45.きれいなテティとリリシア
夜。
森の屋敷の寝室に俺はいた。
大きなベッドで寝ながらリリシアを待つ。
冒険者任務を終えたリリシアはテティをお風呂に入れていた。
俺特製エリクサー風呂。
俺特製エリクサーは68リットル飲まないと真の効果は発揮されないが、傷口に少しかけても効果があるのは実証済み。
あとは今回の場合、欠損まで完全に直すため、治癒力を限界まで高める必要があった。
そこで、ヒールポーションを混ぜてみることにした。
ただし、コウがヒールポーションを作ると聖属性が付く。
結果、エクストラハイヒールポーションとでもいうべき高性能のポーションになった。
これに天使リリシアの全回復を合わせれば、まず元通りに治るだろう。
……これ、毒消し草や麻痺消し草でポーション作っても、すごいことになりそうだ。
それをエリクサーで割って風呂にすれば、高性能の毒消し湯、麻痺消し湯になるだろう。
――いや、それならばいっそ、自分たちだけで使うのではなく。
『癒しのお風呂屋さん』みたいな感じで、公衆浴場を作ってもいいかもしれないな。
お金が沢山稼げそうだ。あと最低でも900万ゴート稼がないといけないし。
いやいや、待てよ?
リリシアは治癒師として薬草に詳しいから、もっと様々な種類の風呂を作れるんじゃないか?
皮膚病、眼病、関節痛。
どんな病にも効く風呂が必ずある風呂屋。
入るだけで痩せたり、髪がフサフサになる風呂だって不可能じゃない。
いっそ人以外にも効果を発揮する風呂はどうだろうか。
あらゆる生物、神様まで利用するような風呂屋。
贅沢な風呂屋だねぇ……よし、名前は、せん――。
――と。
そんな取らぬ狸的な儲け話を考えていると、リリシアがテティを連れて帰ってきた。
スタイルの良い美女と美少女は、バスローブ一枚だけまとって火照る肢体を隠している。
すらりとした手足が美しい。
特にテティは金髪が波打ち、腰まで届く。
無残な虐待を受けた顔は、人形のように可愛らしく整った顔立ちに治っていた。
胸は育ちざかりらしく、リリシアと比べるとまだまだ薄かった。
だが、エルフ特有の長い耳は元に戻っている。
耳をピコピコ揺らしつつ、テティが頬を染めてもじもじと指先を見つめる。
「あ、ありがとう……アレク、じゃなかったアレクさま。治してくれて……助けてくれて」
「気にするな。安く買うために、わざと最高の治療をしなかったんだし」
ぶっちゃけあの時もぷちエリクサーは持っていたので、全部は無理でももっと治せたはずだった。
それをしなかった俺は悪い奴だと言える。
でももう知ったことか。勇者じゃないんだから自分勝手に生きさせてもらう。
治してたら40万ゴートでは無理だったろうしな。
テティが恥ずかしそうに俺を見て、またリリシアを見上げる。
「えっと……それで、三人で、寝ちゃうのね」
「あ~、部屋はどうするか迷ったんで、とりあえずコウのいる広間の横に個室を作っておいた」
「え!? ――その、いろいろ、しちゃうんじゃないの!?」
「え? 何がだ? 今日はいろいろあったから、あとは寝るだけだぞ?」
「いや、寝るんでしょ!? ――え! あたし、こんなに可愛くなったのに、何もしないの!?」
翡翠色の目を見開いてテティが驚く。
何を言っているんだか、ちょっとよくわからない。
戸惑っているとリリシアがテティの頭を撫でつつ微笑んだ。
「ご主人様。無条件奴隷ですので、寝室に案内されたら抱かれるのかと思ったのでしょう」
「ああ、なるほど。勘違いさせたか。テティとそんなことする気はないから、もう部屋に帰ってくれていいぞ? 無条件奴隷が欲しかったのは、秘密を隠したかっただけだと言ったろ?」
「ほんとにそれだけなんだ……男なのに」
「というか、ほかの女を抱く暇があるなら、俺は一秒でも長くリリシアを抱きしめたい。なんせリリシアは、エルフよりも、世界中の美女たちよりも、魅力的なんでな」
俺は素直に自分の気持ちを伝えた。
するとテティが、ちっちゃな口を限界まで開けて唖然とした。
「し、信じられない……あたし結構可愛いのに……。まあ、リリシアさんの本性、あたしが見惚れるほどだったし……そうね、邪魔しちゃ悪いわね。――いろいろありがと。じゃ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。店のこと頼むぞ」
「は~い」
テティはすばやく部屋を出ると、たたたっと小さな足で廊下を駆けて行った。
リリシアがくすくすと笑いながら、バスローブをはだけつつベッドへと来る。
俺の隣に寄り添うと、細い指先で俺の身体を撫でた。
「よろしかったのですか? ご主人様。テティも可愛らしい子でしたよ?」
「リリシアより可愛くて気品があって美しい人はいないだろ?」
俺はリリシアを抱き寄せて唇を重ねた。果実のように甘く柔らかく。
舌が絡み合い、ちゅくっと唾液が淫らに溶け合う。
俺の上に銀髪が流れて湯上りの良い香りが広がり、大きな胸の柔らかさが素肌に直接、押し付けられた。
そしてリリシアが俺の腕の中でビクッと跳ねつつ、可愛い吐息を漏らす。
「ぁあっ――! ご主人様っ!」
「それにそうだ。おしとやかなリリシアが俺だけに乱れる姿を見せるって言うのも、世界一嬉しい瞬間だな」
「ますたぁっ、褒められながらなんて……余計にっ――あぁっ!」
白い素肌を埋めるように、華奢な全身にキスを降らせる。
リリシアも負けじと、ぎゅっと目を閉じて耐えながら舌や指先で俺にあらがう。
しかし抑えきれずにますます乱れて、ついに背中から白い翼が伸びた。
今日もまた夜更けまで、リリシアがバサバサと羽ばたき、ベッドの周囲に白い羽が乱れて舞うのだった。
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次話は明日更新。
→46.僧侶の異変とさすまお!(さすが魔王様!)




