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【コミカライズ連載中!】追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【書籍化!】  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 賢者の石編

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50.本屋で買い物


 朝の王都。

 俺とリリシアは爽やかな街路を歩いていた。

 人々が行き交い、馬車が走る。

 水路の上にかかる橋を渡り、二番通りの外れにある本屋へ向かった。


 冒険者ギルドはすでに寄っていた。

 相変わらず良い依頼がなかったので、森でできる収集系依頼だけ受けた。



 そして本屋へ来た。

 若返り費用を安くする伝説の宝と、エドガーの願いである姫の魂を探すため。

 そのために地図が必要だった。


 広い店内を見渡すと、無数にある本棚にはペーパーバックと呼ばれる薄い紙の本が多く並んでいた。

 さらに入り口入って一番目立つところにポスターが飾られている。

『魔族転生、全世界一億部突破!(当店調べ)』と書かれていた。


 隣に立つリリシアが言う。


「ここの本屋は新品の本が安い上に、品揃えが豊富と言われてますわ」


「世界地図なんてあるのか?」


「はい……おそらくこちらに」



 リリシアに案内されて細い通路を通って店の奥へ行く。

 そして地図や地理コーナーに、縦横2メートルはありそうな一番大きな世界地図を見つけた。

 『本屋チェーンまおまお特製、世界地図』と書かれていた。


「こちらがよさそうです」


「……意外と細かく書かれているんだな」


 各国の山や川、街や砦の位置などが書き込まれている。

 ――こういうのって軍事機密のはずでは?

 また、ドラゴン視点で初の空撮! と書かれているのも妙に気になった。

 本当に地図を作るだけが目的で作ったのだろうか……。


 考えているとリリシアが尋ねてきた。


「ご主人様は、何か買われますか?」


「俺は別に……リリシアは何かあるか?」


「そうですねぇ……あ、できれば料理の本を」


「料理作るのが本当に好きなんだな」


「はい、喜んでもらえるのが嬉しくて……元は孤児院で、貧しい食事を少しでも楽しんでもらおうと頑張ってたら、料理を工夫するのが好きになってしまいまして」


「料理がおいしいのは、子供たちのためだったのか……リリシアは本当に素敵だな」


「はぅ……ありがとうございます」


 リリシアは頬を染めて照れていた。

 そして料理本を選んだ。

 ちらっとタイトルを見ると『大人が喜ぶ料理集』と書かれていた。


 どうやら子供向けは得意だが大人向けを勉強したいようだ。

 ――俺のためかな。それだったら嬉しいけど。



 違ったら恥ずかしいので、別の提案をした。


「あとは店番してるテティの暇つぶし用に、小説も買っていこう。好きらしいし」


「はい。でもどれがいいんでしょう?」


「さあ? その一番売れてるやつでいいんじゃないか? 人気があるなら外れではないだろう。森の屋敷にも何冊かあったはずだが」


 元の小屋にあった本は全部書斎に入っていた。

 リリシアが銀髪を揺らして頷く。


「魔族転生ですね。あれは巻数が揃ってなかったかと」


「面倒だから一揃い買っておこう」


「はい、わかりました」


 こうして、地図と本を買って、俺の店に戻った。


       ◇  ◇  ◇


 俺は自分の店『ぷちエリ』に帰ってきた。

 店に入ると、ガラスケースのカウンターに座っているテティが言う。


「おかえりなさい、アレクさま、リリシアさん」


「ただいま。少しは売れたか?」


「はいっ! 子供たちの冒険者が、自分のパーティー用にと5本買ってくれたの。あとエドガーさん? を治してくれてありがとうございます、って言ってた」


「ああ、エドガー隊か。エドガーが治って喜んだだろうな」


 ということは、2万ゴートが5本で10万ゴートの売り上げか。

 原価がタダ同然だから、ぼろ儲けだな、これ。



 店の奥へ向かいつつ、手に持っていた袋から本を出す。


「あとこれ。店番の暇つぶし用に読んでくれ」


 俺は買ってきた小説をカウンターに置いた。

 十巻以上あるので、意外と重かった。


 テティが翡翠色の目を見開いて笑う。


「わぁ! これ、今人気のやつじゃないっ! しかも最新刊まで! ――男性向きだから、読んだことなかったの!」


「それはよかった。じゃあ、店を頼むな」


「はいっ。本ありがとっ」



 俺とリリシアは洋服ダンスを開けてダンジョンに入った。


 青白く光る通路を歩いて広間に出る。


「ここでいいか」


「はい、ご主人様」


 リリシアが床に地図を広げると、胸の前に両手を当ててバサッと背中から翼を出した。

 それからフレイルを持って腕を伸ばす。

 おもりの付いた鎖が、地図の上に垂れた。


「――闇魔力探知オーラディティクト、ノバラ姫」


 フレイルが金色に光り出した。


 リリシアは細い腕をゆっくり動かして、地図の上におもりを滑らせていく。

 目を閉じて眉間にしわを寄せる。

 少しの違いでも感じ取るように。



 ――が。

 端から端まで探ってもおもりは円を描かなかった。

 ふぅと息を吐きつつ、困ったように眉を寄せる。


「どうしましょう、ご主人様。見当たりません」


「もう昇天したのか……?」


「それだと魔法自体発動しないはずです……いったい、どこへいったのでしょう?」


「その探索魔法、ダンジョン奥深くや海の底までも探知できるのか?」


「できてる、はずです……」


 リリシアが美しい顔をしかめる。

 俺は質問を変えた。


「逆に言えば、どこなら探知できない?」


「この世界とは違う場所ですね。天界、魔界、幻想界、星竜界、獄界は、この地図からでは探知できません」


「それなら数も多くないし、探せば地図ぐらいありそうだ。過去の勇者が行って簡単な地図なら作ってるだろうし」


「さ、さすがですご主人様……途方に暮れておりましたが、ご主人様の言葉を聞くと希望を感じますっ」


「俺だってうまくいくかどうかはわからないさ。まあエドガーにはもう少し待ってもらおう。……で、俺たちの探す三つのアイテムはどうだ?」


「あっ、はい。調べてみます」



 そしてリリシアは『賢者の石』『光の宝玉』『邪神の胸像』を探した。


 賢者の石は空振りだった。

 次に光の宝玉を探しているとき、フレイルから垂らしたおもりが円を描いた。


 リリシアが目を見開いて叫ぶ。


「あ、ありましたわ!」


「すごいぞ、リリシア! ――どこだ?」


「この島は……ヤマタ国です」


「ん? ……確かエドガーの故郷じゃないか」


「です。力になってもらえるかも知れませんね」


「でもあいつ国に戻ったら死刑なんだろう? できれば姫を生き返らせてからにしてやりたいな」


「わたくしもそれがいいと思います」


 リリシアが胸に手を当てて悲しい笑みを浮かべて頷いた。

 少し空気が重くなる。エドガーの将来を考えると、少し不安だ。

 いい奴だからこそ、余計に……。



 沈んだ空気を変えるため、俺は尋ねる。


「……んで、リリシア。邪神の胸像は?」


「調べますっ!」


 結局、邪神の胸像もわからなかった。

 反応がなかったのではなく、反応が多すぎたのだった。


 リリシアが形の良い眉をひそめる。


「う~ん。呪いを司る邪神の胸像はいくつもありましたが、それぞれ反応に強弱があって……」


「偽者と本物があるのか……もしくは大きさか」


「今はまだ判断できませんね」


「一つ一つ探していくしかないか……」



 やはり伝説のアイテム。

 簡単には手に入れられなさそうだった。


 リリシアがフレイルをしまって、地図を丸める。


「これからどうされますか?」


「うーん、そうだな。俺が店番するから、テティを連れて薬草採集に行ってくれ」


「はい、わかりました」


 リリシアは白い翼を引っ込めると、筒状にした地図を広間の隅に立てかけた。



 それからリリシアはテティを連れて薬草探しに向かった。

 俺は店でカウンターに座り、店番をした。


 店番をしていると暇だった。

 ただルベルに勧められたとかで、二人ほど冒険者がぷちエリを求めてやってきた。

 高いと思うのに値切りもせずに買っていく。


 ……初日で14万ゴートの売り上げなら、魔物退治を頑張るよりいいかもしれないな。

 屋敷周囲でできる収集系でも3~5万ゴートになるし。

 一日10~20万稼げるなら、若返り薬の費用残り900万も1~3か月でいけるな。


 となると、やはり問題は伝説のアイテム。

 特に所在がわからなかった賢者の石か。

 どこにあるんだろうか。


 あとエドガーの頼み。

 姫の魂とやらはどこにあるんだろうか。

 


 ぼーっと考えていると、リリシアが帰ってきた。


「ただいま帰りました、ご主人様」


「ん? もう終わったのか? テティは?」


「収集依頼の数は揃えましたわ。テティちゃんは泥をかぶったのでお風呂に入ってます」


「そうか。さすがリリシア、仕事が早いな」


「ありがとうございます」


 リリシアが嬉しそうにすみれ色の目を細めた。



 ――と。

 見知った顔がとんがり帽子を揺らして店に入ってきた。

 かつて勇者パーティーで一緒になったことのある、女魔法使いだった。


「アレク、この間ぶりっ。元気そうじゃん」


「おー。なんとかな。どうしたんだ?」


 女魔法使いは狭い店内を見渡しつつ、リリシアをチラチラと見る。

 しかしガラスケースの中にあるぷちエリクサーを見つけて、食い入るように見つめた。

 近づきながら尋ねてくる。


「よく効くって知り合いに聞いてさぁ……でも、このぷちエリクサーって、エリクサーみたいに呪いにも効く?」


「さあ? 生命力と魔力を半分治して状態異常も治すが。呪いは試してないからわからないな……誰か呪われてるのか?」


「うん、ちょっと友達がね~」


「ひどい呪いなら教会に連れてったほうがいいんじゃないか?」


「まー、そうなんだけどさぁ~。とりあえず2本買っとく」


「だったら金は1本分でいい。呪いに効かなかったら返品してくれ」


「マジ~? 優しいじゃん~ありがとっ」


 女魔法使いは金貨2枚を出してカウンターへ置いた。

 俺はケースから3本取り出して彼女に渡した。



「もう一本はおまけだ。うちのぷちエリが魔法使いにとって効果があるかどうか試してくれ」


「ありがとーねっ。使い勝手が良かったら、また買いに来るからっ」


 女魔法使いは、にひひっとしたり顔の笑みを浮かべて、ぷちエリの瓶を腰の小さなポーチにしまった。

 すると後ろに控えていたリリシアが、心配そうな声で話しかける。


「あの……呪われた友達って、もしかして一緒にいた僧侶さんですか?」


「えっ!? なんでわかったの! ……実はそうなんだよね~。今、うちの家に避難してるけど、なんかさ~体に呪いが出て、僧侶の集合住宅追い出されたの。辞めさせられちゃうかも?」


「ええっ! ……ご主人様、お願いがあります」


 リリシアが俺の方を向いて、真剣な顔で言った。

 首を傾げつつ尋ねる。


「なんだ? リリシア。なんでも言ってくれ」


「僧侶さんを、昨日のお風呂に入れてあげてください」


「それは……いろいろ問題だぞ?」



 リリシアの提案は、コウのダンジョンのことやその他の秘密を全部明かすということになる。

 無条件奴隷でもないのに。


 だが、リリシアのすみれ色の瞳が俺を射抜くように強い光を放った。


「きっと大丈夫です。彼女なら」


 ――どうやら、女魔法使いがいるから話せないが、何かに気が付いているらしい。

 指眼鏡の性能も上がっていることだ。信じていいだろう。


 俺は頷いて応える。


「ああ、わかった。明日にでも僧侶を連れてきてくれ。たぶん治せるようだ」


「ほんとに!? うん、こっちこそお願い! そーちゃん、いい子だから助けてあげてね! ……じゃあ、またねっ」


 女魔法使いはとんがり帽子のつばを跳ね上げるように、ぱあっと顔を明るくした。

 そしてマントを広げるようにターンして、店を出て行った。



 静かになる店内。

 俺はリリシアに尋ねる。


「何か知ってるんだな?」


「はい、たぶん。いえ、きっとそうです」


「わかった。リリシアを信じるよ」


「ありがとうございます、ご主人様マスター


 リリシアは銀髪を垂らして深く頭を下げた。

 そこへテティが戻ってきた。華奢な体からぽかぽかと湯上りの湯気を上げつつ。


「お湯いただきましたぁ~。次どうぞ~……って、どしたの?」


「いや、なんでもない。今から冒険者ギルドに任務報告してくる。収集手伝ってくれてありがとな」


「ううん、あたしも薬草覚えられて楽しい~! じゃあ、いってらっしゃいっ」


 笑顔のテティの可愛い声を背に、俺とリリシアは店を出た。

 そして5分歩いたところにある冒険者ギルドで、任務依頼を完了させて報酬を受け取った。

ちょっとわかりにくいですけど、詳細な世界地図は世界征服の第一歩!

さすまお(さすが魔王様)なのです!


姫の名前だけは今後変わるかもしれません。

どうにもしっくりくる名前が見つからなくて……すみません。

(※後日注・ノバラ姫に変更しました)


誤字報告ありがとうございます、助かります!

それからブクマと★評価ありがとうございます!

月間ジャンル別はずっと7位! 嬉しいです!


次話は明日更新。

→51.リリシアの過ち、マリウスの過ち

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追放勇者の優雅な生活(スローライフ)3

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― 新着の感想 ―
[良い点] テティ、普通にかわいい、よい子だな。
[一言] 木花咲耶姫からサクヤ姫とか。
[一言]  まおまお、凄く感じの良いお店です。
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