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1-16 迷宮の試練とボスモンスター

少しタイトル変更しています。宜しくお願いします。

 ――迷宮の『試練』。

 それは文字通り、地下十階層、二十階層、三十階層……というような形で十階層ごとに存在する、冒険者たちへの関門である。

 知恵を振り絞って『試練』を突破し、扉を開いたとしても、その先には十階層ごとに出現するボスモンスターが待っている。ボスモンスターは、ボスを名乗るだけはあり、規格外の力と知能を誇ることがほとんどだ。それゆえに単一パーティで討伐するのは厳しいので、一流パーティをいくつか集めてレイドを組んで挑戦したこともある。

『試練』、そしてボスモンスター。

 そういう形で、最前線を進むパーティは知恵と力、そして勇気を試されることになる。

 けれど――まあ、クリアされてしまえば後続には関係ない。

『試練』の解き方はとうに広まっているし、ボスモンスターが出現するのは基本的に一度だけだ。当然、すでに地下十階層の『試練』はクリアされ、ボスモンスターも討伐されているので、実際この先に何らかの危険があるわけではない。

 けれどサラが一流を目指す冒険者であるのなら、このあたりのことはよく知っておいた方がいいだろう。

 そんなことを説明しながら歩いていき、俺たちは扉の前で止まった。

 両開きの扉は開いている。

『試練』はとうの昔にクリアされているのだから当然だけれど、俺はあえて扉を閉めた。


「どうして閉めるの?」

「サラが一流を目指すなら、『試練』のことも多少は知っておいた方がいい」


 閉められた扉には、古びた文字で文章が記載してあった。


「何だろう? ――星々が示す魔女の名前を導け……?」

「地下十階層の謎は、まあ小手調べってところなのか割と簡単だ」


 俺はそう言いながら上を指し示す。サラは素直に天井を仰いだ。


「えっ……?」


 そこには――星々が映っている。

 先ほどまで天井だった部分が、一時的に夜空と化しているのだ。


「迷宮、すごいね……」

「迷宮は魔女が作った。だから、こうやって挑む人のための試練も用意している」


 その夜空は、正確に言えば地上から見える夜空とは違う。

 とある四つの星だけが明確に輝いていた。

 四つの星々は、不格好な台形を描くような形で宙に浮かんでいる。


「これは、どういうことなんだろ?」

「――通称、マルグスリア四つ星。名前の由来までは知らんが……答えはそのままだよ」

「?」

「この迷宮を作った魔女の名前が、マルグスリアだってことさ」


 この迷宮がマルグスリア迷宮と呼ばれ、都市の名前にもなっているのは、すべてこの地下十階層の『試練』で、製作者である魔女の正体が明らかになったからだ。


「今の最新踏破記録が地下四十七階層である以上、『試練』は地下四十階層までは解き明かされているわけだ」

「ロイドも、謎を解いたの?」

「まあ地下三十階層と四十階層の『試練』なら一緒に考えはしたが、実際に解き明かしたのはほとんどレックスだな……」


 ちなみに地下十階層、二十階層の『試練』は、サラの師匠ロベルト率いる『未来を切り拓く星々』が謎を解き明かし、ボスモンスターも討伐している。

 すべての『試練』が地下十階層のように簡単ならいいのだけれど、そうはいかない。

 ともあれ俺たちは扉を再び開き、奥の広間へと歩き始めた。

 異様に広い、六角形状の広間。何だか闘技場のような雰囲気があった。


「ここが、ボスモンスターが出現する部屋。通称ボス部屋だ」

「ボス部屋かぁ……それってどこも、こういう闘技場みたいな感じなの?」

「それはボス部屋によってまちまちだな……。ここのボスは多分、こういう場所での真っ向勝負が好きだったんだろ。というかロベルトがそういう話をしていた気がする」

「そうなんだ! 師匠、わたしには迷宮の話は全然してくれなかったからなぁ……」

「そうか? 割と語りたがりのタイプだったと思うが」

「――自慢したいのは山々だが、お前は自分の目で見て確かめろ……って」


 確かに、そんなことも言いそうな男だった。

 ちょっと不満そうなサラを見て、俺は思わず苦笑を浮かべる。

 

「だから、先に進んで、もっと確かめたいんだ!」

「そうしたいのは山々だが……」


 サラの元気な台詞に対して、俺は言葉を濁した。

 今日の目標は上層中盤――つまりは今ここ、地下十階層だ。

『試練』とボスモンスターについて現場で説明することもできたし、目的は果たした。

 まあサラもまだまだ元気そうだし体力的には大丈夫そうだが……。


「どうしたの、ロイド?」


 よく分からない不安が、腹の底に溜まっているような気がした。

 それでも現実を認識すれば、確かにサラの方が正しい。時間はまだあるし、戦闘も少なかったから体力もありあまっている。中層に入るのは人数的に厳しいけれど、地下十四層ぐらいまでなら、サラを俺が支援すれば何とかなるはずだ。


「いや……分かった。行くか」


 だから俺は首を振って、ちょっと先で待っているサラを追いかけるのだった。



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