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【コミカライズ連載中!】追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【書籍化!】  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第一章 元勇者生存編

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17.ダンジョン探索


 西の空が赤くなり始めるころ、俺とリリシアは小屋の中の洋服箪笥前にいた。

 リリシアが俺の背にそっと手を置きつつ言う。


「もうだいぶ暗くなりましたが、よろしいですか?」


「ダンジョン内部は昼も夜も暗いからいいだろう。ある程度見たら帰ろう。最悪この小屋に泊る」


「わかりました」


「じゃあ、行くぞ」



 俺は洋服タンスの扉を開いた。

 タンスの奥には闇が広がっている。


 俺は剣を抜きつつ中へ入る。

 天使のリリシアがカンテラを持ちつつ俺の後ろに続く。


 そして石を組み上げて作られた細い通路を歩いた。

 思ったよりも明るいことに気が付く。

 手元を見ると聖波気を溜め込んだ剣が青白く光っていた。


「たいまつ代わりにもなるのか。便利だな」


「ですが、暗闇に潜む敵からは丸見えになってしまいますから、お気を付けくださいませ」


「なるほど。賢いなリリシアは」


「ありがとうございますっ」


 後ろにいるから顔は見れないが、きっと美しく、はにかんだ顔をしているのだろうなと考えた。


 すると、背中に触れている細い指先が、ぐるぐると可愛く丸を描いた。

 それだけで、彼女の喜びが伝わってくるようだった。



 さらに細い通路を進む。

 どこまでもどこまでも一本道を進む。


 通路の広さはどこまでいっても三人並べるぐらいの狭さ。

 いったい、どこまで続いているのか。

 あまりにも景色と状況が変わらないので、不安になってくる。


「リリシア、脇道や扉はなかったよな?」


「はい、ありませんでした」


「ああ、そうか。カンテラを俺が持って、指眼鏡で見てもらった方が……あ」



 振り返るとすでにリリシアは指眼鏡をして歩いていた。

 カンテラはと見れば、複数の白い羽が下から支え上げて宙へ浮かべていた。


「なるほど、賢い。天使の力は便利だ」


「はいっ、お任せください」


「じゃあ、引き続き注意しつつ行こう」



 さらに歩いていくと、ようやく前方にほのかな明かりが見えた。


「出口か?」


「それにしては、光が弱いですわ」


 警戒しつつ細い通路を先へ進む。



 そして出た先は大きな広間だった。

 窓のない広間。床も壁も石でできている。

 天井は高く、ぼんやりと赤く光っている。薄暗い。


 通ってきたような通路が向かい側の壁にある。

 あとドアもいくつかあった。


 が、一番目を引くのは広間の真ん中にある物体だった。

 黒くて丸い球体。人の背丈ぐらいある。



 俺は剣を構えつつ近づいていく。


「なんだこれは?」


「まさか……ご主人さま、これはダンジョンコアなのでは?」


「え? こんなに小さなダンジョンがあるのか?」


 前までくると、ブィィィンと音がして、球体の黒い表面に赤い光が線になって走った。

『ご用件は?』


「話せるのか。お前はなんだ?」


『ワタシはダンジョンコア。ファルブール様によって蘇った。なんなりとご命令を』


「俺はそいつじゃないのに命令していいのか」


『なんなりとご命令を。ご命令を』

 ――少し壊れ気味っぽい。



 リリシアが横から顔を出す。

「ご主人様、わたくしに操作させてもらえませんか?」


「ああ、やってくれ。俺にはわからないからな」


「はい、では。ダンジョンコアさん、まずこのダンジョンの見取り図を表示してもらえませんか?」


『なんでもできます。魔力が足りません。できます。魔力が足りません』

 赤い線が光った。


「聖波気でもいいのか?」


『魔力ならなんでも』


「そうか――ハァッ!」

 俺はダンジョンコアに手をついて聖波気を流し込んだ。



 すると天井の明かりが青白くなった。

 球体の表面に走る光も赤から青に変わる。

 しかもダンジョン全体がカンテラがいらないほどに明るくなった。


『魔力充填76% 見取り図を表示します』


 ピピっと乾いた音がして、球体の正面に半透明のウインドウが表示された。


 図によると、通路は2本だけ。

 入ってきた通路と、反対側に伸びていた一本だけ。


 伸びた先を見ると――。


「やはり王都か」


「あとは、この広間に面して実験室という部屋があるみたいですね。鍵がかかっていますが、罠はないようです」


「見てみよう。鍵は解除できるのか?」


『開けます』

 ガシャンとすべての扉から鍵の開く音がした。



 俺とリリシアはコアの前から離れて広間横の扉に向かった。

 部屋は広間の左右に二部屋ずつあった。


 一つ目の部屋に入る。

 中は凄惨な様相を呈していた。


「うっ……」


「これは……」

 リリシアが口を押える。


 広い部屋で、真ん中に作業台がある。

 三方向の壁には棚が設置されている。

 そして作業台の上では人や魔物がバラバラに切り刻まれていた。


 棚には大きなガラス瓶がいくつも並んで、人と魔物が強引にくっつけられていた。


「人体実験をやっていたということか」


「ひどいですわ……」

 リリシアが悲し気に顔を歪める。


「こんな実験をしていたから闇落ちしてヘルリッチになったか……もしくはあのヘルリッチすらも作られた存在だったか」


「本当に他のヘルリッチがいると?」


「まだわからない……どうするかは後回しにして、次を見てみよう」


「はい……ご主人様」

 リリシアが手を繋いでくる。

 辛そうに震えていた。



 隣の部屋もまた実験室だった。

 真ん中に作業台があり、フラスコやアルコールランプなどの実験器具が設置されていた。

 棚には紫の液体が入った瓶や、黒い粉などがある。

 怪しげな道具も多かった。


「よくわからない部屋だな」


「錬金術をしていたようですね。かなり珍しい鉱石や薬草までありますわ」


 リリシアが指眼鏡で見ながら言った。


「そうか。あとで売れそうなものを探そう」


「はい」

 リリシアは静かに頷いた。



 広間を横切って向かいの部屋に入る。

 部屋の中には天井の高さの本棚が立ち並んでいた。

 部屋の隅には読書机がある。

 どうやら書庫らしかった。


 机の上に本が開きっぱなしになっている。

「お、これは」


 手に取ってみると、死霊術の第四巻だった。

 一揃いになると30万ゴートだったはず。


 ――でも、揃ったら揃ったで、もったいない気がしてくる。

 必要になるかもしれないから、しばらくは売らないでおこう。


 リリシアが言う。

「ここの書庫は魔術や生物、薬に関する稀覯本が多いですわ……って、天使魔法まで!?」


 リリシアが青い背表紙の本を手に取った。

 ぱらぱらとめくっていく。


「ほー、なるほど。あっ、そのような使い方が……なるほど……」


 じっくり読み始めるリリシア。


 俺は先を促した。

「その本は袋に入れて、先に他の部屋も見てこよう。敵や危険がある可能性が残ってる」


「はっ! 申し訳ございません!」

 リリシアは慌てて本を背負い袋に詰めると、俺の手を握っていた。



 隣の部屋に入る。

 そこはベッドとテーブルと執務机のある個人的な部屋だった。


 棚や引き出しを漁ると、宝石や金貨などを見つけた。

 もらっておこう。大金貨2枚、金貨16枚、銀貨49枚。


 リリシアが一冊の本を手にして言う。


「こちらに日記がありますわ。ファルブール氏のものです」


「ほほう、興味深いな」



 俺とリリシアは顔を寄せ合って日記を読んだ。


 天才だったファルブールは持病があったらしい。それを治すために研究を重ねたそうだ。

 昼間は街で医者をやりつつ、夜は魔術を研究。


 そしてどんどん闇の魔術へと傾倒していった。

 ダンジョンコアを治して使用したのも秘密の研究室を作り、また研究用の魔物を森で捕獲するため。

 生きた人間に魔物の臓器を移植して病を克服する研究をしていた。


 けれども最後は持病を治すことができずに再発。

 持病で死ぬぐらいならと、ヘルリッチになったそうだ。

 結局私は持病に勝つことができなかった、という悔いの言葉を最後に日記は終わっていた。


 ――最後まで自分勝手な奴だな、と呆れながら読み終えた。



 所持金合計。大金貨34枚、金貨27枚、大銀貨8枚、銀貨57枚。

 368万3700ゴート。


ジャンル別16位、日間総合54位になりました!

ブクマと☆評価ありがとうございます!

まだ5万字なのに楽しんでもらえてるようで良かったです!


次話は昼更新。

→18.ダンジョンを餌付け

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ヤングガンガンコミックスより10月24日に3巻発売!
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追放勇者の優雅な生活(スローライフ)3

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