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2.奴隷商人

本日3話更新。2話目。


 王都の裏通りにある大きな館。

 俺は奴隷商を訪れていた。


 豪華な調度の多い広い応接室で、奴隷商人と会った。

 柔和な笑みを浮かべる恰幅のいい初老の男がテーブルの対面に座っている。


 ただ目の奥が笑っていないことぐらい、常識のない俺にもわかった。


「それで、勇者様が当館にどのようなご用件で?」


「率直に言う。勇者を辞めたから奴隷を買いに来た」


「ほほう。それはまた……」


 奴隷商人は考えるように顎を撫でる。

 そして目の端で俺を上から下まで値踏みする。


 ――仕事をクビになった男がどれぐらいお金を持ってるか考えているんだな、きっと。

 もしかしたら、どうやって吹っ掛けようかと考えているのかもしれない。



 でも、それでよかった。


 正直、一人目はぼったくられても仕方ないと考えていた。

 俺は駆け引きとかが苦手だから。

 その分、常識のある奴隷を手に入れて相談役にし、二回目から騙されないようにすればいい。


 よほどの変な人じゃない限り、温室育ち的な俺よりも常識はあるだろう。



 奴隷商人は慎重に話しかけてくる。


「それで……どのような目的の奴隷をお探しで……?」


「身の回りの世話ができる、常識的な考えを持った奴隷が欲しい。年齢性別は問わない」


「なるほど」

 奴隷商人はますます考え込んだ。


 一人目は常識の相談役になってもらえればいいので、男でも女でも子供でもおじいさんでも構わなかった。



 奴隷商人は、ふと首をひねる。


「勇者を辞めてきたそうですが、次の仕事は決まっておられるのでしょうか?」


「いや、決まってない。何をしたらいいのかもわからない。それも含めて相談できる奴隷が欲しい」


 俺は率直に言った。何度も言うが駆け引きは苦手だ。

 すると奴隷商人の眉間にしわが寄った。


「……失礼ですが、勇者さまは魔物を倒す以外に何ができるのです?」


「何も……勇者の仕事以外は何もできない」


「でしょうね……なるほど」


 なにかすべてわかり切ったような顔で頷く奴隷商人。



 その態度が気になったので尋ねる。


「なぜわかる?」


「アレク様は幼少の頃より勇者として国のために戦ってきたかただと存じ上げております。勇者以外の仕事を知らないまま現在のお歳になられたとも言えます。ですので……今後も魔物を退治する仕事に就くしかないでしょう」


「それはやはり辺境の兵士か、あるいは冒険者というやつか?」


「そうなりますね。アレクさまなら魔物の退治を請け負ったり、ダンジョンを探索したりする冒険者になられるのがよろしいかと」


「そうか。冒険者になるしかないか」


 実際、どんな仕事かよくわからないが、魔物を倒すだけならなんとかなりそうだった。

 ただ収入はあるのだろうか? 生きていけるぐらい稼げるのか?

 俺には何もわからなかった。



 奴隷商人はひとしきり考えた後、指をパチンと鳴らした。

 すぐに痩身の老人執事が駆け寄る。

 何かを耳打ちすると執事は部屋を出て行った。


「しばらくお待ちください。アレク様にぴったりの奴隷を連れてきますので」


「よろしく頼む」


 ぴったりかどうかなんて俺にはわからない。

 ――もう一人目は騙されてもいい。次からだ。



 ソファーに座って出されたお茶を半分ほど飲んだころ、応接室の扉が開いた。

 広い室内を、一人、また一人と、間隔を開けて美少女が歩いてきては壁際に並ぶ。


 一人目は腰までの金髪でスタイルの良い女性。歩くたびに大きな胸が弾んでいる。

 二人目はオレンジ色の短めの髪の女性。引き締まった手足がすらりと長くて健康的。

 三人目は金髪をした華奢な美少女だった。耳がとがってるのでエルフらしい。


 間隔を開けて広い部屋を横切るのは、一人をじっくり見る時間を取るためだろう。



 ただ俺は息をのんでいた。


 ――え? こんな美人を?


 話しかけるのも緊張しそうな美しい人ばかり。

 そして同時に高そうだとも思った。

 やはり俺はカモにされるらしい。悔しいが、しかたない。


 ただ全員若い女性ではなく、四人目は曲がった杖を突いた老婆だった。

 しわの深い顔に鷲鼻。まるで魔女に見える。


 ……いや、緑の髪に白髪のアクセント。

 似たようなのと前に戦ったことがあるぞ、やはり魔女じゃ……?


 魔女に驚きつつ警戒していると、魔女も部屋に入るなり顔をしかめる。

 使い道のない、無駄に多い俺の聖波気セラージュを感知したのか?



 最後に五人目が部屋に入ってきた。

 奴隷には似合わない白い修道服を着ている。

 見た目は十代後半から二十代前半の若さだが、大人のような落ち着いた雰囲気をもつ美少女。

 歩く姿は清楚でおしとやか、輝くような銀髪が揺れていた。


 ――が。

 なぜか一礼して部屋に入って来るなり、俺を見て目を丸くする。すみれ色の瞳が落ちそうなほどに。

「……っ」

 何か言いかけて、慌てて手で口を押えていた。


 ――なんだろう?

 俺のことを知っているのだろうか?

 ひょっとしたら勇者の時に出会っているのかもしれない。



 昔の記憶を探っていると、奴隷商人が立ち上がって説明を始めた。


次話、夕方更新。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 年齢性別問わずって言ってるのに、 何故女ばっか連れてくるんだ 男は管轄外なのか? [一言] 最初の3人は明らかにモブ 4人目と5人目が別格に気になるよな この2人選びそう
[良い点] 文章は読みやすい [気になる点] 彼女達の奴隷になった理由だねぇ。 借金が理由で奴隷になったんなら、常識で普通に考えたら娼館なり売春なりして返すだろうしね。 [一言] 突っ込むとしたら、勇…
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