6.初めての冒険者ギルド
本日2話更新。2話目。
街の中央にある冒険者ギルドへ来た。
3階建ての大きな建物。白壁が昼の日差しを照り返して眩しい。
中に入ると、受付カウンターがあり、隣は待合室のようになっていた。
壁際の掲示板には小さなメモが張り出されている。
奴隷商にいた美女エルフのシェリルに、登録の流れを一通り聞いていた。
なぜか彼女は俺が勇者だとわかったとたん親身になってくれていた。役立たずの元勇者なのに。
まずはカウンターにいる、眼鏡の女性に話しかける。
「冒険者登録をしたいのだが」
「はい、登録ですね登録料が一人5万ゴートかかりますが、よろしいですか?」
「ああ、構わない。二人とも頼む」
俺は大金貨を一枚、カウンターに置いた。
「わかりました――適性を調べますので、少々お待ちを」
受付嬢は大金貨をしまうと、立ち上がって奥へ行った。
ごそごそと何か用意している。
するとカウンターの後ろ、待合室の方から馬鹿にするような笑い声が響いてきた。
「新入りかよ」「ぱっとしねぇ奴だなぁ」「でも連れてる女は美人だぜ?」「回復職っぽいな……どうだい、ねーちゃん、俺のパーティーに入らない?」「ぎゃははっ!」
ちらっと眼をやると、薄汚れてだらしない男たちが酒を飲んでいた。
リリシアが怯えたように震えながら俺に寄り添ってくる。
「な、なんでしょう、あの方たちは……」
「気にするな。ただのろくでなしだ」
昼間だというのに冒険に出ずに待合室で酒を飲むなんて、まともじゃない。
風貌もやさぐれている。
すると俺の言葉が耳に入ったのか、待合室の奥に座っていた男が立ち上がった。
背中に大きな斧を背負った大男。
ずしっと足音を響かせながら俺の方に向かってくる。
「ろくでなし、だと? ――おうおう、言ってくれるじゃねぇか。新入りよぉ?」
「ああ、すまないな。正確に言えば、俺と同じろくでなし、だったな」
俺は勇者をクビになるぐらいのダメ人間なんだから、ろくでなしだろう。
大男は近づいてきて俺を見下ろした。
「俺様がてめぇと同じなわけねぇだろ! 俺様はAランクだぞ! ケンカ売ってんのか、ああん?」
「お前に売ってやれるようなものは何もない。勘違いするな」
「な、なんだと!?」
大男が目を向いて背中の巨大な斧に手をかける。
しかし受付嬢が丸い球とカードを持って戻ってきた。
眼鏡をクイッと押し上げつつ男を睨む。
「ギルド内での争いはご法度ですよ」
「ちぇっ! 覚えてろよ」
なぜか大男は悪態をついて去っていく。
――ギルドの受付嬢と言うのは、一目置かれた存在なのだろうか?
考えているうちに、受付嬢はカードを機械にセットし、玉をカウンターの上に置いた。
「この玉に手を当ててください」
「こうか?」
俺は玉に手を当てた。
すると玉が青白く光り始めた。
その光がどんどん強くなっていく。
受付嬢が目を丸くする。
「こ、これは……!」
「なんという清浄な力!」
隣にいるリリシアもすみれ色の瞳を丸くして驚いていた。
ギルドの待合室にいた冒険者たちざわつきだす。
「な、なんだ? この光……光属性か!?」「ちがうぞ、これ!? まさかの聖属性じゃねぇかっ」「信じらんねぇほどの聖なる力だ」「やっべーな、これ」「あら、素敵じゃない」「気持ちいい……」
普通の人間は火水風土光の属性をどれか一つ持って生まれるとされる。
魔物や魔族は闇。
勇者は聖属性。何十年かに一度生まれる稀少な属性だった。
ざわざわと騒々しくなる中、突然轟音が響いた。
パリィィン――ッ!
水晶玉が弾けた。
溢れた魔力が暴風となってギルド内を駆け巡る。
「うわっ!」「なんだ!」「きゃあっ!」「伏せろっ!」
俺はとっさにリリシアを抱きしめて守った。
腕や背中に風が当たる。でも絶対にリリシアを傷つけさせなかった。
リリシアは俺の腕の中で頬を染めてつぶやく。
「あ、ありがとうございます……ご主人様……」
「気にするな。俺にとってリリシアはとても大切なんだ」
「は、はい……っ」
なぜかますます顔を赤らめてうつむくリリシアだった。
しばらくして風が止んだ。
カウンターの下からひょっこりと受付嬢が顔をのぞかせる。
「まぁ、桁違いでしたね……水晶玉壊すの、あなたが二人目ですよ」
「一人目は?」
「うちのギルドマスターです」
そう言いながら、受付嬢はペンチでカードを引っこ抜いた。
俺に渡してくる。
「登録自体は出来たみたいですね。確認お願いします」
受け取ってカードを見た。
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名前・アレク 職業・魔剣士
冒険者ランクF
筋力・A 敏捷・S 知恵・B 魔力・SSS
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俺のステータスはこんなものだったのか。
魔力が一番高い。けどそれを生かす魔法は使えない。
勇者をクビになる無能さ加減は伊達じゃない。
というか適性は魔剣士なのか。
剣にいろいろな魔力や魔法を宿して戦う職業のはず。
俺にできるのか……? 聖波気しか込められないが。
すると、待合室の方からひそひそと話し声が聞こえてきた。
「あいつ、やべぇ」「水晶玉壊しやがった……」「ギルマスと同じかよ」
なぜか恐れおののいている人間が多かった。
――聖波気が多いってだけで、大したことないだろうに。
続いてリリシアが登録した。
新しい水晶玉が持ってこられた。
金色かつ白色の光があふれて、カードが登録された。
水晶玉は壊れなかった。
治癒師として登録されていた。
まあ、そうだろう。
受付嬢が言う。
「これで登録終わりました。王都近郊のダンジョンに潜って魔物を倒せば、討伐部位を換金できます。あと冒険者が受けられる依頼などもあります」
壁の方を指さした。依頼任務の書かれたメモが何枚か張り付けられている。
俺は見ながらつぶやく。
「数が少ないな」
「昼過ぎですからね。新規のおいしい依頼は朝に出ます。そういうのは奪い合いですね」
「なるほど。明日の朝、来てみよう」
「はい、頑張ってくださいね」
受付嬢の声を背に俺はギルドを後にした。
少し日の傾いた夕暮れ前。
大通りをリリシアと手を繋ぎながら歩いていく。
リリシアが俺の顔を見上げて言う。
「このあとは、どうされます?」
「そうだな。リリシアが必要とする薬草やポーションを薬屋で買って、今日はもう泊まろう。冒険は明日からだ」
「はい。……安い宿はあちらですが……」
「いや、今日は。――今日だからこそ、風呂のある高い宿に泊まる」
無条件奴隷を買ったんだから、その……男になってもいいよな?
「は、はい……。ご主人さまっ」
リリシアは俺と手を繋ぎつつ、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
そんな仕草がとても可愛い。なんでこんなに可愛いんだ。
俺は心を冷静に保つのに苦労しながら、通りを歩いていった。
ちなみに宿に行く途中の薬屋で、ポーション3本と薬草5種類を買った。
しめて4900ゴートだった。
所持金残り、大金貨25枚、金貨5枚、大銀貨5枚、銀貨1枚。255万5100ゴート。
明日からはまた1話更新。
読者が予想する通りの回です。内容的に夜更新。