1-1 支援術師は追放される
どうやら俺は勇者パーティを追放されるらしい。
戦力外通告というやつだ。
「ごめんね、もう決まったことなんだ」
申し訳なさそうな顔でうつむいているのは、金髪碧眼の美少女。
彼女――イリスは、俺たちのパーティにおいてヒーラーの役割を担っている僧侶だ。
「そうかい」
俺は肩をすくめた。
「私は、貴方は必要な存在だと何度も言ったんだけど……」
イリスは泣きそうな声音で言う。
迷宮に潜る冒険者の中で、最強と呼ばれるパーティ。
それが神に祝福された《勇者》レックス率いる、『勇気あるもの』だった。
世界最大の迷宮であるマルグスリア迷宮の地下四十六階層まで到達した、人類史上初の冒険者パーティであり、たった六人でボスモンスターを討伐した伝説を持つ。
あいつらは間違いなく一線級の実力者だ。
だからこそ支援術師の俺もがんばって支援していたんだが、どうやら戦力にならないと判断され、パーティを追放されてしまうようだ。
まあ俺は直接モンスターと戦うことはほとんどない。
俺ができるのは、仲間の力を引き出し、さらに強化することだけだ。
だから何もしていない無能に見えるし、周囲からは『勇者パーティのお荷物』だの何だのささやかれたりもしていた……だから、まあ仕方ない。
「俺を追放するってのは、レックスの奴が言ったのか?」
「うん……」
なるほど。
《勇者》レックスは、神の祝福を受けた世界最強の剣士。
俺の支援なんてものはもう必要ないと思ったんだろうか。
それとも……まあ、心当たりはいくらでもある。
「ごめん、ね……」
「――そんな奴に謝る必要なんてないわよ」
そこで割り込んできたのは、炎のような赤髪をポニーテールにした少女。
名前はエルだ。
『勇気あるもの』では攻撃魔法を中心とした魔法使いの役割を担っている。
彼女は俺を心底軽蔑するような目をして、強く言い放った。
「あんたなんかがいたから、この前は迷宮到達階層を更新できなかったのよ」
「まあな」
「ま――まあなで済む問題じゃないわよ……!」
それは事実だし、否定のしようがない。
俺がパーティから追放される原因はそこみたいだな。
支援の腕はともかく、俺は体力にはあまり自信がない。
この前の迷宮遠征において、強いモンスターとの連続戦闘を強いられた俺が疲労で倒れてしまい、パーティは地下四十六階層から撤退を余儀なくされた。
「それは、疲労で倒れてしまうほど、私たちを支援してくれたってことでしょう?」
「バカみたい。支援にそこまでの効果なんてないわよ」
エルは、そう言ってフンと鼻を鳴らす。
普段は温厚なイリスも、流石にムッとしたようだった。
「そんなこと……!」
「レックスがそう判断した以上、効果がないってことじゃないの」
これ以上、二人の言い争いを見ていてもしょうがないので立ち上がる。
「ま、効果があったかどうかなんて、俺がいなくなった後にいくらでも分かるだろ」
支援術師の実力というのは表に出にくい。
それなりに優秀だという自負はあるが、分かりにくいのも確かだ。
「じゃあな」
俺は荷物をまとめ、一年ほど借りた部屋を出ていく。
ここは『勇気あるもの』が買ったパーティハウスというやつで、俺は二階の一部屋を借りていた。
広いリビングでは、ソファでパーティメンバーのアルダスがぐーすかと寝ている。
レックスはどこかに出かけているらしい。
まあ遭遇しても気まずいだけだし、さっさと出ていくことにするか。
そうして俺は『勇気あるもの』を抜け、宿無しフリーの支援術師になったのだった。
新連載です。
よろしくお願いします。




