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5.初めての買い物

今日は2話更新。1話目。


 奴隷を購入して、100枚あった大金貨は39枚になった。

 次は装備を整えるため、武器防具屋に向かう。

 行ったことがないので、リリシアに案内してもらった。


 二人で手を繋いで大通りを歩いた。

 そして通りに面した大きな武器防具屋へ入った。



 広い店内には所狭しと剣や斧、鎧や盾が置かれている。

 壁には高そうな剣や槍が飾られている。


「さて。リリシアはどんな装備ならできるんだ?」 


「わたくしは……回復魔法に干渉しない木や皮の装備がよいかと思います。あとはポーションや薬草があれば」


「ん? 回復魔法が使えるのに薬草がいるのか?」


「回復魔法だけを使う人を回復士、神に祈りをささげて回復や除霊をするのが僧侶や神官。複数の薬草や治療知識を駆使して、回復魔法の効果を何倍も高める技術を持つ人が治癒師と呼ばれます」


「それはすごいな……戦闘の訓練は?」


「治癒師も戦うのでしょうか?」


 もう根本的な部分でわかっていないらしい。

 いくら後衛職だと言っても、魔物に囲まれたら身を守るための戦闘が必要になってくる。



 俺は首を振った。

「やっぱり600は高かったか」


「も、申し訳ありませんっ! なにぶん、借金が450から500ぐらいあったはずなので、サイモンさんもあまり儲かってはいないはずです」


「ああ、まあいい。常識を知ってる人なら誰でもよかったってのもあるからな」


「ご、ごめんなさい、ご主人様マスター……」


「気にするな。頼りにしてる」


 頭を撫でるとリリシアは恥ずかしそうに頬を染めた。



 彼女の武器探しはまたの機会にして、まずは防具を選んだ。

 俺は鉄の胸当て。リリシアは皮の鎧と、木の小盾・バックラーを選んだ。


 あとは俺用の武器を見た。

 剣、斧、槍、斧槍、ハンマー、ダガー。

 いろいろ見ていく。



 リリシアが首を傾げた。豊かな銀髪がさらりと流れる。


「剣はお使いにならないのでしょうか?」


「ん~、使いにくかったな。違う武器がいい気がしてる」


「そうなのですか? そうなのですか……」

 なんだか戸惑っているような、気落ちしたような、不思議な態度を取っていた。



 気にせず武器を手にとっては力を込めて、また戻す。

 それを繰り返していく。


 勇者の攻撃が魔物に強いのは、自身の持つ聖波気セラージュを武器に込めて攻撃するからだ。

 しかしどうにも剣では、聖波気を込めた端から逃げてしまう。


 だから今、一つ一つ聖波気を込めては溜めやすいかどうか試していた。



 ――けれどなかなかいい武器が見つからない。

 思わず、溜息とともに独りごちる。

「やっぱり店売り品には、いいのがないな」


 するとカウンターの方から声がした。

「おうおう、言ってくれるじゃねぇか、兄ちゃんよぉ」


「ん?」

 

 目を向けると、カウンターに髭面の親父が腕組みして立っていた。顔をしかめている。


「うちはいいもんばかり取り揃えてあるんだ。俺の目利きが悪いってのか? あん?」


「そうじゃない。もっとこう……魔力的なものを溜められる武器を探しているだけだ」


「ああ、魔剣士のスキル【魔法剣】に耐えられる剣が欲しいってのかい?」


「いや、そうじゃなくて……うーん」

 勇者固有の力である聖波気をどう説明しようかと迷った。



 すると隣にいるリリシアが髪を揺らして頷いた。


「さっきからご主人様が探しておられたのは、そういう武器だったのですね! ――お任せを!」


 リリシアはそう言うなり、指で輪っかを作って目に当てた。

 指眼鏡で店内をじーっと見ていく。みっしりと並べられた武器だけじゃなく、壁の武器まで。


「あっ! ありました! ――あの剣がよさそうです」


 壁に飾られた片刃の剣を指さした。

 刀身が闇のように黒い。変な文様まで入っている。見た目はかなり不気味だ。

 ほんとに大丈夫なのか?



 親父が顔をしかめる。

「あれは……呪われてる剣だが、いいのかい?」


「どんな呪いだ?」


「持ってるだけで魔力が吸われるんだよ」


「ほう……ちょっと見せてくれ」


「気絶しないでくれよな。時々いるんだ、これが」


 そう念押しした後、親父は壁にかかった剣を布に包んでから取り外した。

 カウンターへ持ってくる。



 受け取って柄を握った。

 それだけで、ぐぐっと聖波気が吸い取られていく。

 黒い刀身が青白く光り出した。しっくりと手になじむ。聖波気は剣に溜まるばかりで出ていかない。


「おお。これはいい――いくらだ、これは?」


「あ、あんた持っても平気なのかいっ、すげぇな……まあ、呪われてるから80万ってところだな」


「相場がわからないな……どう思う、リリシア?」


「うーん、よくわかりませんが、片刃でその値段は、どうでしょうか? 両刃だったら良いと思いますが……」


 親父がぼりぼりと頭を掻いた。

「じゃあ、おまけして72でどうだい?」


「70ではどうでしょう?」


「いいだろう70だ」



 俺は鉄の胸当てと皮の鎧とバックラー、そしてローブと袋をカウンターに載せた。


「あとはこの鎧と盾も売ってくれ」


「ほいよ……胸当てが20、皮鎧が25、バックラーが5、フード付きローブが二枚と背負い袋が二つで4。剣と合わせて124万ゴートだ」


「ん? 皮鎧の方が高いのか?」


「安いのなら8であるぜ。あっちの棚の茶色いやつだ」


 そう言えば皮鎧は白く漂白されている。薄くて細い。女性のもつ曲線に沿って作られている。

 俺はリリシアを見た。


「これがいいのか?」


「はい、これが一番いい品でした」


 白い皮鎧を細い指先で触りながら断言した。

 ――剣を見つけたリリシアの目を信じよう。



「そうか。じゃあ、これで」


 俺は袋から大金貨を13枚出して並べた。

 親父は受け取ると小さい金貨を6枚出してくる。


「ほれ、釣りだ――それで、装備していくかい?」


「そうだな。試着しておこう」

 ――常識のない俺では、間違った装備の仕方をする可能性があるからな。


 そして俺とリリシアは親父の指示を受けて装備した。

 俺は服の上に胸当てを付けてローブを羽織った。腰に剣を下げる。

 リリシアは白い修道服の下に細身の皮鎧を着て、ローブを羽織った。


 二人とも背負い袋を背負う。

 ――なんとなく冒険者の姿になった気がした。


 親父も同意見らしい。

「なかなかさまになったじゃねーか。頑張りなよ」


「ああ、ありがとう」「お世話になりました」


 俺とリリシアは礼を言って店を後にした。



 道を歩きながらリリシアが体を寄せてささやく。

「わたくしの選んだ装備を買っていただいて、ありがとうございます。とても嬉しいです」


「ああ、気にするな。リリシアを信頼しているからな」


「ありがとうございますっ」


「それで次は冒険者登録だな」


「はいっ、冒険者ギルドはあちらですっ」


 リリシアが胸を押し付けるように俺の腕を抱いて、案内してくれる。


 ――というか、奴隷とはこんなに主人にくっつくものなのか?

 判断できる常識がなく、女性と付き合ったこともない俺にはわからなかった。


 腕に当たる柔らかな胸を意識しないように、俺は平然を装って通りを歩いた。



 所持金残り、大金貨26枚と金貨6枚。266万ゴート。

次話は夜更新。

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― 新着の感想 ―
[一言] 指で輪っか!!かわいい!! 鑑定スキルもちなのかな? 確認しないのかな???
[気になる点] >「やっぱり600は高かったか」 目の前でそれを言っちゃうとか、なかなか手厳しい男ですねw 初対面で主人公を見て目を丸くした理由、聞かないのね 旅をしてる時になんらかのかたちで助け…
[気になる点] うーん?なんで信頼してるのかがイマイチよく分からん。ブラフか?しかも値段煽りした直後だし…
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