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そこそこチートな能力だと思うんだけど攻撃ができないから雑魚らしいです

作者: コーサ

文章力を上げたいです。


 ここは『コゥゲキリョク=ガ=イチヴァン王国』。

その王城で今、異世界から勇者を召喚する儀式が行われていた。


 王城の地下、頑丈な石造りの壁の広い部屋。

部屋の中央には巨大な魔法陣が描かれており、魔術師たちがそれを囲んでいる。

そしてこの偉そうに椅子に座っているのが、国王のイチヴァン王である。


「魔術師たちよ、準備はできたか?」

「はい。あとは魔力を込めるだけです」

「よしじゃあ始めるがいい」


 魔術師たちが一斉に魔法陣に魔力を込める。

魔法陣は光り輝き、やがて三人の人影が現れた。


 一人目は、すごくイケメンな金髪の男。

 二人目は、誰もが見とれてしまうような美少女。

 そして三人目は、なんだかパッとしない見た目の高校生だった。


「成功したぞ!」

「おお!今回は勇者が三人も!」

「これは凄い事になったのじゃ」


 国王や魔術師たちが喜ぶ。

一方、勇者たちは、何が起きたか分からないという風にポカンとしていた。


「……これ、どういう状況…?」


 高校生が呟いた。


 それを聞いて、国王と魔術師たちは騒ぐのをやめる。

やがて、一人の魔術師が説明を始めた。


「ここはあなたたちから見て『異世界』です。そしてあなたたちには、魔王を倒し、この国の危機を救ってほしいのです」


「えっ異世界転移?」

「わーーー」

「でも、危機を救うとは一体…?」


 勇者たちが落ち着くまで待ってから、魔術師は続ける。


「あなたたちは、この世界に呼び出されたときに、強力な『能力』を手に入れました。『能力』を使えば、魔王を倒すことも夢ではありません」


 続いて、国王も口を開いた。


「自分の『能力』は『ステータスオープン』って言ったら見れるのじゃ。さっそく左から順番に、自分の名前と『能力』を言うがいい」


 王に言われて、勇者たちが口々に『ステータスオープン』と言う。


 一番左側にいたのは、金髪のイケメン。


「俺の名前は佐藤サトウ ツルギ。『能力』は『武器創造』と『万能』だ。」


「ふむ、説明を読んでみよ」


「『武器創造』は『手からどんな武器でも出すことができる』、『万能』は『装備した武器を完璧に使いこなすことができる』ってかいてある」


「ほぅ!それはすごく強い『能力』じゃ!」


「そうなんですか!ありがとうございます」


 国王の言う事は正しい。この『能力』を使えば、機関銃やバズーカ砲も出せる。

攻撃手段が剣か弓か魔法ぐらいしかないこの世界では無双できるだろう。


 次は絶世の美少女。


「私は鈴木スズキ メグミです。『能力』は『加護』です」


「説明を読むがいい」


「えーと、『対象に最大100倍のステータス強化を与える』らしいです」


「なんと!とんでもなくすごい『能力』じゃ」


 100倍。これはかなりやばい。

身体能力が二倍になるだけで、普通の人は太刀打ちできなくなるだろう。

それが100倍。ほぼ無敵である。


「さて、最後はお前じゃな。なんか強そうには見えないが、とりあえず自分の名前と『能力』を言うのじゃ」


 高校生は「弱そうとか言うなし」みたいな顔をして言った。


「僕の名前は山田ヤマダ マモルです。『能力』は『肉壁』と『超再生』です」


「…説明を読むのじゃ」


「はい、『肉壁』は『味方が攻撃・魔法を受けたとき、代わりに自分がダメージを受ける』、『超再生』は『どれだけダメージを受けても一瞬で回復する』です」



「……ハズレじゃな」



 イチヴァン王が、失望したのが分かった。


「え?」


「貴様の『能力』は攻撃ができないから雑魚じゃ」


 マモルは一瞬、その言葉の意味が理解できなかった。


「攻撃ができなかったら魔王どころかスライムすらも倒せん。当たり前じゃ」


 王はまるでゴミを見るような目でマモルを見る。


「…でも、味方が受けたダメージを無効化できるんですよ?」


 マモルが反論するが、王は弱者の意見など聞こうともしない。


「黙れ。雑魚が口ごたえするな。もし敵が攻撃してきても、避ければいいだけだ」


「避けられない攻撃もあると思います!そのときは僕の」


「その時はメグミの『加護』で防御力を上げればいい。お前は別にいなくてもいい存在じゃ」


 イチヴァン王はめんどくさそうに言う。

しかし、マモルはどうしても納得できなかった。


「で、でも」


「それならばツルギメグミにも聞いてみるか?」


 王が提案した。王にとっては、それはマモルに現実を教えるためだったが。


「は、はい!お願いします!」


 マモルがうなずく。


「では、ツルギよ。こいつの『能力』についてどう思う?」


 王がツルギに尋ねた。

ツルギはその問いに、当たり前の事を言うように答えた。


「うーん、攻撃を受ける前提の『能力』だからちょっと微妙だな」


 続けてメグミにも同じように尋ねる。


メグミはこいつの『能力』についてどう思う?」


「…使えない事は無いですが、私の『能力』を使った方がはやいですね」


 二人の意見を聞いた王は、ゆっくりと言う。


「聞いたか?お前の『能力』は雑魚じゃ。いい加減認めたらどうじゃ」


「そんな……」


 マモルは認めたくなかったが、マモルを見つめる王の目は冷たかった。



 やがて、一人の魔術師が、王に尋ねた。


「陛下、こいつはどうしましょう」


「そうじゃな、この王国に攻撃できない奴は要らん。元いた世界に強制転移させるのが妥当かの」


 魔術師が魔法陣の描かれた紙を持ってきた。


「この魔法陣の上に立て」


 マモルは魔術師たちに腕を無理矢理引っ張られ、魔法陣の上に乗せられる。


 王は言った。


「この魔法陣に乗ればお前の元いた世界に帰れる。『能力』も消えるし、この世界の人間からも忘れられる」


 マモルは何か言いかけたが、魔法陣が輝きだすと、マモルの姿は消えてしまった。

しばらくして魔法陣の光がおさまると、王はツルギメグミの方を向いて言った。


「では、改めて勇者殿。どうか、魔王を倒し、この国の危機を救ってほしい。頼んだぞ!」


「はい!」


 国王や勇者たちの中では、すでに三人目の勇者の存在などいなかった。




 ここは「コゥゲキリョク=ガ=イチヴァン王国」。


伝説の魔法『勇者召喚』によって、異世界から勇者を召喚し、魔族の国の王を暗殺しようとしている国。


 今まで召喚された勇者はいずれも強大な力をもっていたが、その裏で、何人の勇者がいなかった事にされたかは、誰もわからない。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

何か少しでも気になる箇所があれば教えてほしいです。

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