#5 目指すべきか
最近ますます暑くなりましたね〜
熱中症等には気を付けて過ごしましょう。
お楽しみ下さい┏●
父は言う・・・
我々は戦士では無い。
母は言う・・・
世界には仕方のない事もあるの。
姉は言う・・・
これしか道は無いよ?
兄は言う・・・
お前で無くとも俺たちがやる。
*********************
父に仕事の話を聞く事になり、レイは背筋を伸ばして父を見る。
「仕事に興味を持つのは早いと思ったが・・・昨晩の事を考えると、妥当だな。」
「昨晩?昨日の夜、僕は寝てた・・・ううん。ちゃんと覚えてる・・・僕が・・・僕が!!」
レイは頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまった。
鬼化羅擦と交代していたが、ハッキリと見て、感じて、そして今朝、部屋の惨状を目の当たりにしていたのを思い出した。
「パパ、ママ。僕は・・・おじさんを・・・」
「それで良いのだレイ。我々は狙われ、奪い、そして生きて行く。これが先祖代々受け継がれてきた、フメリ一族の運命。」
「あのおじさん達はね、パパを狙って来たの。レイはパパの仕事を1つお手伝いしたのよ?」
母は優しくレイの肩を抱き、頭を撫でながら言ってくれた。
その優しい声に心を落ち着けたレイは顔を上げる。
父のナイフの様な鋭い視線。
母の毛布の様な柔らかな視線。
2つを向けられたレイは、ハッキリと言った。
「人を殺す事がパパのお仕事なの!?僕は殺したく無いよ!!」
ヒュッと悲しげな音がした後、レイの頬に一筋の鮮血が滲み出た。
「我々の仕事を否定するのは、我々の生き様を愚弄する事にあたる!!貴様もフメリの名を持つのなら誇りを持て!!我々は殺し、奪い、血に溺れて生きて来た!!」
父はイスから立ち上がりレイの髪を掴んで、部屋を出た。
行き先はレイだけが知らない地下の一室。
冷たい金属の扉をゆっくりと開け、レイは父に放り込まれた。
「ここで1日過ごすことだ!!先祖の声を聞き、数多の嘆きを聞け!!」
父は扉を閉め、去った。
レイは真っ暗な部屋の中たった1人。
「グズッ・・・正しい事を言ったのに・・・ヒックッ・・・なんで僕が・・・ウゥ・・・ウゥ・・・」
冷たい部屋にレイの泣き声が響く。
部屋の奥にはイスがあった。
レイは目が慣れて部屋を見渡す。
一脚のイスがあるだけの寂しい部屋だった。
レイは冷たく硬いイスに腰掛け、壁を見つめながら心の中で悪態を吐いた。
(僕は正しい事を言ったんだ。パパが悪いんだ。僕は悪くないんだ。)
「それは違うぞ坊や?」
「だ、だ誰!?」
「産まれたばかりの時に、会ったきりだから覚えて無くても問題は無い。」
声の主はスゥーッと壁から出てきた。
半透明で白い着物を着たお爺さんだった・・・
よろしければ、評価・感想・Twitterアカウントのフォローをお願いします┏●
Twitterアカウントは活動報告にIDがあります┏●