~幼いヴァン視点~
この時まで…僕の事が嫌いな人なんていないって思ってた。
「何だこの汚ならしい子供は!」
「黒い奴め、災いを呼ぶぞ!」
「見ろ!悪魔の翼だ!」
「「「この悪魔め!!消えろ!!」」」
「アルムの兄貴…ヴァンは、悪魔なの?消えなきゃいけないの?
……生まれてきちゃ、駄目だったの?」
そう言って泣いたら…アルム兄貴は僕をぎゅっと抱き締めてくれた。
「言わせておけばいいんです。
ヴァン、貴方は僕にとって、大事な弟ですからね。だから何も気にする事、ないんです」
うわぁぁぁん!!
僕が泣いているとユリも大声で泣きながらこっちに来た。
「あるむ、ぼくも、わぁぁぁん!!」
「どうしたんですか?ユリ。オリエさんは?お母さんはどうしたんです?」
「おかあさん…ひっく、ぼくよりおじーちゃんのあいて、しなきゃいけないから…おとーさんもじーじもなにもしてくれない。
ぼくあっちにいってなさいって言われた!」
あぁ、ユリも捨てられたんだ。
僕は涙を拭いて、ユリの頭をぽんぽんと撫でる。
「……ヴァン?」
「いーこいーこ、泣かないよ。アルム兄貴のおまじない」
僕が泣くといつもアルム兄貴がしてくれるおまじない。
「ふふ。ヴァンは優しい子ですね」
「アルム兄貴のおとーとだもん!」
「言うようになりましたね。
……そうだ、二人とも。花畑に行きましょう」
「はなばたけ?」
「ええ。とっても綺麗でいい場所なんですよ。
さあ、お弁当を作りますからね。少し待っていて下さい」
アルム兄貴から離れたくないからくっついていくとアルム兄貴はご飯を作って箱に詰める。
「食べないの?」
「これは後で花畑で食べるんです。こっちは夜に星空を見ながら。さあ、行きましょう」
アルム兄貴に乗って、僕とユリはお花がいっぱい咲いているとこについた。
「すごいすごい!お花いっぱい!」
風が吹く度に花がさーって揺れて、きらきらしてる!
「綺麗でしょ?
ほら、二人で遊んで来なさい」
「「はーい!」」
僕はお花の上を飛んだり、ユリはお花を摘んで服につけたり。
アルム兄貴は端っこの草を食べてる。
「ね、街小さく見えるよ!」
花畑の端っこに行くと街が見えた。
「あれ、ぼくのお母さんの家」
赤い屋根のおっきなおやしき。白い大きなお城のすぐそばにある。
「アルム兄貴のおうちはあっち!」
ユリのお母さんの家からあまり離れてないとこにある緑いっぱいのおうち。
「お母さんのおうちなんかなくなっちゃえー!」
ユリがおっきな声で街に向かって叫ぶ。
「こらこらユリ。そんな事を言うもんじゃありませんよ」
アルム兄貴がやって来てユリを叱る。
「だってほんとにそうだもん」
「思ってもね、言っちゃ駄目な事あるんですよ。
…せめてね、こう言いなさい」
すぅっと息を吸い込むとアルム兄貴は
「こんのクソジジイ!てめぇの孫に何をほざくかボケェッ!!」
と怒鳴った。
「……」
あまりに凄くて、僕もユリも目を真ん丸にしてアルム兄貴を見上げる。
「く、クソジジイ?」
「ええ。そうでしょ。自分の孫を大事にしないじじいはクソジジイです」
……クソジジイ!かっこいい!
「さあ、お昼にしましょうか」
お昼ご飯のお弁当を食べたらまたいっぱい遊んで、夕方になったらまたお弁当を食べて、暗くなったらアルム兄貴が背中に乗せてくれて花畑を歩き回った。
「ほら、段々星が出て来たでしょう?夜は花は綺麗に見えないけど、星が綺麗に見えるんですよ」
「わぁ…」
ひとつ、ふたつ、みっつ…どんどん星がキラキラ増えていって、真っ黒なお空いっぱいキラキラしてる!
「あの星一つ一つに、誰かが住んでいて、この星を、ヴァンとユリを見てるんですよ」
「ほんと?!」
「はい。本当ですよ。
だから寂しくないでしょ?いつだって、ヴァンとユリは見守られている。一人じゃないんですよ」
星が見ててくれる…星に住んでる誰かが見ててくれる…。
「さぁ、帰りましょうか。明日は劇場に行ってみましょう。
この世界にはたーくさん楽しい事があるんです。
狭い、嫌な大人達だけの世界じゃないんですよ」




