#4 目指す場所
最近、暑さで目が覚めます・・・
熱中症にはお気を付けください。
お楽しみ下さい┏●
鬼化羅擦の刀身を見た者は、その魅力に囚われ今世を終えると逸話がある。
兄と姉は、鬼化羅擦を見た瞬間から目をトロンとさせ、ゆっくりと手を伸ばしてきている。
「ドレイク!!ミシュラ!!止めんかっ!!」
父が怒鳴ると2人はビクッと肩を震わせた後、顔を合わせ首を傾げていた。
「まだまだ若いのぉ。妖刀に魅せられていたんじゃよ。」
2人は少し恥ずかしそうに顔を伏せた。
「レイや。鬼化羅擦の声は聞こえるかのぉ?」
「え?刀が声なんて・・・」
『おいおい・・・今回の主人はガキかよ。』
「え!?だ、誰!?」
レイは周囲を見渡しながら叫んだ。
当たり前だが、レイにしか聞こえておらず、兄と姉は不思議がって、父、母、祖父は真剣に鬼化羅擦を見ている。
『オレだ。お前が手に持ってる鬼化羅擦って者だ。』
「きみ・・・喋れるの?」
『正確には思念ってやつだが、喋れると思って問題は無い。』
「レイ。鬼化羅擦と交代してみろ。」
父に言われたが、レイは訳が分からなかった。
すると鬼化羅擦が、
『レイって名前か。よぉレイ。目を閉じてオレの形を思い浮かべろ。安心しな、交代しても、お前が強く念じれば動くからよ・・・』
そう言われて、レイは頭の中で鬼化羅擦を浮かべる。
赤い柄に黒い柄紐。
羽の形をした、ひし形の鍔。
血をベッタリと塗った様な恐ろしげな鞘。
そこまで思い浮かべると、スゥっと眠りに落ちるように意識が無くなっていく。
「初めのうちは慣れないかも知れねぇが、気にすんな。」
『僕、どうなるの?』
「怖がる事はねぇ。体を借りてるだけだ。ちゃんと戻れるからよ。」
レイは少しずつ落ち着きを取り戻し、自分の物でない視界から見える家族を見た。
「鬼化羅擦だな?先ずは昨晩の礼を言う。」
「礼?オレは斬っただけだ。」
父の言葉に鬼化羅擦は素っ気なく答える。
「随分と偉そうだな?私の事を知らないのか?」
「てめぇなんか知るわけっ・・・何でこんな所に居やがる、サラ。」
母を見た鬼化羅擦は動揺を露わにして言う。
「あなたの知っているサラじゃ無いわよ?今世はフメリ一族に嫁いだサラよ。」
母は鬼化羅擦に向けて言った後、父に向かって、
「ワタシのご先祖さま。鬼化羅擦の持ち主だったって聞いた事あるの。ワタシは生まれ変わりみたいね。」
「なるほど・・・私の家に来る時に鬼化羅擦を持たせられたのは、運命と言った所か。」
父は懐かしげに目を細めた。
結婚が決まった時、母の祖父が鬼化羅擦を頑なに持って行けと叫び、渋々受け取った母の姿を思い出していた。
「ところで、オレに交代させた理由を聞かせてもらおうか?」
「そうだったな。鬼化羅擦、お前にはレイを助け、我々フメリ一族の繁栄を手伝って貰おう。」
「オレが決める事じゃねぇな。レイに言え。オレはレイがやるなら文句はねぇよ。」
そう言うと、鬼化羅擦は目を閉じた。
『レイの親父、頑固だろ?オレ肩凝って仕方ねぇよ。』
「僕には分からないよ・・・どうしたら良いと思う?」
『ゆっくり決めろ。まだまだガキなんだからよ・・・』
体全体の感覚がレイの支配下に戻り目を開ける。
問題は無さそうだと思ったレイは口を開いた。
「ね、ねぇパパ・・・僕にお仕事の事、もっと教えて?」
「うむ。よく言ったぞレイ。」
満足そうに頷く父。
嬉しそうな母と祖父。
兄と姉は不思議そうな目をレイに向ける・・・
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