48.ダンジョン返り討ち!
朝。
森の屋敷でリリシアといちゃついていたら、敵ダンジョンが攻めてきたので、逆に乗り込んで攻略することにした。
俺は敵ダンジョン内部を走る。青黒い床と壁。通路の幅は広い。
アンデッドダンジョンのせいか空気は少し冷たかった。
後ろではバサッとリリシアが白翼を広げ、指眼鏡をしながらついてきた。
誰もいないダンジョンを駆け抜けて、敵に出会わないまま階段を降りていく。
最下層に降りると、ハァッと気合を入れた。
それだけで、どこかでガラガラと金属の転がる音がした。
俺はリリシアに尋ねる。
「敵のコアはどこだ!?」
「――闇魔力探知……こっちです、ご主人様!」
リリシアが真っ白な翼を広げ、宙を飛びながら先を指さす。
毎晩大量に聖波気を与えたおかげで、天使状態では浮遊や飛行までできるようになっていた。
落とし穴トラップがあれば俺を後ろから抱えて飛び越える。
さくさくダンジョンを進んでいく。
毒ガストラップは「ハァッ!」と気合でガスを散らした。
しかもアンデッドしかいないらしく、敵の姿はほとんどなかった。
いても消えかけている最中ばかり。
そしてダンジョンコアのいる部屋の、手前にある広間まで来た。
奥には扉のない通路があって、奥の部屋に青い球体が鎮座してるのが見える。
ただし手前の広間には大きなアンデッドがいた。
体長10メートルはあろうかという巨大なドラゴンゾンビ。
白いうろこが所々剥げている。腹の辺りは内臓が見えていた。
腐りかけの口を開いて咆哮する。
「キシャァァァ――ッ!」
「ご主人様! Aランクのクイーンドラゴンゾンビです!」
リリシアが指眼鏡をして叫んだ。
「クイーン?」
Aランクドラゴンゾンビは戦ったことがあるが、クイーンと言う名称は知らない。
リリシアが両手を前に出して唱える。
「はい! 卵を産むようです! ――天空白羽砲!」
白い羽がいくつも舞って、光の筒を描いていく。
ズドォォォンと大きな音を立てて光の大砲が放たれるが、ドラゴンゾンビは翼を広げて飛び上がって避けた。
砲弾はダンジョンの壁に当たって爆発した。
「お! 意外と素早い! 俺が行く――ハァッ!」
剣に聖波気を込めて斬りかかる。
たぶん聖波気の放出にうろたえたのか、一瞬動きが止まる。
「聖導斬撃!」
ザァン――ッ!
首を狙ったが避けられ、大きな胴を斬り付けた。
しかしアンデッドのはずなのに聖波気の効きが悪い。
ドラゴンゾンビは身をひるがえすと、腐りかけの尻尾をぶんぶんと振った。
攻撃かと思って身構えたが、すぐにドラゴンの下腹部から三つの丸い玉が壁や床に放たれた。
卵だった。
殻が割れて、これまた腐ったベビードラゴンゾンビが3体、襲い掛かって来る。
「増えるのか! 面倒だな!」
俺は飛んできたベビードラゴンゾンビを切り払う。
しかし踏み込もうとしたら、またドラゴンゾンビが卵を産んだ。
「キシャァァァ――ッ!」
――ちっ! 本体に近づけない!
するとリリシアが後方で叫んだ。
「――天羽連弾!」
白い羽が無数の弾丸となって卵や子竜を打ち抜く。
一気に道が開けた。
俺は広間の奥にいる巨体まで即座に駆け寄る!
「これで終わりだ! ――聖光強烈破!」
俺は聖波気を乗せた剣で、強烈な突きを放った。
ドゴォォ――ッ!
ドラゴンゾンビの胴体に巨大な穴が貫通した。
さらに刺突の線上、穴の向こうに見えるダンジョンコアも同時に破壊する。
ガゴォォンッとコアが金属音を響かせて壊れた。
そしてドラゴンが倒れていく。気のせいか、濁った眼が涙で濡れていた。
「ギュアァァァ……」
ドラゴンゾンビは床に倒れ込んで動かなくなった。
リリシアがそっと俺の傍へ飛んでくる。
「アンデッドなのに手ごわかったですね……」
「なんでだろうな? ダンジョンマスター待遇だと変わるのか?」
「わかりません……でも、聖波気が効かない相手も倒してしまわれるなんて、さすがご主人様ですっ!」
リリシアに褒められつつ、もう一度ドラゴンを眺める。
ふと疑問に思ったので、俺は子機のコウフォンを取り出して通話した。
「なあ、コウ」
『なんでしょ~、ますたー?』
「俺の聖波気でも消し飛ばないドラゴンゾンビがいたんだが、素材としているか?」
『ほしーです~』
「わかった」
子機を近づけてドラゴンゾンビとベビードラゴンゾンビの死体――元々死んでいるが――を吸い取った。
それから奥にあるダンジョンコアまで行く。
子機をくっつけて青い球体を白くしてから、コアを取り出した。
手のひら大の、大きな六角形をした宝石が3個あった。
『のっとりかんりょ~ですっ』
「これでコウもランクがさらに上がったな」
『はいです~! ますたーのおかげですっ』
「あと、このダンジョンの宝物はどこにある?」
『あ、乗っ取ったので、全部こっちに移したです』
「わかった。じゃあ、やれることは全部やったか?」
『はーい、おつかれです~』
俺は通話を切るとリリシアに言った。
「終わったみたいだ。帰ろう」
「はいっ、ご主人様っ!」
銀髪を揺らして俺の腕に抱き着いてくる。
そして来た道を戻った。
◇ ◇ ◇
コウのダンジョンに戻った。
エルフ少女のテティが、ぱあっと顔を明るくして駆け寄って来る。金髪が豊かに揺れた。
「お帰りなさいっ! アレクさま、リリシアさん!」
「ああ、ただいま」
「ただいま帰りました……ご主人様の活躍はすごかったですわ」
「さすが、あたしを助けただけあるわねっ。尊敬しちゃう!」
大したことはしてないので、俺は肩をすくめた。
「まあ、相手がアンデッドだったからな。リリシアの援護も良かったよ」
「ありがとうございます、ご主人様!」
リリシアは褒められて嬉しいのか、桃色に染めた頬に手を当てて微笑んだ。
それからコウに取ってきたダンジョンコアを渡した。
大きな宝石を3つ。
白い球体の表面を光らせて喜ぶ。
「わーい! 念願のティア5です~」
「ん? 全部でコアは6個になったんじゃないのか?」
「ティア6以上は、面倒な条件があるです。まだまだ先です~。――課金すればすぐですが」
「なんかダンジョン界隈は別の仕組みで動いてて大変そうだな」
「ほんとそれです~。重課金必須、みたいな?」
「お金かかるのか。今は大丈夫か?」
「大丈夫です~。前回はうん十万つぎ込んだ兵士が全滅しましたゆえ、今後は無課金貫くですっ」
ピコっと強い意思を反映するかのように球体が光った。
俺は首を傾げつつあいまいに頷く。
「うん、そうか。よくわからないが、頑張ってくれ」
「はいです~」
そんな、よくわからない話をしていると、手前の広間に接続していたダンジョン通路が消えた。
危機は完全に去ったみたいだ。
俺は傍にいる美しい二人を見つつ言う。
「よし。朝食食ったら、店を開けるか。その後は本屋だ」
「はいっ! すぐに用意しますわ!」
「は~い、任せてっ!」
リリシアが銀髪を揺らして屋敷へと戻っていき、テティは華奢な体全部を使って元気よく頷いた。
――しかし本屋で都合よく地図なんて売ってるものだろうか?
少し疑問に思いながらもリリシアの言うことだからと納得しつつ、俺は肩を回してゆっくりと屋敷へ戻っていった。
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