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【コミカライズ連載中!】追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【書籍化!】  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第四章 聖竜の宝珠編

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130.三人娘の小さな宴


 夜の森に月光が降る。

 屋敷の地下、コウのダンジョンにある広間で、テティとソフィシアとラーナがテーブルを囲んでいた。

 卓の上にはハムとソーセージ、ポトフ的なスープ。それにパンとエールが載っている。


 聖職者の居候ソフィシアが微笑みを浮かべて立ち上がる。肩で切り揃えた青い髪がさらりと流れた。


「ではラーナちゃんの急成長を祝って、少し豪華な夕飯をいただいちゃいましょう。――おめでとう、ラーナちゃん」


「よくわかんないけど、おめでとー! ラーナちゃん」


「そふぃしあ、ててぃ、ありがとー!」


 聖白竜の少女ラーナが両手を上げて喜んだ。幼い笑顔が可愛らしい。白髪がはねてきらきら光った。



 それから夕食が始まった。

 エルフ少女のテティがパンにソーセージを挟んでかぶりつく。

 食べながら頬に手を当てて喜ぶ。


「ん~! お肉がぷりっぷり! 肉汁あふれるっ!」


「腸詰にしただけで、ここまでおいしくなるとは……驚きですね」


 ソフィシアがほおばりながら青い目を見張る。

 隣ではラーナがソーセージにかぶりついて笑顔を弾けさせていた。


「おいしいっ、きゃいっ!」


 テティが瓶を取り出す。


「エールもあるみたい。飲む? あたしはいらないけど」


「珍しいお酒ですね。いただきましょうか」


 ソフィシアがグラスに注いで一口飲んだ。

 とたんに頬が赤くなる。


「ふわぁ……果実酒じゃないのに、甘い香りが……ふふっ」


 ソフィシアが酔った目つきで、にやにや笑い出す。

 なにがおかしいのか、くすくす笑う。



 テティがジトっとした目で彼女を見る。


「ソフィシア、どしたの?」


「んふ~、テティちゃんが二人、きゃははっ」


「え!? エールを一口飲んだだけで!?」


「エールですって、エール、エール! ふぁいとー! ――応援です、なんちゃってー、きゃははっ!」


 笑いながらまた一口飲む。ぶほっと笑いながらむせてしまう。

 でも笑い続ける。


 テティが信じられない者をみる目つきで、少し体を離した。

 ラーナもソーセージを食べつつ、大きな目を見開いてソフィシアを見上げている。

 テティがそっと目くばせしながら言う。


「ラーナちゃん、こっち側に来といて」


「きゅい!」


 ラーナがイスからぴょんっと飛び降りてテーブルを回り込んでテティの横に座った。

 その様子を見たソフィシアがお腹を抱えて笑い出す。青い髪が盛大に揺れた。


「動いた! ラーナちゃんが向こう側に動いた! ――きゃははっ!」


「え、なんなの……。エールにやばい薬でも入ってた?」



 テティが手を伸ばしてエールの瓶を見る。


「なになに――『スペシャルエール! 魔物殺し』……物騒な名前」


 空いたお皿に少し垂らして、指先をつけて舐めた。


「にがっ……でも、別に普通?」


 ラーナも真似して指をつけて舐める。途端に青い瞳を、くわっと見開いた。


「む……――むひゃっ!?」


「えっ、むひゃ!? むひゃってなに!? どうしたの、ラーナちゃん!? ――あっ、まさか!」


「おてて、はいしゃくー! ――パパんのパンっ! あっそうれっ! ――だーれが殺した、きゃっきゃいの、きゃい! あそうれっ! ――だーれが殺した、きゃっきゃいの、きゃい! ……きゃははっ!」


 ラーナがノリノリで手を三回叩いては、前のめりに両手を突き出す姿勢をとる。

 満面の笑みで、けたけたと笑っていた。



「嘘でしょ……一舐めしただけじゃん」


 テティが眉をしかめて呆然とする。


 するとソフィシアが立ち上がるなり、唐突に服を脱いだ。

 白い肌のすらりとした肢体が露わになる。


「はーい、ソフィシア、一発芸やりまぁす! 生まれたての子鹿っ! ――きゃははっ!」


 笑いながら開いた足をぷるぷる震わせた。形のよい胸も一緒に震える。

 それから何がそこまで面白いのか、机をバンバンと叩きつつお腹を抱えて笑った。


「こじかっ、こじか! きゃはは!」


 ラーナも一緒に机を叩いて、声を上げて笑った。大きな目の端に涙が浮かんでいる。

 テティは唖然として口を開けるしかなかった。


「ええ~……なにこれ、どうなってんの……」



 そのとき、テティの持ってる子機が震えた。

 急いで耳に当てるテティ。


『宴もたけなわ、バンブーホース! どしたです?』


「ちょっとコウちゃん、なんか変なの! エールのせいっぽい!」


『酒は飲んでも、のーべんばー。床に少し垂らしてもらえば、わかるです?』


「あ、うん!」


 テティはエールの瓶を傾けて少し床に垂らした。

 液体は床に吸い込まれていく。


『ぺろっ、……これは青酸カリ――。おおー。ふむふむ、なるほど。これはダンジョン産のお酒ですな』


「え、そうなんだ?」


『なるほどなるほど。行程を分割すれば、ダンジョンでも発酵を扱えるですか。なかなかの匠の技です?』


「それはわかったけど、なんで二人がおかしくなったの?」


『人間さんは強めに酔うだけですが、魔物さんに対しては酩酊や催眠、高揚や混乱。魔法のコンフュージョンみたいな効果があるです?』


「そうなんだ……えっ!? 魔物!? ラーナちゃんはドラゴンだからわかるけど、ソフィシアさんも魔物なの!?」


『人間さんではありませんゆえ』


「あ、そっか……あたしは? エルフも人間?」


『たぶん人間さんに近い亜人間さんはみんな大丈夫かも? もしくはテティさんはちょっと人間さんだです?』


「あ~、確かに。あたしはお母さん側が人間っぽいんだっけ」


 チラッとソフィシアをみる。

 真っ裸でラーナを胸に抱えて爆笑していた。


「一発芸~――授乳告知~! きゃははっ!」


「まっしらけ~! ――きゃきゃいの、きゃいっ! あっそうれ! きゃきゃいの、きゃいっ! あっよいしょ! ――木の枝で、スズメが~サンバ踊ってた! よいよいよいよい、おっとっとっと――きゃはは!」


 二人はテーブルの上で体をよじって涙を流しながら笑っていた。

 笑いすぎておかしくなっていた。



 テティはどん引きしながら子機で話す。


「どうしよう。コウちゃんは解毒剤みたいなのって作れる?」


『むーん。元は普通のお酒に特殊効果を入れてるだけなので、すぐには面倒です? むしろ、ぷちエリ飲ませれば効くのでは?』


「あ、それがあった! 一本出してっ、コウちゃん!」


『はーい。――まんまんまんぞくー、いっぽんまんぞくー、です』


 床に小さな宝箱が現れる。

 テティがふたを開けて中からプチエリの小瓶を取り出した。ロイヤル印の白い瓶。 


 

 しかし飲ませようとしたけれどもソフィシアは取り合わない。

 イスの上に飛び乗るなり片足で立つ。さらに白と黒の翼を広げて、両手も広げて叫んだ。もちろん全裸で。


「一発芸――荒ぶる鷹のポーズ! きゃははっ!」「たかー! きゃきゃいっ!」


「ダメだこりゃ」


 テティはあきれて肩をすくめた。

 子機からコウの声がする。


「次、行ってみよー」



 テティは食べかけだったソーセージを挟んだパンを手に取ると、こっそりテーブルを離れた。

 バカ騒ぎをする二人を置いて自室のある奥の広間へ向かう。


 コウのいる広間へと入ると、真っ白い球体に手を振った。


「あたし寝るから。あれはもう放っておくね」


「はいですー、おやすみです~。――さよなら、さよなら、さよならっ」


「なんで三回言ったの……まあ、おやすみー」


 テティはパンをかじりつつ扉を開けて部屋へ入った。



 広間にコウが残された。

 手前の広間からソフィシアとラーナの笑い声が聞こえる。


 コウは球体表面に青い光を走らせながら呟く。


「でもこれ、けっこう危険では? 奥さんも無効化されるです? というか聖白竜にすら効いてるです? ――まさか貫通効果? むむーん……対策とらねば、ねばねばです」


 手前の部屋からバカ騒ぎが聞こえる中、ピコピコと表面の光りを明滅させながらコウは考え続けた。


ちゅっちゅんがちゅん!

いつも読んでくれてありがとうございます。

ブクマや★評価で応援してもらえて励みになります。


ただ次話は少し時間かかりそうです、すみません。

でも最後まで頑張ります!

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追放勇者の優雅な生活(スローライフ)3

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― 新着の感想 ―
[一言] 電線音頭かあ・・・ そしてクックロビン音頭・・・ あとは東村山あたりがくれば・・・
[一言] パ○タ○ロ!を知ってるんですかww 金ローの、三回挨拶も・・・ 懐かしいな~・・・ いつか、ランキング度外視で 昔書いていた物を載せるのもあり・・・かな? これからも楽しみにしてます…
[一言] 何てカオス、うる星やつらの闇鍋回を彷彿させる……。
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