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10.森の探索

ジャンル別日間ランキングに入ってたので、記念更新!


 俺とリリシアは森の中を歩いていた。

 高い木々が生い茂っている。

 木漏れ日が心地よい。


 リリシアは親指と人差し指で輪っかを作って目に当てていた。

 その指眼鏡で木々や地面を見ていく。

「あっ! ありました!」


「また見つけたのか」

 俺は感心しながら答えた。


 リリシアが白い修道服を揺らして、下草の生えた場所に駆け寄る。

 そして、ギザギザの葉っぱを採集していた。



 薬草採集はリリシアの指眼鏡のおかげで順調に進んだ。

 木の陰に生えたキノコを見つける。


「このキノコは別の依頼任務ですけど、後でも受けられるそうなので、拾っておきますね」


「ああ、任せる……にしても、その指眼鏡はすごいな」


「凄いのはご主人様です……出会う前は、良いか悪いかぐらいしか、わかりませんでしたから」


「なるほど。ということは、それも天使の力なのか」


「そのようです。今は名称や発生しているクエストまで表示されています。武器なら効果や疲労度までわかります」



 リリシアが指眼鏡を通して俺を見つつ、ニコッと笑う。

 俺は素晴らしい能力に感嘆の息しかでない。


「便利だな……もっと早くリリシアに出会いたかった」


「わたくしもです、ご主人様マスターっ」


「もっと楽に冒険できたし、もっとたくさん聖波気を与えられたのにな」



 リリシアが昨日の晩を思い出したのか、かぁっと頬を赤らめる。

「……はぃ。たくさん、お願いします」


「ああ、毎日愛して、必ず天使の力を取り戻させてやるからな」


「ご主人様マスターったらっ」


 リリシアが恥ずかしそうに顔を伏せつつ、修道服の裾を揺らして俺に抱き着いてきた。大きな双丘が押し付けられる。

 ――はぁ、もう可愛い。可愛すぎる。


 早く夜にならないかな、と余計なことを考えてしまう俺だった。


       ◇  ◇  ◇


 その後、魔物に出会うことなく森の奥深くまで進んでいった。

 だんだん木々の密度が濃くなってくる。

 木漏れ日も少なくなってきて、薄暗い。


 でも、魔物はいなかった。


 リリシアが首をかしげる。

「こんなに魔物は遭遇しないものなのでしょうか?」


「まあ、冒険者の多い王都が近いから、たくさん狩られているんじゃないか?」


「そうかもしれませんね」


「でも、ヘルリッチまで見当たらないのは困るな……」


 俺は顎に手を当てて考え込んだ。



 正直、失敗したなと思っていた。

 倒しやすさだけで選んでしまった。


 ヘルリッチは出歩かないから、潜伏場所の手がかりが少ない。

 場所を見つけるだけでDランクの任務になる意味を、もっと考えておけばよかった。


 今までは大きな被害が出て場所が特定されてから、俺は退治しに行っていただけだった。

 これはちょっと失敗したなぁ……。



 俺が顔をしかめていると、リリシアが大きな瞳で見上げて尋ねてくる。


「どのような魔物なのでしょう?」


「うーん、皮膚の張り付いた骸骨のような見た目だ。皮膚の色は青黒いのや赤茶色がいる。たいていローブを着ているな。魔術師が闇落ちして生まれた高位のアンデッドだ」


「なんだか強そうですわ……でも、そこまで闇の力が強いアンデッドなら探せるかもしれません――少し危険ですが」


「危険?」


「天使の姿にならないと使えない力ですので……」


「なるほど。誰かに見られるとまずいな」



 俺は辺りを見回した。

 鬱蒼と生い茂る森ばかりで人の気配はない。

 リリシアも長い銀髪を揺らして見渡す。


「ですがこのまま歩いていても難しい様子。試してみましょうか」


「ああ、やってくれ。天使だとバレたとしても、俺はリリシアを守るから」


「ありがとうございます……っ」


 リリシアが嬉しそうにはにかむ。

 そして俺から少し離れると両手を胸に当てて少し背を丸めた。


 バサァッ


 と、美しい白翼がリリシアの背に大きく広がった。

 辺りに白い羽が散る。



 リリシアは背筋を伸ばすと一歩踏み出しつつ、右手を前に出してひねった。

「――闇魔力探知オーラディティクト


 リリシアを中心にして白い波動が、波紋のように広がった。

 白い羽が波に乗って放射状に飛んでいく。


 羽は木や茂みにぶつかってもそのまま突き抜けていった。

 ――あの羽、実体はなかったのか。俺は触れたが。



 しばらく静かな時間が流れる。

 リリシアは腕を伸ばし、白い翼を広げたポーズのまま止まっている。

 大きな目は閉じられていた。何かを探るように。



 ――が!

 突然、リリシアが身を翻した。


 素早く斜め後ろを振り向くと、腰を落として両腕を突き出しつつ、白い翼をバサッと体を守るように丸める。


「――天使大盾陣エンジェリックサークル!」

 

 彼女の前に、地面に落ちていた羽が飛んで集まって円を作る。

 五芒星の魔法陣が生み出されて金色に輝き出す。


 すると、藪を突き破って黒い影の波動が飛んできた!

 リリシアの作った羽根の魔法陣にぶつかって光が弾ける。


 ドゴォォンッ!


「うっ!」

 リリシアが衝撃で後ろに跳ばされて尻餅をついた。ずざざっと地面を滑る。

 しかし起き上がる前に、倒れた姿勢のままで波動が飛んできた先を指眼鏡で見る。



 俺は驚いて駆け寄った。

 リリシアの肩を抱いて助け起こす。


「どうした!? リリシア!」


「申し訳ありません、敵に見つかってしまいました――ヘルリッチに間違いありません……桁違いに強いです」


 俺は波動が飛んできた方向を指さす。

「こっちの方角にいるのか?」


「はいっ。かなり遠い場所――森の奥深くの小屋にいます。こちらの状況は完全に把握されています。不意打ちはもうできません――障害物を利用しつつ、魔法防御を最大に……」



「いや、場所がわかったなら、もう大丈夫だ」


「え?」


「じゃあ、行ってくる。リリシアは敵の攻撃に注意しながら後から来てくれ――決して被弾しないように」


「ええっ!? ご主人様マスター!?」


 リリシアの可愛く途惑う声を背に、俺は走り出した。


 場所さえわかればソロでも余裕だった。


ブクマや☆評価での応援ありがとうございます!

まさかジャンル別ハイファンタジー日間ランキング(96位)に入れるとは思いませんでした。

皆さんの応援のおかげです。

面白かったら↓の☆評価お願いします!(また記念更新するかも!?)


次話は明日昼ごろ更新

→11.アレクが最強で最弱だった理由

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[一言] え?なぜおいてくし? 一緒に行けよ
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