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【コミカライズ連載中!】追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【書籍化!】  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 賢者の石編

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54.マジックバッグとダンジョン談義


 王都の昼過ぎ。

 俺とリリシアは店の洋服ダンスからダンジョンへと入った。


 青白い光が明るく照らす細い通路を歩く。

 そして広間を過ぎて、コウのいる部屋へと入った。

 白い球体に話しかける。


「コウ、マジックバッグが欲しいんで、ダンジョン攻略するぞ」


「わーい! 楽しみです~!」


「で、だ。俺の能力的に楽勝な、アンデッドのダンジョンはわかるか?」


「ダンジョンの方角や距離ならわかるですが、種類まではわからぬです。わかるのはパワーとコア数と材料数だけです」


「うーん、残念。わかれば楽だと思ったんだが……」


 俺は顔をしかめて唸った。

 するとリリシアが指を立てて言う。


「冒険者ギルドでしたら、各地にあるダンジョンの資料もあるのではないでしょうか?」


「あっ、それもそうか! 冒険者たちに教えなくちゃいけないもんな。調べて来よう」


「でしたら、わたくしが行ってまいりますわ」


「そうか、頼んだ」


「はいっ」


 元気よく頷くと、白い修道服を揺らして小走りに駆けて行った。

 ――でも、離れると不安になるな。

 リリシアは町一番、いや世界一可愛いから、変な奴に絡まれたりしないだろうか?


 そんな時、子機の存在を思い出した。



「なあ、コウ」


「なんでしょ~?」


「リリシアにも子機を持たせることってできないか?」


「できるけど、できないです~」


「ふむ。まずは理由を聞こう」


 俺は頷いて先を促した。

 コウは球体表面に青白い光を賢そうに点滅させて慎重に答えた。


「えっと。ダンジョン一つに付き、ダンジョンマスターは一人です。なので子機は一つあればじゅうぶんなのがデフォルト仕様です~」


「なるほど、理屈はあってるな。じゃあ、増やすにはどうしたらいいんだ?」


「……ダンジョンコアが一つあれば、子機を一つ作れるです」


「またコアかっ! テティの分も考えたら、ますます他のダンジョンを攻略しないといけなくなるな」


「今で満足、さらなる快適、ますたーのお気持ちしだいですゆえ」


「わかったよ。攻略に協力する」


「わーい、ありがとですーっ」


 ダンジョンの強欲な仕様には辟易したが、素直に喜ぶコウは可愛かった。

 リリシアはまだ帰ってこないので、俺は別の疑問を尋ねた。



「あとあれだな。何のダンジョンにするかだな」


「はいです~。手下モンスターを増やすためにも、そろそろ決めた方がよかとです?」


「フィールドダンジョンとやらがあるって聞いたんだが」


「ありますですよ? ただ、フィールド系にする場合、手下モンスターはダンジョンに呼び込むか、倒したモンスターを吸い込んで再生するしか増やせないので。かなり地道な努力が必要です?」


「うーん、そうなると俺はCランク以下は倒せないし、弱いのは逃げるし、増やすのが難しいな」


「アタシもそう思うです~。ますたーは規格外ですゆえ」


「ふむ。だったらコウは希望あるか? 前に言ってたのは、人形ダンジョンだったか」


「ん~、ちょっと保持している材料が変わりましたゆえ、違うのがいいかもです」


「というと?」


 俺の問いかけに、コウは球体表面をペカペカと明るく光らせた。



「じゃじゃーん。ドラゴンダンジョンですー」


「ほう。そういやワイバーンに加えてドラゴンゾンビも吸ってたしな」


「それだけじゃねいです。ベビードラゴンゾンビやドラゴンの腐乱した卵も手に入れたです。ドラゴンダンジョンにすれば、全部新品のドラゴンにできるですっ!」


「ほほう、ゾンビじゃない生きてるドラゴンか。……強そうだな。留守も任せられそうだ」


「ですです。竜人系も強いですが」


「む……人型の方が便利か……悩むなぁ」


「じっくり考慮、ナウローディングですっ」


「もう少し考えさせてくれ。ともあれドラゴン系がいいんだな?」


「です。リサイクルはエコでお得ですゆえ」


「リサイクルされたコウが言うと説得力あるな」


「だうー。それは言わぬが花です?」


 球体の表面がいじけるように明滅した。

 俺は苦笑いしつつ、話を変えた。



「ところで、前から疑問だったんだが、ダンジョンてなんのために戦っているんだ?」


「さあ? 存じかねますです」


「知らないで戦ってたのかよ」


「ダンジョンはどこからきて、どこへゆくのかー。TVのっとTV。それが問題ですー」


「理由もわからないのに、よくダンジョンたちはルールに従って戦ってるな?」


「むーん。前世で悪いことしたから戦ってるのか、いいことしたからここにいるのかわからぬです。でも、すべてのダンジョンを倒して、一番になったら、そのときは新しいステージに立てるです」


「新しい?」


「この世界とは、バイバイしますです」


「上位の世界に転生するってことか」


「たぶん、そーです。……最初の頃はただのすごろくゲームだったです。さいころ振って、出た目の数だけ駒を進んで、一番になったら上がりだです。そーやって、ずーっとゲームっぽいことをし続けたら、今ダンジョンです」


「そっか。コウはダンジョンでも一番になりたいか?」


「なりたいです。でも今までで一番難しいです」


「ルールが複雑な上に、四六時中警戒しとかないといけないもんなぁ」


 俺は他のダンジョンに突然攻められたことを思い出していた。

 長い時間を、気を配りながら頑張り続ける。

 人間だったら神経すり減らしてやってられないだろう。



 するとコウはおかしなことを言い始めた。


「それもですが。この世界で一番取るだけでなく、世界戦でも一番が必要です」


「世界戦?」


「異世界にこの世界のダンジョンがワープして戦うです。来る場合もあるです。この時ばかりは同じ世界同士は仲間になって、徹底的に異世界とやり合ってコアを奪い合うです」


「大変だな……今までもあったのか?」


「人間さんの知らぬところで、何度も世界戦あったですー」


「そうだったのか」



 するとリリシアが帰ってきた。

 銀髪を後ろになびかせて走って来る。少し息を弾ませていた。


「ただいま戻りました、ご主人様」


「おかえり。変な奴に絡まれなかったか?」


「大丈夫でした。ご主人様の大切な人として遠巻きに見られてるだけでした。むしろ牽制し合って波風立てないようにしている、みたいな? ――離れていても守ってくださるなんて、さすがご主人様ですっ」


「そうか。それはよかった……でも心配だったよ」


 少しの間、離れただけなのに不安が募っていた。

 自然とリリシアに手を伸ばして抱き締めてしまう。

 リリシアが腕の中で、頬を染めて喘ぐ。


「あぅ……嬉しいです、ますたぁ……」


 しばらくお互いのぬくもりを確かめあってから体を離した。


 それからリリシアの持ってきた情報と、コウの持つダンジョンの情報を照らし合わせる。

 三つのアンデッドダンジョンが見つかった。コアの数は合計6個。


 ついでにエドガーが調べてきた幻想界の地図を使って姫の魂を探す。

 しかし見つからなかった。でもこうやって消去法で調べていけばいい。



 俺は腰に下げた剣を抜いて片手で持つと言った。


「よし! じゃあ、乗り込むか!」


「はいっ、ご主人様マスター!」


 リリシアが細い眉を寄せて真剣な顔で頷く。続いてバサッと白い翼を広げた。


「じゃあ、行くですー」


 コウの声とともに、広間から敵ダンジョンに続く通路が新たに開いた。


 俺はリリシアを後ろに従えて、通路へと踏み込んでいった。

ブクマと★評価ありがとうございます!


次話は明日更新

→55.セキララそーちゃん

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追放勇者の優雅な生活(スローライフ)3

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 俺はCランク以下は倒せない いっぱい倒してるのでは
[良い点] (異)世界戦!すごい発想っす [気になる点] もしかして「ぼくらの」? [一言] いちゃいちゃ好きですー
2020/12/11 17:57 ナチュラル
[気になる点] なにその世界ダンジョン戦 [一言] いちゃいちゃいちゃいちゃいちゃ (-_-メ)
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