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【コミカライズ連載中!】追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【書籍化!】  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 賢者の石編

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69.幸せな船旅

 爽やかな朝日が港町に降る朝。

 俺とリリシアは大陸東の港町にいた。

 三角屋根の建物が多い。色使いも派手で屋根や壁は赤かった。


 昨夜はリリシアの翼が灰色から真っ白になるぐらい愛した。

 そしてダンジョンのことはテティとソフィシアとドラゴン幼女に託して、ここまで来た。

 命を懸けて使命を果たそうとするエドガーを助けるため。



 俺たちは異国情緒あふれる街並みを足早に通り抜けて、港へと向かった。

 本来なら楽しい気分で観光する場所。

 しかし俺とリリシアの表情は硬かった。


 まずは港に行って、ヤマタ国行きの船と乗船客の容姿を切符売り場の店員に尋ねる。


「なあ、ここがヤマタ国行きの船着き場か?」


「ああ、そうだよ。あんたらも乗るかい? ――つっても今、午前便が出たところだ。午後便になるね」


「一足違いか……時差を考えてなかったな」


 俺は苦々し気に顔をしかめた。

 リリシアが真剣な顔で尋ねる。



「すみません、ぼさぼさ頭の背の高い男性と、小さなおかっぱ頭の少女は通りましたか?」


「午前便に乗ってたね。……なんだい、あんたら知り合いかい?」


「ええ、友人です。忘れ物を届けに来たんですけど、一足遅かったようですね」


 リリシアが残念そうに首を振った。銀髪が揺れる。

 俺は男に切符を注文する。


「じゃあ、午後便でいいから、切符を売ってくれ」


「あいよ! ――っと、その前に。あんたたち、勇者やエルフじゃないよな? 特にそちらのべっぴんさん、エルフよりきれいなんだが」


「いや、違う。彼女もエルフじゃない」


 俺は率直に答えた。

 ――俺はもう勇者をクビになってるし、リリシアはエルフじゃなく堕天使だ。



 受付の男は、深くうなずく。


「旦那はうだつの上がらなそうな男だし、べっぴんさんは耳が尖ってねぇし、問題なさそうだなっ――あとは、この用紙に必要事項を書いてくれ。入国申請書だ」


「わかった」


 紙とペンを受け取って、リリシアの言語能力に補佐されながら用紙を埋めていく。

 そして記入を終えると、また受付の男に提出した。


「これでいいか?」


「んー、あーっと。……うん、Cランク冒険者か、いいね! 問題ない」


「あと気になったんだが」


「なんだい?」


「勇者が入国禁止ってのはわかるんだが、エルフが禁止って珍しいなと思ってな」



 ――勇者を呼んで魔物を倒してもらう。

 それは逆に言えば『自国の軍事力では魔物に対処できません、弱小国家です~、誰か助けて!』と対外的に宣伝してしまうようなものだった。

 だから強国は平時でも勇者を抱える。自分たちの力だけで魔物に対処できると喧伝するために。


 が、エルフ入国禁止は聞いたことがなかった。

 鼻持ちならない性格が少なくないとはいえ、美男美女ぞろいのエルフを断る理由がない。


 すると店員はニヤッと笑って理由を話してくれた。


「なあに、簡単なことさ。エルフって奴ぁ、美男美女ばかりだろ?」


「ああ、そうだ」


「ヤマタ国にある雪男雪女のエミ衆――ああ、ヤマタ国ってのは、八つの部族が覇権争いを繰り広げてたから、そう呼ばれるんだが――その部族の一つ、エミ衆のお姫様がエルフと駆け落ちしたんだよ。それ以来、エルフは入国禁止さ」


「なるほど。それは仕方ないな」


 ――他国の姫様と駆け落ちするなんて、図太い神経の持ち主もいたもんだ。



 それから店員から切符を買った。

 客室は個室の一等、二段ベッドの八人部屋の二等、大部屋の三等があった。


 迷っていると、男は俺とリリシアを見る。


「アンタたち冒険者だろ? だったら、一等がいいんじゃねーかな?」


「どうしてだ?」


「魔物が出た場合、退治に協力してくれるなら安くするからよ。戦闘時以外は気兼ねなく休めたほうがいいぜ? ちょいと最近、海の魔物が荒れてるんだわ」


「なるほど。じゃあ、それで頼む」


 俺は魔物退治協力を選びつつ、ほぼ半額で一等客室を購入した。


 それから時間をつぶして、ヤマタ国行きに乗船した。


       ◇  ◇  ◇


 夕暮れ時の中、午後便がゆっくりと埠頭から出航する。

 木造だがかなり大きな船。マストが二本伸びており、白い帆が風を受けて丸く膨らむ。


 一泊二日の旅。予想より短い。

 昔は戦地を避けながら航行したので三日かかっていたそうだが、ミコトという名君がヤマタ国を統一して太平の世になったため、最短距離で進めるようになったと教えられた。


 俺とリリシアは一等船室にいた。

 外洋のうねりに晒される船は、ローリングするようにグワングワンと揺れていた。


 俺は、はぁっと溜息を吐く。

 するとリリシアが銀髪を揺らして小首をかしげた。


「どうかされましたか? ご主人様?」


「俺は船が苦手なんだよ……久しぶりだから、忘れてた」


「え? 船酔いがひどいとかでしょうか? 回復魔法で治せますが……」


「違う。子供のころから船に乗ると、体が痛くなるんだ。船室に閉じこもってじっとしてるしかないし。それで嫌いなんだよ」


「ああ、体を動かせないと、関節が痛みますもんね」


 リリシアが納得したようにうなずいた。

 俺は違う気がしたが、よくわからないので黙った。



 そして船は日が沈んだ後も海原を進んでいく。

 夕食の時間になった。

 一等客室なので、夕食と朝食がつくのだった。


 お盆には小鉢がたくさん載っていて、魚の刺身やてんぷら、茶碗に入った蒸し玉子? などがある。

 寿司にとろろ蕎麦。しょっぱい海藻スープに、山菜ごはん。

 山海珍味膳と紹介されたが、どれも初めて食べる味でとてもおいしかった。


 俺は神妙な顔をして、エビのてんぷらをかじる。衣がさくっと口の中で鳴った。


「……なんていうか。エドガーを助けるためなのに、こんなに楽しんでいいのか」


「船の上ではもう、どうしようもありませんわ……。明日の朝、ヤマタ国の港町コベに着くまでは忘れましょう」


「そうだな……この、寿司ってのうまいな! 酸っぱいごはんと魚の切り身が口で蕩ける!」


「ですね! 全然生臭くないのが驚きです! こちらの、たけのこご飯もおいしいですっ」


 俺とリリシアは豪華な食事に舌鼓したつづみを打ちながら、異国の料理を堪能した。


       ◇  ◇  ◇


 夕食を終えた夜。

 俺とリリシアは甲板に上がっていた。

 夜の海が月光に輝く。波が大きくうねって船が揺れる。


 船首に来た俺たちは、海を割って走る船の舳先から周囲を眺めた。


「魔物が襲ってくるって言ってたけど、全然来ないな?」


「カニと飛び魚が、群れで襲ってくるそうで……今までもう何隻も沈められたと聞きましたが……」


「まさか俺の聖波気で倒してしまったとか?」


「そうかもしれません、さすがご主人様ですっ」


 リリシアが目を細めて微笑む。

 俺は頭を掻いた。


「いや、さすがにこの広い海でそれはないだろ。まあ油断しないようにしよう」


「はい、ご主人様!」



 しばらく俺たちは波打つ海を眺めた。

 一応、監視の役だが穏やかな時間が過ぎていく。


 するとリリシアが夜風に銀髪をなびかせながら目を細める。


「見渡す限り、白波を立てる月夜の海……初めて見ますわ」


「俺もだ……リリシアと見れて本当に良かった」


「ますたぁ……」


 リリシアが甘えるような声で俺にもたれかかって来る。

 夜風が少し肌寒いので、寄り添う体温がいっそう心地よかった。



 その後、夜の海の監視を終えた後、個室に戻った。

 ベッドに並んで腰かけつつ、お互いを頼りに寄り添う。

 無言でいると、ゆら、ゆらぁっと船の揺れが伝わってきた。


「……なんだかこう、ゆりかごに揺られてるみたいだな」


「ええ、海鳴りもあって、海に包まれているようです……素敵な旅ですわ……なんて幸せなんでしょう」


 俺はリリシアに腕を回して、そっと抱きしめる。


「じゃあ、俺が包めばもっと幸せになるかもな」


「ふぇ……ご主人様っ。これ以上幸せになったら、わたくし、海に溶けてしまいそうです……」


「でも、月夜の海のリリシアは一段と素敵だ」


 俺は彼女を抱き寄せて花びらのように可憐な唇にキスをした。


「ん……ますたぁっ」


 ちゅくっと舌の絡まる音が個室に響く。

 唇を重ねながら、お互いの衣服をほどいていき。

 なめらかな曲線と肌を重ね合わせて、リリシアが頬を紅潮させて喘いだ。


 そして遠くで海の波がとどろく中、俺はリリシアを上に下にへと愛しまくった。

 いつもと違う場所での愛は、どうしてこんなに激しくなるのかと思いつつ。

 でもそれが幸せだった。


       ◇  ◇  ◇


 一方そのころ、海底では。


 大陸棚に構えた陣地に闇穿孔カニ(ディープドリルシェル)と邪剣飛魚ブレードフィッシュがいた。

 二匹はボスらしく、周囲を警備するカニと魚より一回り大きかった。

 特にカニは爪の片方のドリルが立派で、魚はヒレが長い太刀となっている。


 二匹は残忍な目を光らせてニヤニヤ笑う。


「くくっ、そろそろ通るころだな」


「食料を乗せた便で間違いねぇ」


「俺たちが組んでから向かうところ敵なし。今日もごちそうだぜ!」


「ついでに人間まで食えるから最高だ!」


「じわじわ切り刻まれながら、溺れて泣き叫ぶ姿、最高の見世物だしな!」


 ぎゃははっと笑う二匹の魔物。



 そこへ部下が慌てた様子で泳いできた。

 二匹の前で止まって、必死で訴える。


「ぼ、ボス、大変ですぜっ!」


「どうした?」


「船が、船が来て!」


「おう、夜襲は手筈通りだろ? ちゃんと船底に穴開けて食料全部奪ったんだろうな?」


「ち、違います、ヤバいんすよ! ――逃げて、逃げてください!」


「はあ? どういうこった?」


 カニと飛び魚が顔を見合わせる。

 雑魚がいら立つように跳ねる。


「だから、ヤバいんすって! 逃げ――ぎゃぁぁぁ!」


 突然、二匹の目の前で部下の魚が砕け散った。



「「えっ!?」」


「いったい、なにが――ぐぉえ!!」


 ボス飛び魚が部下のいた辺りへ近づいた時、頭の半分が消し飛んだ。

 カニが驚きで体をびくっと震わせつつ叫ぶ。


「う、うわっ! なんだよこれ! ――こ、これは聖波気?! うわぁ!」


 夜の海は視界が効きにくい。

 ただ目を凝らしたカニの視界に、膨大な聖波気が青白い壁となって迫ってきているのが見えた。

 正面から迫る危険に、足を動かして必死で逃げようとする。


 しかしカニは横歩きしかできなかった。

 目の前に迫った青白い壁に向かって、涙目になって叫ぶ。


「ちょっ!? そ、そんなぁ! ――ぎゃぁああああ!」


 じゅっとボスガニが蒸発するように消えた。



 そこからはもう、海底に阿鼻叫喚の地獄絵図が広がった。

 カニや魚、それ以外の魔物たちも、必死で逃げ回るが次々と消し飛ばされていく。


「ふぎゃぁぁぁ!」「助け――いぎゃぁぁぁ!」「ほげぇぇぇ!」


 視界の効かない夜だったこと。

 そして船を襲うために、全員航路に陣取っていたのが災いした。


「なんかくるっ、なんかくるよぉ~! ――ぎゃあぁぁぁ!」


「逃げて! みんな逃げ――ふぎゃぁぁ!」


 アレクの放つ円形の聖波気に触れた瞬間、海の魔物たちが消し飛んでいく。



 アレクは放出する聖波気が膨大なため、乗り物に乗って移動しながらも魔物を無意識に倒し続けるのだった。

 これが船で体が痛くなる理由。

 寝ている間に急激なレベルアップをするための成長痛だった。


 もちろんアレクは気が付いていなかった。

 過去になんども勇者の旅をして、大河を船で下ったり、遠方の島まで遠出したため、大量の水棲魔物を倒していたのだった。

 そのおかげで、今はもう人間としてのステータスや職業勇者としてのステータスはカンストしているため、成長痛はおこらなかった。


 でもレベルだけは上がり続ける。

 ステータスはもう上がらないが、魔力だけは上限なしに増え続ける。


 海の魔物が地獄を味わっていたころ、アレクは船の個室でリリシアを抱いて幸せを味わいながら、ますます聖波気の密度を増やしていくのだった。

いつもブクマと★評価ありがとうございます!


少しでも面白いと思ったら↓の★評価ください! 作者のやる気につながります!


次話は明日更新

→70.ミコトの発明

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追放勇者の優雅な生活(スローライフ)3

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― 新着の感想 ―
[一言] >雪男雪女のエミ衆 >エミ衆のお姫様がエルフと駆け落ちしたんだよ あれ?雪女?エルフの父親と人間の母親?
[一言] こいつらいっつも・・
[気になる点] 魔力もステータスの内では?
感想一覧
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