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【コミカライズ連載中!】追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【書籍化!】  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 賢者の石編

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47.ダンジョン騒動


 森の朝。

 屋敷の寝室で俺はリリシアと抱き合っていた。


 張りのある白い肌がすべすべで心地よくて、ついつい細いうなじから背中、足の先まで撫でてしまう。

 恥ずかしそうな喜びの笑みを浮かべつつ、すみれ色の瞳で俺を見てくる。


「もう、ご主人様マスターったらっ。くすぐったいですっ。ゃんっ――朝ですよっ」


「リリシアは本当にさわり心地がいいな……もっと撫でていたくなる」


 俺はリリシアを抱き寄せつつ、なだらかな背中の曲線を指先でなぞった。

 びくっとリリシアが体を震わせる。


「ダメですってばっ……今日もいろいろしなきゃ、ですよ?」


「そうだな。昨日はゴタゴタして結局、エドガーの頼みもしてやれなかった」


「今日は本屋で地図を買いましょう。エドガーさんのお願いのほか、若返りのために必要な伝説のアイテムも探せるはずです」


「ああ、リリシア。頼りにしてる――」


「んぅっ――! ますたぁっ!」


 リリシアの可憐な唇をふさいだ。

 さらに体を密着させて、柔らかなすべてを撫でていく。

 乱れた銀髪がベッドの上へ扇のように広がる……。



 ――が。

 突然、コウの声が響いた。室内全体が赤く点滅する。


『わーにん! 危険が危ないです! わーにん危険ぐ! 危険がワーニングっ!』


 俺は飛び起きて子機を掴んだ。


「どうした、コウ!?」


『助けて、きゃー! わーにん、きゃー! きゃーきゃー! 危険があぶぶぶぶ!』


「おい、コウ! おいってば!」


 子機からは叫び声が響くだけで、まともな返事はない。

 何か知らないが、パニックに陥ってるようだ。



 俺はベッドから飛び出すと、裸の上にバスローブを羽織った。

 壁に立てかけていた剣を手に取りつつ言う。


「俺は先にコウのとこへ行くから、リリシアは完全装備してから俺の装備を持ってきてくれ!」


「わかりました、ご主人様!」


 俺は屋敷の廊下を駆けてダンジョンの入口へと向かった。


       ◇  ◇  ◇


 小さなダンジョンの広間に来る。

 広間の奥の部屋には白い球体のコウがいた。

 傍には、不安げに顔を歪めたテティが寝間着姿でしがみついている。華奢な背中に金髪が流れていた。


「お、おはよーございます、アレクさま……」


「テティ、おはよう。――どうした、コウ!?」


「他のダンジョンが攻めてきたです、通路を伸ばして攻めてきたです!」


「なに! ほかのダンジョン!?」


「そーです。アタシが激よわのままコア4つ持ちになったので、これからどんどん狙われるです」


「ええ……それは困るな。旅に出たりできなくなるぞ」


「離れちゃ、やーです。怖いですっ」


「俺もコウを失いたくないしな……コウ一人でも防衛できるほどに育てた方がいいか」



 そう独りごちたとき、コウが叫んだ。


「ああ~、そろそろ来るです。広間の正面です!」


「よし、いいぞ! かかってこい!」


 俺は手前の広間まで戻ると、剣を正眼に構えて叫んだ。



 その時だった。

 白い鎧と修道服を着たリリシアが、俺の服と鉄の胸当てを持ってやってきた。


「ご主人様、防具を――あ!」


 突然、リリシアの真横に通路が開いた。幅5メートルぐらいの広さ。

 大量のゾンビがうごめいていた。


「リリシアっ!」


 俺は彼女を守ろうと駆け出す。

 しかし敵の侵入の方が早い。

 ――剣を投げれば1~2体は……でもその後が!


 リリシアは突然現れた敵に驚いて、一歩引いたまま固まっている。

 しかも俺の荷物を持ったままなので、両手が塞がっていた。


 俺はもう自分の身体を盾にするつもりで、なりふり構わず突進した。

 ――リリシアだけは傷付けたくない!


 だが、薄汚れたゾンビや青白い肌のワイトがリリシアへ殺到しようとして――。


 じゅ、じゅ、じゅじゅじゅ。じゅじゅじゅじゅじゅ~。


 一歩、コウのダンジョンに踏み込む端から、アンデッドたちが粉々に砕け散っていく。

 立ち止まろうとするワイトがいたが、後ろから押し寄せるゾンビの群れに無理矢理押し出されて消滅していく。

 時々武器を持った骸骨剣士がいたが、すぐに消滅して剣だけが床にカラカラと虚しく転がる。


 俺はゆっくり歩いてリリシアの傍へ来た。一応、彼女を守るように立つ。

 鉄の鎧を抱えたリリシアは、すみれ色の瞳をまん丸に見開いていた。


「こ、これは、いったい……どういうことです?」


 子機から声がする。


『ますたーの聖波気でダンジョン運営しておりますゆえ、アンデッドには強いっぽいです。相手がアンデッド系ダンジョンで助かたです』


「さ、さすがご主人様……何もしなくてもここまでお強いとは……」


「……このまま勝てそうか?」


『相手のモンスターをものすごい勢いで消してますゆえ。800万あったパワーがもう400万切ったです。はんげーん』


 子機の表面が嬉しそうに光った。

 俺とリリシアは呆然と立ち尽くしたまま事態を見守る。

 じゅじゅじゅと消滅する音が続く。


 ふと、コウの発言に意味不明な言葉が出たので俺は尋ねる。


「パワー?」


『手下モンスター1体につき、ティア1が約100のパワーで、ティア2が約1000、ティア3が約10000、ティア4が約10万、ティア5が約100万です。ダンジョンは相手の総パワーと、総材料量と、コアの数だけ見れるです』


「じゃあ逆に言えば、コウはパワー0でコア4なのか」


『そです。だから他のダンジョンから見れば、火の付いたスープ鍋の中でカモが泳いでるレベル。めしあがれーです』


「それはまずいな……何かいい方法はないか? コウを壊されたくない」


「コウちゃんは大切な仲間ですわ」


 俺の横で、うんうんとリリシアが力強くうなずく。

 しかし、奥の部屋から上ずった叫び声が聞こえた。


「それも、いいけどっ! アレクさま、お願いだから服か下着は着ちゃってっ!」


 悲鳴のような声で頼んでくるので思わず肩越しに振り返った。

 テティが長い耳の先まで真っ赤にして顔を手で覆っているのが見えた。

 指の間から見てたけど。


 ――あ~。

 確かに今の俺は全裸にバスローブ、しかも前をはだけたバージョンだった。

 魔物退治で鍛えた筋肉質な体と、俺の分身がチラリズムしている。


「すまん、今すぐ着替える――リリシア」


「は、はいっ。ご主人様!」



 リリシアに手伝ってもらって服を着て防具を付けた。

 全部つけ終わるころには、攻めてくる数が減っていた。


 敵ダンジョンの勢いが明らかに落ちている。

 子機からコウが言う。


『相手、残り120万パワーまで落ちたです。……どうするです? こっちから攻めるです?』


「確か相手コアのいる、一つ上の階層に繋げられるんだよな?」


『そうなるです』


「よし、じゃあ、倒してこよう! ――こいっ、リリシア!」


「はいっ、ご主人様!」


 俺はリリシアを連れて敵ダンジョンへ乗り込んだ。


ブクマや☆評価での応援ありがとうございます!


てか! 月間ハイファンタジーランキングの10位にまで入ってました!

月間はさすがに無理かなと思ってましたけど、めっちゃ嬉しいです!


次話は明日更新

→48.ダンジョン返り討ち!

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美しくてエロ可愛いリリシアをぜひマンガで!

追放勇者の優雅な生活(スローライフ)3

追放勇者の漫画化報告はこちら!




小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] こいつらいっつもセクロスしてるな いいかげんに(爆発)しろ!
[一言]  逆に言えばこれ、コウを囮にして他ダンジョンを誘い込んで 返り討ちにして行けば、結果的にコウを強化できますよね?  チャーンス(笑)
[一言] 相手ダンジョンこそ、飛んで火に入る夏の虫!ゴートゥーヘル!いや、害ダンジョンタヒね!ダイね!
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