夜。

 日が沈んでからようやく偽造ぷちエリの調書が完成したので俺は店に戻った。

 男たちを痛めつけたが、怪我はなかった上に多数の証言があったため、俺の反撃は正当な防衛とみなされた。



 店は閉店していたが、鍵を使って中に入るとエドガーがいた。

 俺を見るなり軽く会釈してくる。


「お疲れっす、アレクさん」


「待たせてすまないな。それに急に呼び出して悪かった。助かったよ」


「いえ、これぐらいなんでもないっす」


「で、何か話したいことがあるそうだが」



 俺の言葉に、エドガーが誰もいない店内を見渡してから口を開いた。


「さっきのチンピラっすけど、裏社会の組織の下っ端でしたね」


「まあ一般人じゃないだろうな」


「その組織のボスなんですがね、邪神の像持ってるんすよ」


「え?」


 意味が分からず聞き返した。

 エドガーはぼさぼさの前髪に隠れた黒い瞳をきらりと光らせる。


「この国と周辺国は調べたって言いましたよね? 邪神の像持ってるっす。あと王都には三つ……一つはトムソンっすけど」


「ということは、偽造ぷちエリと邪教徒が手を組んでる……? いや、根っこは同じなのか」


「たぶん、そうっす。理解早いっすね。さすがアレクさん」


「後の一つは?」


「薬商のメディチっすね」


「薬……繋がってるのか?」


「俺っちもそう思って調べたんっすけど、裏組織と薬商は繋がってないっすね。別々に動いてるっす」


「別々に俺を――ぷちエリを狙ってる? 思惑が別々で、黒幕が一緒ってことか」


 薬商がぷちエリを狙うのはなんとなくわかる。

 製法を公開していないのであれば、それを奪えば自分のものにできる。


 俺の言葉に、エドガーがうなずく。


「黒幕はおそらく――」


「邪神の像の制作者、芸術家のスクラか」


「スクラも協力者の一人かもしれません。ただ謎の人物っすけど」


「じゃあスクラに会いに行った方がいいか」


「最終的にはそうするしかないっすね」


「最終的には? どういうことだ?」


 俺は疑問を口にした。

 するとエドガーが首を振りつつ言う。



「今はまだその時じゃないっす」


「なるほど。俺が王都を離れると、ここぞとばかりに黒幕の手下が攻勢に出るってわけか」


「さすがアレクさん。そうっす、危険っす。ある程度叩いてから動いた方がいいっすね」


「だな……薬商は何してる?」


「まだ動いてないっぽいっすね」


「だったら、まずは裏社会の組織か」


 エドガーが目を光らせる。


「構成員、全部調べておくっす」


「うん……それも大切だが、別件で逮捕できる証拠があれば頼む」



 俺の言葉にエドガーが首をかしげる。


「ぷちエリ関連以外っすか?」


「できれば邪神教徒の証明ができれば一番だが……邪神の像があるなら、別件で踏み込んで邪神を崇めている罪で一網打尽にできるだろ? 国の騎士団だけじゃなく教会まで巻き込める。トムソンは偶然だったが、同じことを必然的にやるんだ」


「なるほど! その手がありましたか、さすがっすね! じゃあ、調べてくるっす」


「頼んだ」


 エドガーは気楽な口調とは裏腹に颯爽とした動きで店を出て行った。



 静かになる店内。

 俺は入り口に近寄ってドアにカギをかけつつ、溜息を吐く。


「なんだかめんどうなことになってきたな……」


 裏組織は非合法なことばかりやってるだろうから割合簡単に証拠が見つかるだろう。

 問題は薬商の方だな。

 後手には回りたくないが、巧妙に証拠を隠されてたら捕まえにくい。


 ――魔物だったら敵陣に乗り込んでバッサリ斬ってもお咎めなしだろうになぁ。

 人間相手は面倒くさい。


 俺は少し疲れを感じつつ、頭を振りながらダンジョン入り口のある店の奥へと向かった。


       ◇  ◇  ◇


 コウのダンジョンを歩いて屋敷に向かっていると、途中の広場で聖白竜の少女ラーナがいた。

 俺を見つけて駆け寄って来る。


「れく、れくっ! きゃい!」


 白い髪をなびかせて、猛烈な勢いで飛びついてくる。

 俺は、後ろに一歩下がりつつ、しっかりと小さな体を抱き留める。


「よしよし。今日もダンジョン守っててくれたのか?」


「きゅい! マぁも!」


「ん? ああ、ミレーヌママのいる屋敷の庭も守ってくれたのか。偉いな」


 頭を撫でるとラーナがにんまりと笑った。

 そこにテティがやってきた。


「お帰り、アレクさま! 偽ぷちエリどーなったの?」


「ああ販売停止になったし、国王侮辱罪以外に余罪沢山で、あの二人は牢屋行きになるらしい」


「よかった! クラウン印すごい! これでもう安心だね!」


「……まだわからない。だからテティは絶対一人になるなよ」


「え?」


「ラーナもだ。必ず誰かと一緒に行動するんだ」


「う、うん。わかった」「きゅい!」


 喜びの笑顔を消して真顔で頷くテティ。ラーナもやる気で眉を寄せて頷く。

 ――さらわれる可能性があるからな。用心しないと。

 なんだか深刻な空気になったので笑って気を緩める。


「じゃあ、晩飯食べるか」


「はーい!」「きゃい!」


 二人の少女と手を繋いで屋敷へと向かった。


       ◇  ◇  ◇


 夕食を食べる前に、リリシアを連れて庭に出た。

 天使は白い翼をふわっと広げて、手を前に出す。


「――闇魔力探知オーラディティクト


 白い波動が波紋のように広がっていく。

 そして周囲の森へと消えていった。


 しばらくしてリリシアが手をおろしてポーズを解いた。


「森にはイノシシ以外の聖獣はいませんね」


「そうか。これからも急に生まれるかもしれないから、朝晩、調べてもらえるか?」


「わかりました、ご主人様。スピカちゃんみたいなかわいそうな子はできるだけ早く救済して上げたいですもの」


 リリシアが白い翼を畳みつつうなずいた。

 するとすぐ足下から声がした。


「こんばんはですぅ、アレクさま」



 見下ろすと白いウサギ、アルミラージのスピカがいた。

 白い毛並みがきれいになり、ふわっとしている。


「いつのまに」


「ついさっきまで厩舎にいたはずですが」


 俺とリリシアはしゃがみ込んで話しかける。

 スピカは後ろ足で立つと、偉そうに胸を反らした。 


「聞いてください、アレクさん。わたし、すばやくゆっくり動けるようになったですぅ」


「ほう? すばやくゆっくり?」


「こんな感じです~」


 おっとりと話し終えたとたん、スピカの姿がぶれた。

 庭や畑、柵の上など、あちこちにスピカが現れる。


 高速移動と停止を繰り返して残像を生み出しているようだ。

 その証拠に風が流れて落ち葉が舞った。



「おお! すごいな、この動き。さすが聖獣」


「スピカちゃんが元気になったようでなによりですわ」


 リリシアの言葉に俺もうなずく。


「もう誰にも捕まえられなさそうだ」


「アレクさんでもです?」


「無理無理。早すぎる。すごいぞ」


「わーい、ほめられたですぅ」


 スピカが額の角を振って喜びながら残像する。

 ――ふむ。この速度は使えそうだ。



「スピカ、ちょっといいか?」


 俺が両手のひらを揃えて前に出すと、スピカが素早く乗ってきた。

 スピカを覆う白い毛は少し長くて想像以上に柔らかかった。

 初日より一回りぐらい大きくなった気がする。それでもまだまだ小さいが。


 手のひらの上で首を傾げる。とがった角が生えてる以外は普通のウサギだ。可愛い。


「どうしましたかぁ?」


「その素早さで、森を見回るってできるか?」


「はーい。できますですぅ~」


「一日何回か見回って、屋敷の周囲に人間が来ていないか、変な奴がいないか、白い奴はいないか。見つけたら近寄らずに、すぐにミレーヌママへ知らせて欲しい。あとイノシシには気をつけること。できそうか?」


「はーい! 頑張りますぅ」


 おっとり話しながらも黒目の大きな瞳を輝かせる。



「無理するなよ? でもまあ元気になったようで何よりだ」


 リリシアがスピカの背中を撫でつつ微笑む。


「ご飯もちゃんと食べてるようですね」


「はーい、ママのお乳と、ぷちエリと~。果物もおいしいですぅ~。ここは天国かも~」


「みんなとはうまくやれていますか?」


「シエルお兄ちゃんもテティお姉ちゃんも優しいですぅ~」


 スピカは目を細めてにこっと笑った。

 リリシアも優しい目をして微笑み返した。


 その後は聖獣たちの様子を見て回ってから、夕食を取るため屋敷へ戻った。

 俺のいないときに何かなかったか、まとめて聞き出そう。


ブクマと★評価ありがとうございます!


次話は近日更新

→94.にぎやかな晩御飯

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追放勇者の優雅な生活(スローライフ)3

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― 新着の感想 ―
調う筈のない書類が調っちゃったのか。 これで、マークのないぷちエリを持ってる人は全員、勇者アレクに返品交換と損害賠償請求できるねvvラッキー✌️
[一言] イノシシは気おつけろ… 猪パパ、完全体となって聖獣になった時 過去の所業をどう思うのかw パパはなりかけだけど、ウリ坊たちはもう聖獣なんだろうか? 猪ママはどうなっているのか分からんと…
[一言] スピカが幸せそうで何よりですね!
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