13.初収入の激しい夜
日間総合188位!
明日と言ってましたが早めに更新。
日が沈んで西の空が赤く染まるころ。
俺とリリシアは王都に帰ってきた。
すぐに冒険者ギルドに入って、カウンターの受付嬢に葉っぱとキノコ、そして赤い玉を出す。
「依頼を終えてきた。これが証拠だ」
受付嬢が目を見開く。
「――っ! こ、これはヘルリッチの核! まさか一日で討伐を!?」
「ああ、運良く見つけられた」
「まさか、お二人だけで!?」
「そうだが? 俺たちだけで倒しても良かったんだろう?」
「そ、それはそうですがっ! すごすぎ……っ! さすがは勇――いえ、討伐ありがとうございます。では、計算をしますんで、冒険者カードを――」
「待ってくれ、魔導書と銀の皿も手に入れたんだが、買い取ってもらえるか?」
「はい、ギルドで買取可能ですが、アイテムなどは別の鑑定カウンターの方で買取させてもらってます」
「ああ、そういう仕組みなのか。わかった。今はこれで頼む」
俺とリリシアは冒険者カードを出した。
受付嬢が計算していく。
「はい、では……薬草が35枚で7000ゴート、依頼達成1000ゴート。夢見キノコが6本で24000ゴート、依頼達成5000ゴート。ヘルリッチ核が25万ゴート。依頼達成70万ゴート。合計で、98万7000ゴートです」
そう言って、大金貨9枚、金貨8枚、大銀貨7枚をカウンターに載せた。
俺は袋に入れた。
これで所持金が大金貨30枚、金貨8枚、大銀貨12枚、銀貨1枚。309万2100ゴートになった。
返されたカードには俺とリリシアの冒険者ランクがEに上がっていた。
それから鑑定カウンターまで行った。
周りの冒険者たちがひそひそ話しているのが聞こえる。
「ガチでヘルリッチ倒したってよ」「なんだあいつ、すげぇよ」「さすがバリアルを一撃だっただけあるわね」「やっべぇ、ちょっかい掛けなくてよかったぜ……」
なんだか噂になっている。
まあ、どうでもいいか。
カウンターに本を5冊と銀の小皿を2枚出した。
眼鏡をかけた中年の男が手に取って見ていく。
「ほほう。死霊術について書かれた本ですな。んー、惜しい。重要な4巻が欠けている。この本があった場所をよく探したかい? このままだと8万ゴートになるが、いいかね?」
「4巻があると、いくらになるんだ?」
「全6巻揃いだと、30万ゴートにはなる」
「だったら本はやめておく。銀の皿は?」
「こちらは美術品のような価値はないから、純度と重さを計ってミスリル銀の公定価格で買い取らせてもらうよ。それでいいかい?」
「ああ、別にいいが……リリシアはミスリル銀が必要だったりするか?」
「いえ、加工するのは大変ですから。自分たちで作るより、市販品や中古品を購入した方が安くなるかと」
「なるほど。じゃあ、買い取ってくれ」
「はいよ。……純度は低い……重さは、80……通常銀の重さを抜いて……24万、そこに銀の価格を入れて26万6600ゴートだな。これでいいかい?」
男はカウンターに大金貨2枚と金貨6枚と大銀貨6枚に銀貨6枚置いた。
俺はリリシアを見る。彼女は頷いた。この値段でいいらしい。
「ああ、問題ない」
袋に詰めた。
これで所持金が大金貨32枚、金貨14枚、大銀貨18枚、銀貨7枚になった。しめて335万8700ゴート。
一日で100万ゴート以上も稼いだ。
冒険者家業は意外と簡単だなと思ってしまうが、それは楽勝なヘルリッチの依頼があったからで。
薬草のみだと8000ゴートしか稼げていない。
それもリリシアの指眼鏡があってこそ。
俺は気付いたら呟いていた。
「不安定な職業だな……」
「でも、ご主人様の力を生かせる仕事ですよっ」
「そうだな……ああ、鑑定の人。少し尋ねたいんだが」
「なんでしょう?」
「できれば安い宿も教えて欲しい」
「冒険者がよく利用する王都のマップはまだでしたか――はい、こちらです」
王都の地図を手渡された。いろいろ書き込まれている。
「金はいいのか?」
「掲載料を取っておりますので」
「なるほど」
地図に載せる代わりに金をとってあるらしい。
当然ギルドで審査もしているのだろう。
ここに載っている店は信頼できると考えてよさそうだ。
俺はリリシアに言う。
「すまないが、今日からは安いところに泊るぞ」
「ご主人様がいる場所なら、どこでも天界ですっ」
ぎゅっと俺の腕に抱き着いてくるリリシア。魅力的な肢体の可愛い曲線がありありと伝わる。
彼女の健気さを心地よく思いつつ、地図を見ながら夜の王都へ出て行った。
◇ ◇ ◇
夜。
そこそこの食事(二人合わせて700ゴート)をとってから、俺は安宿に泊まった。
食事の出ない素泊まりの安宿なので。価格は二人で3000ゴート。
一応個室を選んだが、とても狭かった。
ベッドとテーブルで部屋がいっぱいになっている。
シーツもあまり良い状態とは言えないし、壁も薄かった。
俺は横に立つリリシアに顔を寄せると、銀髪をかき分けて耳に口を寄せた。
「昨日や今朝みたいに、あまり大きな声は出せないな」
「うぅ……声を出させてるのは、ご主人様じゃないですかぁ……っ」
リリシアがたれ目がちの目に涙を浮かべて訴えてくる。すみれ色の瞳が潤んで可愛らしい。
そんな顔をされたら愛するしかない。
俺はリリシアの細い腰に腕を回すと、ベッドまで行って優しく放って寝かせた。
リリシアは白い修道服を乱しながら、頬を染めて見上げてくる。
「……昨日より……大胆です……ますたぁ……」
「リリシアが可愛すぎるせいだ」
「ますたー……」
恥ずかしながらも、細い両手を広げて俺を誘う。
――が。
服を脱ぎながらベッドに登ると、壁に手が当たった。
「やはり狭いな」
「仕方ありませんわ」
「それに翼が出ることを考えると……ずっと正面ではだめだな」
「後ろ向き、ですか?」
「でもリリシアの美しい顔が見れなくなるのは嫌だな」
リリシアは顔を真っ赤にしつつ、華奢な上体を起こした。
大きな胸を垂れた銀髪が隠す。
「恥ずかしいけど嬉しいです、ご主人様。――でも、それでしたら、ちょっと……んしょ、んしょ」
枕とクッションを腰の下に入れた。
何度か細い腰を浮かせて位置を直す。そのときに出す声が可愛い。
そしてリリシアが微笑んで顔を上げた。
「んしょ――これで翼が出ても大丈夫ですわ」
腰にクッションを当てたため、上体が斜めになって背中にスペースができていた。
「賢いな、リリシアは――」
俺が覆いかぶさってキスをすると、リリシアが腕の中で喘いだ。
「んぅ――ますたぁー……っ」
甘えるような声が可愛い。
そしてお互いにキスの雨を肌に降らせていった。
動物は危険を感じると子孫を残そうとして逆に発情するという。
余裕だと思っていた俺も、今日の戦いで実は身の危険を感じていたのかもしれない。
結果、昨日より激しく、何度もリリシアを愛した。
彼女の押し殺した声と共に、白い羽がいつまでも狭い部屋に舞い散っていた。
所持金残り、大金貨32枚、金貨14枚、大銀貨15枚、銀貨0枚。
335万5000ゴート。
ブクマと☆評価での、応援ありがとうございます!
一日で落ちると思ってたら、まさかさらにランキングが上がるとは。
日間総合188位、ジャンル別48位、嬉しいです。
ランキングにいる間は多めの更新を心掛けたいと思います。
この作品が面白いと思ったら、↓の星を入れてもらえると喜びます!
次話更新は明日の昼ぐらい?
→14.家の相談




